言語と非言語に分けて考える プロダクトのブランドバリューを構成する10個の価値基準とは

言語と非言語に分けて考える プロダクトのブランドバリューを構成する10個の価値基準とは
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 「コミュニケーションデザイン×マーケティング×ブランドマネジメント」という3つのキャリアを軸に、制作会社、広告代理店、大手事業会社、ベンチャー企業と、20年以上にわたり活躍の場を広げ続けてきた平澤克幸さん。サービスづくりの過程で一度デザイン領域を離れ、斜め向かいからデザイン領域を俯瞰したことで得た気付きを、「デザイナーがより活躍の場を広げるためにやるべきこと」というテーマで解説していただきます。今回は「ブランドバリューを構成する10個の価値基準」についてです。

 前回は、「デザイナーの仕事を拡張する」と題してブランドの「ブランドバリュー」の必要性とそのスキルセットについてお話ししましたが、今回はその具体的な手法として、提供価値の構成要素とその活用について説明します。

 扱うテーマが抽象的な概念価値観となるため、ふわっとしがちな情報を、具体的かつデザイナーが実践できる情報としてお伝えするべく、事例を交え紹介します。※事例については、1ユーザーの解釈としてご理解いただけると幸いです。

 ブランディングにおいて提供価値を明文化するとき、下記に対して語られることが多いように思います。

  • プロダクトやサービスなど形をともなう「モノ」
  • 無形のコンテンツや事象にあたる「コト」
  • 企業や活動家といった「ヒト」

 本記事では、「モノ=」プロダクトに絞り、解説していきます。

プロダクトのブランディングで考えるべき提供価値とは

 プロダクトのブランディングにおける提供価値には、下記の2種類があります。

  • プロダクト提供者が思い描く価値=“あるべき姿”を示す価値観
  • プロダクトを利用するユーザーが実際に知覚する価値=認識するサービス情報群

 前回少しお伝えしましたが、プロダクトを提供する組織のなかで、サービス設計やビジュアライズするデザイナーが抱える問題を解消するために最優先で整理すべきなのは、1の「“あるべき姿”を示した価値観」です。

 デザイナーが関わっているサービスはそもそも何のために存在し、何をすることが重要なのか――。存在する意味や目的(パーパス)が整理されていない曖昧な状態で制作を進めることは、訴求メッセージづくりの足もとから認識のブレを作ってしまったり、デザイン修正の中で不要な出戻りを作ることにつながってしまいます。属人的な価値観によって生じる曖昧な意思決定をなくすために、まずはブランドとして大事な価値観を明確にし、そのうえで良し悪しの判断ができる状態をつくるべきなのです。

プロダクト独自の価値は、機能の利便性からは生まれづらい

 昨今、機能的な便利さを追求したり、ユーザーの役に立つ情報提供を行うだけでは、ひとつのプロダクトがユーザーに継続的に利用され続けることは難しくなっています。

 企業が保有する独自のテクノロジーや知識は、インターネットを通じてさまざまな手段でオープンになり、中小企業と大手企業との技術格差は以前にも増して広まっているように感じます。

 目新しいものや独自の着眼点を取り入れた機能を打ち出しても、1年後には類似プロダクトに模倣され、「業界の当たり前」をひとつ追加しただけに留まってしまう。そんなことも珍しくありません。ただ新たな機能を出すだけでは、ブランドの独自性を築くことはできなくなりました。不便なことを探す方が難しい時代と言えるかもしれません。

 このような背景から、現在すでに機能面で他社よりも強みをもち、組織において収益の柱となっている既存プロダクトも、その状態が継続できる見通しは立ちづらいでしょう。ゲームチェンジャーがいつやってきてもおかしくはありません。

 業界ナンバーワンだけではなく、業界シェア2番手、3番手のプロダクト、またニッチな路線の新たなプロダクトが、市場で生き残り、かつ利用され続けるためにできることはなにか。そのひとつが、プロダクトの魅力をつくり、ユーザーをファンにすることで、継続的に利用される状態をつくることだと考えています。

 そんなブランディングのスタート地点は、プロダクトの存在価値を見直すことで独自の価値を見出し、ポジショニングをつくること。またその可能性に気づくことなのです。そのために重要なのが、先ほど提示した、プロダクトのブランディングにおける提供価値のひとつめ、「“あるべき姿”を示した価値観」を定義することです。

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