[新連載]アトラエ竹田さんが解説! デザイナーが事業をデザインするうえで知っておきたい基礎知識とは

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 組織の“デザイン”、“デザイン”シンキングなど、さまざまな場面で「デザイン」という言葉が使われるようになりました。そんなUIやUX以外のデザイナーがデザインできるものに、本連載では焦点を当てていきます。解説していただくのは、アトラエでエンゲージメント解析ツール「wevox(ウィボックス)」のデザイナーとして活躍する竹田哲也さん。初回のテーマは「事業のデザイン」です。

 はじめまして。アトラエでエンゲージメント解析ツール「wevox(ウィボックス)」のデザイナーをしている竹田です。現在はwevoxの新機能を考え、プロトタイプ制作や改善ポイントのUIをデザインしたり、マーケターと協力しマーケティングやブランディングにも携わっています。

 年々、UIデザイナーの採用ニーズとともにUIデザイナーを目指す学生も増えており、市場ではデザイナー人口が著しく増加しているように感じています。みなさんは、どんなところにデザイナーとしてのやりがいを感じていますか?デザイナーを始めた時と今とで、何か変化はあるでしょうか。

 ではここで、以下の4つをみながら、自身がデザイナーとして喜びや楽しみを感じる瞬間を、順番に並べてみてください。

  • モノづくりしている時
  • ユーザーの感情を動かせた時
  • ユーザーが行動した時
  • 事業を成長させた時

 デザイナーでも人によって順番はバラバラなのは当然です。作ることそのものに楽しみを見出している人もいれば、UIデザインを手段に、事業を成長させたい人もいるでしょう。

 ウェブサービスやスマートフォンアプリなどは開発する際、UIデザイナーはエンジニアと一緒に進めていくケースがほとんどだと思いますが、UIデザイナーが表層をデザインする役割であることは間違いありません。ですが、はたしてデザインをすることができるのはそれだけなのでしょうか。

 そこで今回は、「“事業”をデザインする」をテーマに、私の考えをお伝えします。

ユーザーはどこで価値を感じるのか

 そもそも事業では、営利など目的をもって行われる活動で、顧客に価値を提供することで対価をもらいます。つまり事業をデザインすることは、「顧客に提供する“価値”」をデザインすることと言えるでしょう。

 では、ユーザーはどのようにこの“価値”を感じるのか、考えていきたいと思います。

 ユーザーである「ヒト」は、実物のプロダクトやソフトウェアなどの「モノ」を使うことで「コト(=体験)」が生まれます。

 たとえば、自宅でのリモートワークにより長時間座って働くようになったことで腰に痛みを感じるようになり、イスを買い替えました。イスを変えて1〜2日経つと腰の痛みがなくなり仕事がはかどった時に「これ良いイスだな」、「このイスを買って良かったな」と満足したとします。

 この場合、「モノ=イス」、「コト=長時間座って仕事をしても腰が痛くならず仕事ができた体験」となります。ヒトの気持ちが満たされ、イスに価値を感じている状態です。

 このように、「ヒト」の感情を動かすのは体験ですが、価値として認識するのは、その体験を生み出した「モノ」という構造になります。つまり「コト」は「モノ」によって左右され、機能・UI・品質が影響すると言えるでしょう。

時代における価値の変遷

 では、ユーザーの価値そのものはどのように変わってきたのでしょうか。時代の流れに沿って見ていきましょう。

 1960年代の日本は高度経済成長期で、1964年の東京オリンピック開催に向けた社会インフラの整備によるオリンピック景気などにともない所得が増加し、日本の生活習慣が大きく変化したそうです。冷蔵庫や洗濯機など家電製品が生活必需品になったり、テレビや電話機が多くの家庭に普及しました。1960年代の主流は、低価格大量生産。技術革新と大量生産により市場にさまざまな新しい商品が出回るようになり、生活の中で役に立つ有用性に価値を感じる「使用価値」の時代でした。

 1970年代後半になると、電子制御技術が向上し、複雑な機能を持つ多機能家電製品が登場。娯楽家電なども電子化され、レコードがCDに変わっていきます。バブル景気もあり高級化・高機能化された製品が普及し、ほかにはない新機能を開発できれば売れるなど、利便性に価値を感じる「機能価値」の時代になります。

 1980年代後半から90年代は、通信機器も家庭に普及しはじめ、軽量でありながらおしゃれでスタイリッシュな携帯性製品が登場。iMacの登場に象徴されるように、意匠性に優れる国外製品の愛好者が生まれたのもこの時期だそうです。ファッションと同じように「カッコいい」、「おしゃれ」といった情緒性に価値の重きが置かれる「スタイル価値」の時代です。

 2000年後半に登場したのは、後発でありながら価値観や信念を込めた製品。iPodやRedbullに代表されるものです。その価値観や信念をストーリーとして伝えていくことで共感が生まれ、ユーザーにとってその製品が“特別”な存在となりファン化につながります。インターネットやSNSの力も加わり、ファンがストーリーを広げていく意味性で価値が伝わっていく「物語価値」の時代が現代といえるでしょう。

 といっても、いまの時代に大切な「物語価値」だけを作ればいいわけではありません。大切なのは、ここで挙げた価値をひとつずつ加えていくことです。では、このそれぞれの価値は、どこまで深く考えるべきなのでしょうか。

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