Unityが提供するURPを活用 ゲーム感覚で家づくりを行い暮らしを体験できる「BOXWORLD」とは

Unityが提供するURPを活用 ゲーム感覚で家づくりを行い暮らしを体験できる「BOXWORLD」とは
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2021/06/11 08:00

 編集部が注目のクリエイティブ関連サービスを紹介していく本コーナー。今回は「BOXWORLD」をピックアップ。JIBUN HAUS.株式会社 代表取締役社長 内堀雄平さんにお答えいただきました。  

――まずは御社の事業概要について教えてください。

JIBUN HAUS.は、「家をジブンにする。」をミッションに掲げ、テクノロジーを駆使して、人が自分らしい暮らしや生き方を見つけるプロセスを提供しているハウジングテック企業です。

ジブンハウス事業では、VRでの内覧や、リアルタイムの見積もり、明朗な会計を通して、誰もがよりスマートに自分の理想を実現できる、新しい家の買い方「スマートカスタム住宅」を展開。加盟店数は、北海道から沖縄まで全国約140以上にのぼります。

JIBUN HAUS.株式会社 代表取締役社長 内堀雄平さん
JIBUN HAUS.株式会社 代表取締役社長 内堀雄平さん。

MY HOME MARKET事業では、日本ユニシス株式会社とともにバーチャル住宅展示場プラットフォームを展開しています。ほかにも、VR・ARソリューション事業や地域の工務店の魅力を伝えるWARP HOME事業を行っており、これらの事業を通じて、家づくりや住まいを選択する過程を新しいものにする体験を社会のすみずみにまで届ける挑戦を行っています。

――2021年5月に提供を開始した家づくりアプリ「BOXWORLD」にはどういった特徴があるのでしょうか。

「BOXWORLD」は、スマホでRPGゲームを遊ぶように、自分好みにカスタマイズした家の中を自由に歩き回れる家づくりアプリです。

Sand Box(公園の砂場で作ったお城)のように自由に家を作り変えることができる点、ゲームのOpen Worldのようにどこまでも自由に歩き、探検できる点をかけ合わせ、BOXWORLDと名付けました。

自分好みのインテリアや家具を置いた家を、スマホの画面上にある左右のスティックを使って好きなだけ歩き回り、外を見て、昼から夜の時間の流れを体感しながら自分らしい暮らしに想いをはせる――。BOXWORLDが提供するのは、そんな「新しい家づくりの体験」です。

BOXWORLDアプリを操作することで、家具やインテリア、照明を自分好みに変えることができるだけでなく、雨や夜の状態を再現し、従来の住宅検討では不可能だった未来の暮らしを疑似体験できます。照明や天候、時間帯を変えると部屋の明るさがどう変わるのか。家具を入れ替えた時に空間がどう変わるのか、といったことを体感・シミュレーションできるだけでなく、入れ替えた家具の価格も把握することができます。

また、シミュレーションで作った家は保存や共有をすることが可能です。その保存した家を家族に見せることで、本当に自分が求める家を家族や大切な人と一緒に作っていくことができます。

入れ替えた家具の見積金額がリアルタイムで確認可能。

入れ替えた家具の見積金額をリアルタイムで確認可能。

――本アプリの開発にあたり工夫した点や苦労した部分はありますか?

力を入れたのは、ゲーム開発エンジン・Unityが提供する「URP」(Universal Render Pipeline)を活用した点です。

2020年9月にリリースしたβ版のBOXWORLDのRenderStreamingではデータはサーバ上にあり、ユーザーのインタラクションに応じて最高画質(HDRP)の映像をユーザーのデバイスにStreamingさせる技術でした。これはUnity社の最新テクノロジーです。

プロジェクト始動時に、現時点で最高のクオリティのものをモバイル端末で再現したいという思いのなか、最高画質でのインタラクティブストリーミングを開発することができましたが、同時に課題も見えてきました。それは、データはサーバ上にあるためユーザーのインタラクションによって都度最高クオリティの映像をストリーミングするため、ユーザーの端末ではなく、通信インフラへの依存度が高くなり、サーバ費用が重くのしかかるという点です。

通信インフラ自体は我々の努力でコントロールできるものでなく、サーバコストを考慮していく中で商品としてのアウトプットを考える形だったため、開発途中から出てきていた「ゲーム」というキーワードを考え直し、URPを活用するというアイディアに至りました。

URPは、軽量かつ高品質なリアルタイムレンダリング技術です。URPでは、画像処理に必要なデータをユーザー端末に事前にインストールするため、ユーザー側の通信環境の良し悪しに依存することなく、家づくりの体験をスムーズに提供することができます。

URPはRenderStreamingと違い、データをユーザー側の端末にインストールすることで、その端末のなかでユーザーのインタラクションに応じた3Dの空間を体験できる仕組みです。ポリゴン数、テクスチャの解像度、昼夜のシームレスな切り替え、光の影の演出などをリアルタイムに焼き付けていたRenderStreamingと比較すると、事前に影や光などを焼き付けておく必要があるため、画質という点ではどうしても劣ります。しかしデータをユーザー端末にインストールするため、通信に依存することなくスムーズな体験を実現することができるのです。

変更可能な家具やインテリアを可視化。
変更可能な家具やインテリアを可視化。

またサーバ費用も抑えることができるため、RenderStreamingをフラッグシップ、URPをコンシューマーと位置づけて今回の開発にいたりました。BOXWORLDで実現する新しい家づくりの体験は、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社が技術アドバイザリとして加わったことで可能になった側面も大きいです。

――これからどのようなアプリに成長させていきたいですか?

BOXWORLDが提供するインタラクティブなVR操作による家づくり体験は、これまでの住宅展示場への訪問やカタログ比較を中心とした住宅検討のプロセスを根本から変えていきます。JIBUN HAUS.は、BOXWORLDに対応する商品やインテリアを増やしていくことで、世界中のユーザーの家づくり体験をアップグレードし続けていきます。

また、BOXWORLDの発想と技術は家づくり以外にも応用が可能です。結婚式場や葬儀場など、実際には訪れたり、イメージを喚起することが難しかったりする場所でのシミュレーションに応用することで、これまでつなげることが難しかった場所と体験をつなげていければと考えています。