アカウント作成ができるユーザーも限定的だった初期のFANBOX
2021年は、Twitter社がスーパーフォローという有料購読機能を提供すると明らかにしているように、ファンがクリエイターをサポートするサービスが盛り上がりそうな機運も高まっている。pixivFANBOX(以下、FANBOX)の原型がリリースされたのは、約4年半前の2016年年末。まだそういったサービスが珍しかったころだ。
「現在はだれもが自由にアカウントを開設することができますが、当時は一部のクリエイターにピクシブから声をかけ、実験的かつ小規模に運営を行っていました」
そう話すのは、FANBOXのプロダクトマネージャー(以下、PdM)をつとめる堀部裕人さん。ウェブ制作会社でのディレクター経験を経て、2013年にピクシブへ入社。アニメイトグループのサービス立ち上げなどに関わり、2017年4月にFANBOXの開発チームに加わった人物だ。
FANBOXでは、「コンテンツにお金を払う」のではなく、「クリエイターその人に対して応援をする」という考え方が重視されている点が大きな特徴だ。課金した人の呼びかたも「購読者」から現在は「支援者」へと変わった。
「もともとFANBOXというサービスは、月額制のメルマガに近い、“定期購読”のような感覚で毎月クリエイターが作ったコンテンツをファンの方に購入してもらう想定でした。当時のキャッチコピーも『クリエイターとファンをつなぐコンテンツプラットフォーム」。クリエイターの方を収益面でサポートするために月額制にするなど、実際もコンテンツの定期販売を目的としたサービスでした。
ですがクリエイターの皆さんは、普段別の仕事をしながらFANBOXのコンテンツ制作に携わっていることがほとんどで、FANBOXへの投稿まで手が回らず更新が止まってしまうことも多かった。これはクリエイターの方に『毎月何かFANBOX限定のオリジナルのコンテンツを投稿しなくてはならない』というプレッシャーを与え、クリエイターの方々が創作活動をするための時間を阻害しているのではないか――。そう思い、方針を見直すことにしました。
考えた結果行き着いたのは、オリジナルコンテンツがあるかどうかよりも、クリエイターの方に対する応援の気持ちを届けられることが重要だということ。そこで、コンテンツを定期購読するサービスではなく、クリエイター自身を継続的に支援するサービスへと方針転換しました。そのタイミングで、すでに活躍されているクリエイターだけでなく、これから活躍していきたい人をはじめ、誰にでもオープンなサービスへとリニューアルしました。正式にサービスとして展開し始めたのが、2018年4月のことです」
サービス提供後は、初日でユーザーが約1万人急増。運営側はうれしい悲鳴だったという。「カスタマーサポートへの問い合わせ対応が間に合わず、総出で対応しました」と堀部さんは笑いながら当時を振り返る。
「FANBOXのユーザーも、だんだんと海外の方が増えてきましたね。当初は数%程度でしたが、現在はサイトアクセスの約3割を海外の方が占めるようになりました。サービスを受けたときにチップを払うなど、海外のほうが『支援文化』が根付いていることの表れではないでしょうか。サービス開始直後より、サイトでは日本語を含む5つの言語に切り替えて閲覧できるようにしたことも大きかったと考えています」