ラクスルが考えるデザイン経営――デザイン思考がもたらす「愛されるプロダクトと組織力」とは

ラクスルが考えるデザイン経営――デザイン思考がもたらす「愛されるプロダクトと組織力」とは
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 物流プラットフォーム「ハコベル」や印刷・広告のプラットフォーム「ラクスル」などを運営するラクスル株式会社は、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンの下、印刷、物流、広告といった伝統産業にBtoBプラットフォーマーとして参入。業界構造を変革することで取引や業務コストを抑えた新たな仕組みづくりを進めてきました。2017年からはデザイン経営への意識も高め、デザイナー、エンジニア、ビジネスの連携をより強固なものにしています。そもそも、デザイン経営とはどのような経営のありかたなのか。組織にどのようなメリットをもたらすのか。ラクスルの実際の取り組みを交えながら、ラクスル株式会社 執行役員CPO デザイン推進室 室長の水島壮太さんが紹介します。

デザイン経営とは、人間の情緒に投資する経営手法

 はじめまして。ラクスル株式会社のデザイン推進室室長・水島です。本連載では、デザイン経営について皆さんにお伝えしていこうと思います。

 そもそもデザイン経営とは何でしょうか。私は、「経済合理性だけでなく情緒的な顧客価値に投資する経営」だと考えています。その本質にあるのは、人間中心設計の考え方。人間に愛され、そして感情を揺さぶる要素を経営の中に入れていくことで、ブランド価値やイノベーティブな発想力に活かしていくことが、デザイン経営の目指すところです。

 デザインの力をユーザーの課題解決に生かしていこうという方針は、2018年に経済産業省・特許庁(産業競争⼒とデザインを考える研究会)による「『デザイン経営』宣言」にも記されています。デザイン経営の効果は「ブランド力向上+イノベーション力向上=企業競争力の向上」と位置付けられ、事業戦略を考える上でデザイン思考の必要性が示されています。

出典:経済産業省・特許庁 産業競争⼒とデザインを考える研究会「デザイン経営」宣⾔

 昨今、デザイン経営が叫ばれ始めた背景には、グローバルマーケットでの日本の存在力低下があります。技術の多様化によって従来の常識が通用しない時代においては、ユーザーを中心に考えた、本当に求められるサービスやプロダクトを提供できなければ取り残されてしまう――。世界のトッププレイヤーたちがデザインを戦略の中心に据えるなど、デザイン思考を持つことがこれからの競争力のベースになるという考え方が徐々に広がっています。

 BtoBサービスにおいても、これまでは業務効率を高めるための経済合理性に着目したサービス設計が一般的でした。しかし、働き方の多様化、SDGsにもとづいたビジネス変革の意識、ESG投資の浸透などが進み、北米を中心に優れたデザインをもつサービスがどんどん広がっています。やがて日本もこの潮流に乗り、ユーザーのプロダクトへの期待度も高まっていくでしょう。洗練されていないデザインが、ユーザーに機能面への不安をも与えることとなり、プロダクトが選ばれなくなってしまうのです。

 プロダクトの表面的な見た目や触り心地(Look & Feel)だけではなく、ビジネス、ソリューション、サービスすべてにおけるデザイン思考が重要です。

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