商品がど真ん中だから余計なものはいらない
――今日はよろしくお願いします。まず、商品コピーのライティングはなにから始めますか?
何もかも、すべてアイテムがあってこそだと思うんですよね。そのアイテム自体が、もうひとつのメッセージ。だからまずはそのメッセージを大事に受け取ることがひとつ。
書くときは一気に書きます。1回始めると6時間くらいはノンストップ。もちろん途中で水分をとったりはします。自分の中のほかのキャラクターが憑依するような感じです。別のことやものを書いたりするときとは別の人格になるので、人に話しかけてもらいたくない時間ですね。
書くときは、このストアでお買い物をしている人の気持ちとか、使っている人の気持ちとか、フライング タイガー コペンハーゲンが大切にしているブランドプロミス「An invitation to a richer life」を意識して集中します。アイテムについてもちろん調べることもありますし、この世の中にある同じような名前の品物が、どんなふうにプレゼンされているかを見ることはあります。
でも、フライング タイガー コペンハーゲンから求められている私の仕事は商品のスペックを伝えることではない。その商品が日常の中で、必要かどうかわからないものってたくさんあるじゃないですか。いらないかもしれないけど、ふと欲しくなってしまう。そんな心がちょっと膨らんでいるような状態を作るのが私の仕事。『それはさておき』の部分をどれだけ膨らませることができるかを考えます。
――商品コピー全体を通して大事にしていることはありますか?
まず前提として、商品そのものの写真が素晴らしいんですよね。最終的にお客さまの目にどんな形で届くか、そのグラフィックを見ます。
そのうえでね、当初からこのフライング タイガー コペンハーゲンは、商品を無理に演出していない。商品がど真ん中にある。それは商品そのものへの愛とか、開発するときの情熱があるから、余計なものを持ち込む必要がないんですよね。だから、見てわかることはなるべく書かないです。うさぎさんが描いてあったら、「うさぎさんです」とは書かない。だけど、「うさぎさんです。でも皆さんお気づきですか?」というように、皆さんの見方をちょっと変えることが添えられるなら、あえて見えているものも書きます。自分が商品を使うお客さまの立場になって、そのアイテムがどのようなシーンで楽しまれ、愛されるかを想像しているから。