美術館の新たなビジネスモデル確立を目指して NFT鳴門美術館の代表理事に聞く、NFTアートの可能性とは

美術館の新たなビジネスモデル確立を目指して NFT鳴門美術館の代表理事に聞く、NFTアートの可能性とは
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2022/05/11 08:00

 2022年3月1日、徳島県鳴門市にNFTアートを展示する美術館「NFT鳴門美術館」が、一般公開を開始。オープン日には「竜とそばかすの姫」×「アンリアレイジ」コラボ衣装&デジタルデータ(NFT)や、ヒロ・ヤマガタ氏制作の原画コレクション&車などが展示されたことでも話題を集めた。同館の特徴は、デジタルアート作品を展示するだけでなく、NFTの発行や販売などにも取り組むこと。つまり、“美術館”として既存の収益構造からの転換を目指しているとも言えるだろう。今回は代表理事である山口大世氏にインタビューを実施。NFT鳴門美術館はどのような背景で生まれたのだろうか。

NFTアートを展示する場所として美術館が適している理由

――NFT鳴門美術館が生まれた背景や経緯について教えてください。

NFT鳴門美術館は以前、「鳴門ガレの森美術館」として12年間運営されてきた施設でしたが、その12年間はあまり積極的に手をかけている状態とは言えませんでした。建築物として25億円ほどの費用がかかっており固定資産税も免除されていましたし、県庁との共同管理の資産もあり、ある種の負債になってしまっていたのです。

鳴門市としてもどうすればよいのか悩んでいらっしゃったので、単なる美術館ではなくて、“入場収入以外の収入源”で成り立たせることを目指した美術館にリニューアルすることにしました。本格的にこの事業をスタートしたのは、2021年の1月からです。

NFT鳴門美術館の外観
NFT鳴門美術館の外観

私にとって鳴門はとくに縁のある場所だったわけではなく、条件に合ったというのが正直なところです。ただ、民間でもっとも大きな美術館の「大塚国際美術館」も鳴門にありますし、民間で新しいことをするならとても合っていると思いました。

実際に話を聞いていくうちに、NFTアートを美術館で扱うことにビジネスチャンスもあると感じるようになりました。そこで解決すべきだと感じた課題はおもにふたつ。信頼できる組織が「デジタルデータ自体の出所や所有者が誰か」を保証しながら競売を行えること。そして「現物を保管する場合に、誰がどこに保管するのか」ということです。これらの観点からみても、NFTアートを展示する場所として、美術館は非常に適していたんです。

たとえば美術館には、分厚い鉄筋コンクリートで守られている頑丈な金庫が常設されていますし、警備体制も24時間整っている。また億単位の美術品を預かることを考えれば、保険料も比較的安くなります。そういった部分を総合的に判断すると、億単位の美術品を預かることに対する効率が良いと言えるでしょう。これは、美術館が大きく優れている部分だと思います。

NFT鳴門美術館の2階にあるカフェエリアからの景観
NFT鳴門美術館の2階にあるカフェエリアからの景観

ただし、これまでの美術館は一般的に30~40%の入場料収入と50~60%の国や自治体からの助成金で運営されており、基本的には赤字です。これは「展示」のみが目的になっており、ビジネス的な概念があまり根付いていなかったことが原因ではないかと思っています。

またタイミングとしても、新型コロナウィルスのパンデミックで入場者が一気に半分以下になるなど大きく数が落ち込んだ時期で、入場料の収入を見込むことが難しかった。私たちがしなくてはならなかったのは、美術館のビジネスモデルそのものを考え直し、それを“成り立つもの”にすることだったのです。

※この続きは、会員の方のみお読みいただけます(登録無料)。