Merch by Amazonでできることとその特徴
まず、Merch by Amazonでできることと、その特徴を見ていこう。
Merch by Amazonは、2020年10月にスタートした。開業資金の必要なく、クリエイターが自分のオリジナルブランドを立ち上げ、Amazonのグローバルなリソースを活用して世界中に自分のオリジナルTシャツを販売できるシステムだ。
注文を受けてからAmazonが印刷するオンデマンドプリント方式のため、クリエイターは在庫を抱え込むリスクもない。顧客への配送はAmazonが行うという、至れり尽くせりのサービスといえよう。
高い集客力と世界での販売網を持つAmazonが、自社プラットフォームの一部をクリエイターに開放することで、商品開発のリソースを得たといえる。クリエイターは、Amazonという信頼のおけるプラットフォームで、自分のオリジナルTシャツを手軽に世界に売り込める。
クリエイターとAmazonとの間には役割分担があるが、クリエイターの仕事は、ほぼコンテンツ制作と販売促進だ。以下、具体的に見てみよう。
クリエイターがやること
Merch by Amazonでクリエイターが行うのは次の3つだ。
- デザイン
- デザインのアップロード(価格設定を含む)
- 商品説明の入力
デザインは自由で、デザイン系ソフトがなくても始められる。しかし、売れなければ意味はない。その点を忘れないようにしよう。アップロードするデータには仕様があり、アップロードの際には価格を含めた商品情報を入力しなければならない。利用開始には登録が必要だ。
Amazonがやってくれること
Amazonサイドが行うのは、次の6つだ。
- デザインの審査
- 商品ページの作成
- 受注
- 印刷
- 配送
- ロイヤリティの支払い
クリエイターのデザインは、Amazonによって審査される。著作権を侵害してはならないし、Amazonが定めるコンテンツポリシーを満たしていなければならない。審査期間は明記されていないが、おおむね数日とされている。
デザインが審査を通過すると、Amazonによって商品ページが作成される。顧客からの注文を受けてAmazonがクリエイターのデザインをTシャツに印刷し、梱包、発送まで行う。商品はプライム対応だ。販売実績に応じて、ロイヤリティと呼ばれるクリエイターの取り分を支払う。
審査通過や受注など、何かアクションがあればAmazonからクリエイターにその都度通知が届く。
Merch by Amazon ならやらなくていいこと
Merch by Amazonが、一般的なハンドメイドサイトと大きく異なるのはコストの少なさだ。ここでいうコストには、費用だけでなく労力も含まれる。基本的に出品にかかる費用はない。初期費用だけでなく、維持費もかからない。労力面でもクリエイターの負担は少なく、Tシャツのデザインを中心に、パソコンなどのデジタルデバイスがあれば、対応できる範囲に限られている。
一般的なハンドメイドサイトで自分のオリジナルデザインのTシャツを販売する場合、価格と質のバランスを考えながらTシャツを探し、仕入れる必要がある。在庫を保管する場所を確保し、デザインの印刷には印刷業者を探さなければならない。配送に必要な梱包材も同様だ。発送作業もある。
Merch by Amazonなら、このような負担なく、クリエイターはほぼ作品作りに専念できる。
自分のデザインTシャツをAmazonで世界に販売するための7ステップ
ここでは、Merch by Amazonの始め方を見ていこう。
アカウント登録
まずはアカウント登録、つまり利用申請が必要となる。登録先はAmazon.co.jpではなくAmazon.comのほうだ。最初の画面は英語で表示されるが、表示言語を日本語に変更できる。登録には、電話番号とメールアドレス、銀行口座、マイナンバーが必要で、登録の最後には、どのような考えや方向性でデザインしていくつもりなのかを入力する欄もあるので、あらかじめ考えておこう。登録から数週間で申請結果のメールが届く。
売れ筋デザインのリサーチ
Amazonから承認メールが届いたら、売れ筋デザインのリサーチを始めよう。Merch by Amazonには、すでにたくさんの商品がある。自分のオリジナリティを高めて販売につなげるには、市場の調査が欠かせない。
デザインとデータのアップロード
IllustratorやPhotoshopを持っているほうが有利だが、無料のデザインツールでもデザインは可能。デザインデータの仕様は、RGBで解像度300dpiのPNG、画像サイズは15×18インチ内と定められている。データサイズの上限は25MBだ。印刷サイズ100%の大きさで出力しよう。
Tシャツ(半袖・長袖)はもちろんのこと、タンクトップやトレーナー、パーカーを選ぶこともできる。半袖Tシャツは15色あるが、それ以外は4色だ。印刷面は片面または両面を選択可能だが、両面にすればコストが上がる。原価と価格のバランスを見ながら、デザインを決めていこう。
販売設定
デザインが決まったら、販売設定に移る。商品ページに表示される説明書きの入力だ。必要なのは4項目。商品名に該当する「デザインのタイトル」と、その上に少し小さな文字で表示される「ブランド名」、カラーバリエーションを示す画像の下に箇条書きで表示される「商品の特徴」2つ、商品の説明という見出しに続く文章の「商品説明」だ。
検索範囲も設定可能。Amazonの検索でヒットするようにも、ヒットしないようにもできる。Amazonのユーザーに見つけてもらいたいか、Merch by Amazon内に留めるかを決めよう。販売設定を終えると同時に販売許可の申請に移り、その結果は数日内に出される。通過すると、Amazonによって商品ページが作られるという流れだ。
見つけてもらいやすくする工夫
見つけてもらいやすくするための工夫には、大きく2種類がある。ひとつは、デザインのタイトル(商品名)に多くのキーワードを含めることで、もうひとつは、SNSによる宣伝だ。
Amazonユーザーならお分かりいただけるだろうが、Amazonには結構長い商品名のものが散見される。それは、検索でなるべくヒットしやすいよう、あらゆる方向にキーワードを広げようとした結果だといえる。SNSユーザーなら、自分のSNSを使ってどんどん宣伝していこう。
Amazonによる印刷および発送
顧客の注文を受けてから、Amazonが印刷し商品を製作、顧客に商品を配送する。クリエイターが在庫管理や梱包、発送をする必要はない。顧客への請求や料金の回収もAmazon側で対応する。
ロイヤリティの獲得と販売分析
商品が売れると、その販売実績に応じてAmazonからロイヤリティが支払われる。ロイヤリティは商品や価格によって異なり、現在公開されている情報では、販売価格の約4~28%の間だ。販売価格が高いほどロイヤリティも上がる傾向がある。
Merch by Amazonでは、クリエイターが担当しない部分はすべてAmazonのリソースが使われているため、これを高いとするか低いと見るかは、意見がわかれるところかもしれない。
販売が好調でも不振でも、定期的に実績を振り返ろう。何が売れて、何が売れていないのか、その理由は何かを分析することで、売れているものをより多く売り、売れていないものを改善へとつなげられる。
出費ゼロからスタートできるMerch by Amazonは、自分のオリジナルブランドをローリスクで立ち上げたいクリエイターにとって格好の選択肢といえるだろう。