[後編]何に自覚的であるべきか 「フィットする暮らし」のためにクラシコムがクリエイションするもの

[後編]何に自覚的であるべきか 「フィットする暮らし」のためにクラシコムがクリエイションするもの
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2022/09/20 09:00

 ライフカルチャープラットフォーム「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムは、世界中の商品やオリジナル商品、コラム・ドキュメンタリー・ドラマ、そしてポッドキャストや劇場映画など、多様な商品群、そしてコンテンツを顧客に届け続けている。一方、それだけの多面性をもつがゆえに、掴みどころがない印象を受けることもあるかもしれない。ただ、どれだけ多岐にわたろうとも、それらすべては等しく「北欧、暮らしの道具店」らしさをまとっており、その根底にクリエイティブの力が働いていることは明白だ。そんなクラシコムはクリエイティブをどのように捉え、つくってきたのだろう。代表取締役の青木耕平さんと、約10年にわたりクラシコムのクリエイティブを支えている佐藤崇さんに話を聞いた。

状況はつくるのではなく、どう対応するか NORMALLY誕生の背景

――男女共用のアイテムを展開するオリジナルブランド「NORMALLY」(ノーマリー)を始めた背景についてお聞かせください。なぜ「男女共用のアイテム」にたどり着いたのでしょうか。

青木 NORMALLYに限らずですが、ある状況を作るためになにか取り組みを行うことはあまりなく、こういう状況があるからそれにどう対応するか、という視点で僕らの取り組みは始まります。VIについても「上場するということはこういうことだから、VIも必要だよね」という感じで。

NORMALLYは社内でやりたい人がいたことや、取り組むことができるケイパビリティを持った人とのつながりが社外ふくめ形成できていたという内部事情がひとつ。もうひとつは、20代、30代男性の知名度が伸びてきたことが背景にあります。

僕らは定期的に外部機関を使って認知度調査を行っているのですが、20代30代の男性からの認知が女性並みに上がってきていることがわかりました。同時に、僕らを知ってくれていて、利用したことがあると答えてくれているそういった人たちに、今まで何もできていなかったことにも気づかされた。そのため、男性を増やしたいから男女共用をやろうと思ったわけではありません。「気が付いたら20代30代の男性も僕らのこと好きでいてくれていたのに、僕らはそれを知らなくて今まで何もできていなかったから、何かしたほうが良いんじゃない?」という外部の事情が、良いタイミングで合致したイメージでしょうか。

2022年4月に発売した「NORMALLY」のTシャツ
2022年4月に発売した「NORMALLY」のTシャツ

ただとはいえ、女性のお客さまを対象外にするにはあまりに女性のお客さまが多いサービスでもあるので、女性の方でも手にとっていただきやすいものを、と思いました。最初はバッグや財布といったファッション雑貨からスタートしたので、共用で使えるものも良いのではないかと思い、男女共用にたどり着いた。どちらかというと女性中心に行ってきたところから男性向けにも展開していくはざまにユニセックスというポイントを置いたほうが、幅広く実験できそうだという感触もありましたね。

佐藤 デザインをするうえで考えていたのは、基本的に自分が欲しいものをつくるということです。お客さまの9割以上が女性という事業を展開している会社で働く僕は男性なので、当然自分が欲しいものをただ作れば良いわけではありません。そのためいつも、男性の自分でも良いと感じるところを必ず探しますし、毎回それがちゃんとあるんですよね。そういう風に今までやってきたことを、NORMALLYではしっかり形にしようと考えていました。最終的にユニセックスの商品になりましたが、僕も奥さんも欲しいと思うものに仕上げることができたと思います。

青木 佐藤とふたりでキャッキャッ言いながら、「これ、すごく良いよね」と話しながら進めていました。少なくとも企画段階では自分たちがこれはイケているよね、早く出したいよねと思えるかどうかをいちばん確認していましたね。

佐藤 コンセプトももちろん同時に考えていきましたが、基本的には自分が早く着たい、早く見せたいと思えることを大切にしました。

株式会社クラシコム コーポレートクリエイティブ室 マネージャー 佐藤崇さん
株式会社クラシコム コーポレートクリエイティブ室 マネージャー 佐藤崇さん

青木 なにか作品を作っているときも、いちばん気持ちが上がる瞬間は「わ、早くこれ見せたい!」となるときだと思うんですよね。そしてそれが最低ラインでもあると考えています。お客さまにそれを受けいれてもらえるかはそのあとの話ですが、「少なくとも提供側はそういった気持ちでお届けしたいですよ」というレベルまで持っていくことは、僕らの責任だと感じています。

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