「共創」の新たな形を目指して UUUMの成長戦略から見えた、コラボレーション成功のカギ

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2022/10/31 08:00

「コンテクスト」の相互理解が共創のポイント

――コンテクストドリブンであることが企業とクリエイターの共創を成功に導く秘訣とのことですが、より詳しくお聞かせいただけますか?

企業さんには起用するインフルエンサー/クリエイターの情報をしっかりインプットしていただきたいと思っています。テレビCMを打つ場合、何曜日の何時のこの番組の視聴者層に届ける、と具体的に設計するケースが多いのですが、インフルエンサーとのコラボとなった瞬間に、こうしたことまで考えが及ばなくなる場合がとても多い。インフルエンサーのこれまでの情報発信の概要、年齢や人となりなどの基本情報をインプットしているかどうかでコンテンツの内容は大きく変わりますし、結果にも明らかな差が生まれます。それがコンテクストを重視するということなのです。

一方でインフルエンサーやクリエイター側も、クライアント企業の商品や伝えたいポイントをしっかり理解し企画を考えることは不可欠です。たとえば化粧品会社とのコラボで、実際に試してみたところ自分の肌に合わないようであれば、その案件は受けるべきではありません。ですが「毎日は使わないけれどこういうシーンには使えそう」といった提案がインフルエンサーからできるのであれば、成功する確率は一気に上がるでしょう。

コンテクストを無視したどちらかの一方通行では失敗も起きやすくなります。企業側はインフルエンサーの情報を知り、同時にインフルエンサー側も企業の情報を知ることがポイント。その両者のコミュニケーションをつないでディレクションをしていくのが、僕たちの存在意義だと思っています。

一時期、クリエイターファーストという言葉を社内で使っていたのですが、それだけではクリエイターのためにならないことも多々あるとわかってきました。それを受け、現在は経営戦略として「もっとアソビナカマを」を掲げています。アソビナカマというのは、クリエイターやインフルエンサーと、企業の皆さまと、視聴者・ファンの方々と、私たち社員。その4つの立場のアソビナカマが増えるほど、市場も拡大していくと考えました。この4つがWin-Win-Win-Winになるように進めていけば、成功確率も倍増するはずです。

こうしたポイントを押さえ成果をあげている事例として、「ヒトを起点としたブランド・モノづくり」を掲げるグループ会社「P2C Studio」の事業があります。宅トレクリエイターの竹脇まりなさんのプロジェクト、5人組クリエイター「ESPOIR TRIBE(エスポワール•トライブ)」と美容室のAKROSさんがコラボしたヘアケアブランド「EXGEE」、美容系インフルエンサー・ななこがクリエイティブディレクターを務めるコスメブランド「leur charme(ルルシャルム)」など、共創により成長しているケースも多く生まれています。

P2C Studioは、竹脇まりなさん監修の宅トレブランド「MARINESS」を協働プロジェクトとして運営。「MARINESS Protein」は公式ECサイトでの販売開始から2時間で、販売数1万個を突破した。(出典:UUUM プレスリリース)
P2C Studioは、竹脇まりなさん監修の宅トレブランド「MARINESS」を協働プロジェクトとして運営。「MARINESS Protein」は公式ECサイトでの販売開始から2時間で、販売数1万個を突破した。(出典:UUUM プレスリリース

――さまざまなクリエイターと取り組みをしていくなかで感じている、企業やブランドとの共創のためにクリエイターが意識すべきことはありますか?

広告とパブリシティの考えかたを理解していることは必要なのではないでしょうか。たとえば、A社の製品が大好きだと発信している人が競合のB社のタイアップは引き受けることができないでしょうし、好きだと公言しているブランドをおもしろおかしくいじったコンテンツを投稿していたら、一緒に仕事をしたいと思ってもらうことはできないでしょう。気を回しすぎると活動の幅が狭まってしまうこともあるのでその塩梅が難しいと思うのですが、広告、パブリシティ、ブランディングやブランドセーフティについて“理解”はしておいてほしいと感じます。