裏方として堅実であれ SmartHRデザイナーたちのこれまでと今とこれからと

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2019/10/25 08:00

 企業のデザイナーチームをリレー形式でご紹介する本連載。前回の「メルペイ」デザイナーからの推薦を受け、今回取材したのは「SmartHR」。近年、急激に市場を拡大する人事労務系クラウドサービスの中で着実にシェアを広げ、利用企業は間もなく3万社を突破。数々のビジネス賞も獲得している。そして2015年のサービス提供開始からわずか3年半で六本木の中心地に社屋を移し、社員は150名となった。その急激な規模拡大の中で「デザイナー」は今どんな役割を果たし、何に立ち向かい、どんな未来を目指すのか。成長真っ只中のチームのいまを取材した。

急成長の裏にあった地道なリクルーティング活動

 SmartHRのデザイナーは7名(2019年10月現在)。そのうち4名が「プロダクトデザイン」、残りの3名が「コミュニケーションデザイン」という、ふたつのグループにわかれている。もっとも古株となるのは、3年前に入社し、SmartHRのロゴデザインも手がけた渡邉さんだ。

「前職で多岐にわたるデザインを手がけていた経験もあり、営業資料からプロダクトデザインまで、最初は僕ひとりであらゆるデザインを担当していました」(渡邉さん)

株式会社SmartHR コミュニケーションデザイングループ デザイナーマネージャー 渡邉惇史さん
株式会社SmartHR コミュニケーションデザイングループ デザイナー 渡邉惇史さん

 しかし渡邊さんが入社した当時は20名ほどだった社員数は、あっという間に100名を超えた。当然デザインが必要な領域も広がり、渡邊さんは自らデザイナー仲間を探す必要がでてきた。

「とにかく、あらゆる求人サービスを活用したり、知人を紹介してもらうなどして人を探しました。でも、僕と同じように広い領域でデザインをしていて、かつ、フリーランスではなく入社の意思を示してくれるデザイナーにはなかなか出会えなくて……」(渡邉さん)

 人事業務をサポートするサービスを作りながら、自らも採用に苦心していた渡邉さんは、募集する人材の方向性を変えることを決めた。ひとりで抱えていた大量のデザインタスクの中で、緊急性の高いものから順番に切り離していき、その分野に長けたデザイナーを募集することにしたのだ。

 さらに、面接の最終選考も済み、やれることはすべてやった上でどうしてもこの人に入社して欲しいと感じた時には、面接後に近所にあった神社にチームでお参りまでしたという。

 そして3年をかけて、それぞれの分野に特化したチームメンバーが7名となり、今年の6月に、豊富な経験を持つ宮原さんが入社したことをきっかけに、2グループ編成となったのだ。

これからデザインが勝負を決める分野

 宮原さん率いる「プロダクトデザイングループ」は、サービス全体のUIデザインを設計し、UXを高めるためのファシリテーションを行い、エンジニアと連携した開発の企画から実装まで一貫してプロダクトに関わる。

 使いづらくても、一度ツールを導入したらなかなか変更はしづらい。そんな労務人事業界の中で風雲児となり、類稀なる急成長を続けるSmartHR。「使いやすさ」はその活躍の大きな要因だ。

「これまでの人事労務サービスに使いづらいものが多かったのは、紙からデジタルへの過渡期だからだと思います。どうしても、機能追加を優先して、プロダクト設計は後回しになっていたのではないでしょうか。ただ、すでに機能が揃ったサービスはたくさん登場しています。これからは、コストと使いやすいデザインが勝負を決めると思います」(宮原さん)

株式会社SmartHR デザイングループ デザイナー 宮原功治さん
株式会社SmartHR デザイングループ デザイナー 宮原功治さん

 そのように、さらにデザインの力が必要になってくる分野で戦うにあたり、チームをあげて取り組んでいるのは「デザインシステム」の構築だ。質の高い画面を効率的に設計するためのあらゆるルールを考えている。

「デザインシステムはデザイナーたちだけで進めることはできません。会社の方針や他部署との連携が必須となります。SmartHRは社をあげてこの取り組みに賛同してくれているので、とてもスムーズに進めることができています」(宮原さん)

 全社とのつながりは持ちながらも、プロダクトデザイナーにとって、もっとも密接な関係であるのは、サービスの根幹を作りあげるエンジニアたちだ。大きな可能性を秘めた分野に参画するエンジニアたちの高い士気が、彼らの背中を押している。

「エンジニア組織に、工程をスキップしてでも早く出そうとするのではなく、本質的に良いものを作ろうという意識が浸透しており、その空気に僕らも大きく影響を受けています」(宮原さん)

「SmartHRのエンジニアには遊び心を大切にする文化があります。みんな楽しみながらもユーザーのことを最優先に考えている。そのノリを“SmartHRらしさ”としてデザインに落とし込めたら、ということはいつも考えますね」(渡邉さん)

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