Twitterのレイオフ報道で目にする「WARN法」とは
Twitterのレイオフに関しては、短期間にさまざまな情報が飛び交っており、それらが錯綜している印象を受ける。一度、時系列をまとめてみたい。
まずTwitter社が社内メールでレイオフの実行に言及したのは2022年11月3日の夜と言われている。翌日11月4日には、各メディアが社内メールを入手し、その内容を報じた格好だ。
メディア報道を受け、同日イーロン・マスク氏は自身のツイッターアカウントを通じて、現在1日あたり400万ドルを損失している状況であり、今回の大規模レイオフはやむを得ないものだと釈明するツイートを投稿している。
その後数日にわたり、ツイッターの大規模レイオフがWARN法に抵触した可能性があるとするニュースが各メディアから配信された。
11月6日にはロイター通信が「Explainer: Will Twitter layoffs violate U.S. law?」と題した記事を配信、TwitterのレイオフとWARN法の関係を説明している。
米連邦WARN法は、100人以上の社員がいる企業に対し、大規模なレイオフを実施する際、60日前に通達を行う必要があると規定。連邦WARN法では、30日以内に500人以上がレイオフされる場合を大規模レイオフと定義。また全従業員の3分の1が対象となる場合は、50人のレイオフが大規模レイオフにあたるとされる。
WARN法に違反したことがわかった場合、雇用主はレイオフされた社員に60日分の賃金を支払うことが求められるほか、違反1件あたり1日に500ドルの罰金が科せられる。カリフォルニアなど州レベルでも同様の罰則体系となっている。
TwitterがWARN法に抵触した可能性を伝える報道が増えた要因のひとつが、11月3日にサンフランシスコ連邦裁判所に提出された訴訟だ。
この訴訟では、5人が原告となっており、木曜日の時点で社内アカウントが利用できなくなっていたという。原告のひとり(カリフォルニア在住)は、11月1日の時点で、退職金や通知なしに解雇されたと主張している。
この件に関しては、裁判での判決が出ていないことに加え、11月8日に原告側の主張内容が変更されるなどしており、これをもってTwitterがWARN法に違反したと断定できる状況ではなく、今後の展開が注目されているところだ。
WARN法関連報道、今後も増える見込み
現時点までの情報をまとめると、Twitterはレイオフされる社員に対し60〜90日の猶予と報酬を与えることを約束しており、今回のレイオフはWARN法を無視し実行されたものではないということだ。
マスク氏は、テスラのレイオフ時にもWARN法違反の疑いで批判された経験があることから、TwitterのレイオフでWARN法対策を練っていても不思議ではない。
米メディアが入手したツイッター社内メールでは、レイオフされる社員は即座に退職というわけではなく、退職日は2023年1月4日、または2月4日となり、報酬と福利厚生も提供されることが記載されていた。
カリフォルニア州のWARN法では、75人以上を雇用する企業に対し、50人以上をレイオフする際は、30日前に通達することが規定されている。一方、ニューヨークでは、50人以上の企業に対し、全従業員の33%をレイオフする際、90日前に通達することが規定されている。
2023年1月4日という退職日は、11月4日から数えて60日と連邦WARN法が規定する日数となる。一方2月4日は、11月4日から数えて90日となりニューヨークWARN法が規定する日数に該当する。
ただし、退職金額についての情報が錯綜したり、間違ってレイオフされた社員が呼び戻される事態が発生するなど、状況は混沌としている。今後もTwitterのレイオフ関連報道は増えてくるものと思われる。
参考記事
- Protocol「What is the WARN Act? Here’s what to know about the Twitter lawsuit.」
- FORTUNE「Elon Musk broke the law by suddenly eliminating 3,700 jobs at Twitter without required notice, lawsuit claims」
- Reuters「Explainer: Will Twitter layoffs violate U.S. law?」
- The Hollywood Reporter「Elon Musk’s Mass Twitter Layoffs Spur Legal Headaches」
- FORTUNE「Oops. Twitter is already trying to rehire workers Elon Musk fired days ago, sources say
-
BYKURT WAGNER, EDWARD LUDLOW AND BLOOMBERG」