米メディアが連日報道するTwitter大規模レイオフとWARN法の関係

米メディアが連日報道するTwitter大規模レイオフとWARN法の関係
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2022/12/13 08:00

 アメリカではイーロン・マスク氏とTwitter関連の動向を報じるニュースが連日ヘッドラインを賑わせている。Twitter社員の半数、約3,700人がレイオフされたというニュースも記憶に新しい。この大規模なレイオフに関しては、Twitterが米国の州・連邦法に違反した疑惑が取り沙汰され、集団訴訟につながる可能性があるとも報じられており、今後さらに注目度が高まる公算が大きい。焦点となっているのは、Twitterが企業によるレイオフ規定を定めた「Worker Adjustment Retraining Notification(WARN)」法に抵触したかどうかという点だ。このWARN法は、連邦レベルで制定されているだけでなく、各州でも独自規定を盛り込んだWARN法があり、企業が大規模なレイオフを実行する際は必ず遵守しなければならないルールとなっている。今回はアメリカの報道から、Twitterによる大規模レイオフとWARN法に関する最新動向を探ってみたい。

Twitterのレイオフ報道で目にする「WARN法」とは

 Twitterのレイオフに関しては、短期間にさまざまな情報が飛び交っており、それらが錯綜している印象を受ける。一度、時系列をまとめてみたい。

 まずTwitter社が社内メールでレイオフの実行に言及したのは2022年11月3日の夜と言われている。翌日11月4日には、各メディアが社内メールを入手し、その内容を報じた格好だ。

 メディア報道を受け、同日イーロン・マスク氏は自身のツイッターアカウントを通じて、現在1日あたり400万ドルを損失している状況であり、今回の大規模レイオフはやむを得ないものだと釈明するツイートを投稿している。

 その後数日にわたり、ツイッターの大規模レイオフがWARN法に抵触した可能性があるとするニュースが各メディアから配信された。

 11月6日にはロイター通信が「Explainer: Will Twitter layoffs violate U.S. law?」と題した記事を配信、TwitterのレイオフとWARN法の関係を説明している。

 米連邦WARN法は、100人以上の社員がいる企業に対し、大規模なレイオフを実施する際、60日前に通達を行う必要があると規定。連邦WARN法では、30日以内に500人以上がレイオフされる場合を大規模レイオフと定義。また全従業員の3分の1が対象となる場合は、50人のレイオフが大規模レイオフにあたるとされる。

 WARN法に違反したことがわかった場合、雇用主はレイオフされた社員に60日分の賃金を支払うことが求められるほか、違反1件あたり1日に500ドルの罰金が科せられる。カリフォルニアなど州レベルでも同様の罰則体系となっている。

 TwitterがWARN法に抵触した可能性を伝える報道が増えた要因のひとつが、11月3日にサンフランシスコ連邦裁判所に提出された訴訟だ。

 この訴訟では、5人が原告となっており、木曜日の時点で社内アカウントが利用できなくなっていたという。原告のひとり(カリフォルニア在住)は、11月1日の時点で、退職金や通知なしに解雇されたと主張している。

 この件に関しては、裁判での判決が出ていないことに加え、11月8日に原告側の主張内容が変更されるなどしており、これをもってTwitterがWARN法に違反したと断定できる状況ではなく、今後の展開が注目されているところだ。

WARN法関連報道、今後も増える見込み

 現時点までの情報をまとめると、Twitterはレイオフされる社員に対し60〜90日の猶予と報酬を与えることを約束しており、今回のレイオフはWARN法を無視し実行されたものではないということだ。

 マスク氏は、テスラのレイオフ時にもWARN法違反の疑いで批判された経験があることから、TwitterのレイオフでWARN法対策を練っていても不思議ではない。

 米メディアが入手したツイッター社内メールでは、レイオフされる社員は即座に退職というわけではなく、退職日は2023年1月4日、または2月4日となり、報酬と福利厚生も提供されることが記載されていた。

 カリフォルニア州のWARN法では、75人以上を雇用する企業に対し、50人以上をレイオフする際は、30日前に通達することが規定されている。一方、ニューヨークでは、50人以上の企業に対し、全従業員の33%をレイオフする際、90日前に通達することが規定されている。

 2023年1月4日という退職日は、11月4日から数えて60日と連邦WARN法が規定する日数となる。一方2月4日は、11月4日から数えて90日となりニューヨークWARN法が規定する日数に該当する。

 ただし、退職金額についての情報が錯綜したり、間違ってレイオフされた社員が呼び戻される事態が発生するなど、状況は混沌としている。今後もTwitterのレイオフ関連報道は増えてくるものと思われる。