「自己表現が得意」だけではない Z世代が好むコミュニケーションと特性に合わせたSNSアプローチとは

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2023/04/27 11:00

購買前に「あらゆる角度から入念に調べる」Z世代

 次に、購買の観点からカスタマージャーニーの変遷を見てみよう。企業が情報を発信し、それを消費者が受けるというONEWAY型のモデル、いわゆる「AIDMA」と呼ばれるこの行動プロセスは、マスコミュニケーションが中心だった時代の考えかたとされている。

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 その後、ウェブの普及によって生まれたのが、企業と消費者が互いに関与できる「インタラクティブモデル」。ONEWAYモデルと比べると、どんな商品・ブランドであるかを「検索」する、購買後には「共有」する、といったアクションが生まれている点が大きく異なるため、新しいマーケティングの形として注目を集めた。

 だが現在ではそれ以上にSNSが浸透。そんな今を平山氏は「モチベートモデル」と表現した。消費者同士が購買意欲を高め合い、レコメンドし合う点が大きな特徴である。

「まず興味をもったときには、商品やブランドについて検索します。これを第一検索としましょう。このときはまだ興味を自覚している段階ではなく、『どういうことなんだろう』という程度の気持ちです。第一検索でさまざまな情報に触れるなかで深い関心をもつと『ほかの角度からもっと情報を集めたい』と調べていき、そういったプロセスを経て行動・購入したあとにはシェアをする。これが現在の流れです」

 良いと思ったものがあればまずは店舗で見てみる。そこで良さそうだと思ってもいったん買わずに持ち帰り、もう一度クチコミなどを調べたうえで購入する──。MERYがZ世代の人たちにインタビューをした際、そんな声が挙がったと言う。納得のいく選択をするためにあらゆる角度から入念に調べたうえで購入する点が、Z世代におけるカスタマージャーニーの特徴なのだ。

ポイントは「顔が見える/世界観がある」「効率」「多角的」

 では、そんなSNSのコミュニケーション設計では何を意識すべきなのか。平山氏が前提として強調したのは「自分のスマホの中には答えはない」ことだ。「Z世代ではない人たちは、自身のInstagramのリールをみても若い世代に何が流行っているかを知ることは難しい」としたうえで、次のように続けた。

「上の画像は、3名の同じ年代の女性たちに、Instagramのレコメンド面を同じ時間にキャプチャしてもらったものです。ネイルをはじめ、好きなものは共通しているように見えますが、ひとつも被りがない。似た属性であっても、レコメンドされている投稿に同じものはない点が大きなポイントです。このことからも、1人ひとりに適した情報を届けていくことの難しさを感じていただけるでしょう」

 現在が「総インフルエンサー時代」とも表現されるように、個人が自分の考えや良いと思うものをSNS上に発信したことでコンテンツが溜まっていき、それをもとにパーソナライズされていく。個人1人ひとりがメディアであり発信者となっているなか、「企業」はどのようにコミュニケーションをしていくべきなのだろう。

 その問いに答えるべく、平山氏はZ世代が好むコミュニケーションとそうでないものを3つずつ提示した。

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 良いコミュニケーションのひとつめとして挙げたのは「顔が見える/世界観がある」点だ。ブランドがつくられすぎたものではないか、世界観がフィットしているのか、温度が感じられるか、などがポイントである。一方、告知や宣伝であることを察知した瞬間、目を留める対象から即座に外れてしまう点もおさえておく必要があるだろう。

 ふたつめのポイントは「効率」。気になるものがあったときに、その対象へすぐにアプローチできたり、それを深掘りできたりする動線がなければ、次のアクションへとつながらない。興味を持ってもらったあとのプロセスは、スムーズかつシンプルな設計が求められている。

 3つめは、アプローチの方法だ。ここが、SNSにおけるコミュニケーションの大きなポイントだと平山氏は強調する。マスメディアが主流だったころは、ブランドとして認知を広めるためには、同じメッセージを同じ人たちに発信するのが一般的であったが、SNSはそうではない。

「同じものを同じように語っているだけでは同じ人にしか当たらない。これが現在のパーソナライズされたSNSを上手く活用するための大前提です。同じメッセージであったとしてもどのような形で届けるのか。誰がそれを発信するのか。世界観や提案性のあるコミュニケーションを心地良く、かつ多角的に重ねていくことが、SNSコミュニケーションの要なのです」