AIとデザインの融合による変革の時代に突入しています。かつては、AIが提供できる情報やデータ解析の範囲があまり広くなかったため、デザイナー界隈と業界への影響もかなり限定的でした。
しかし、自然言語による柔軟性の高い指示が可能となり、極めて汎用的なデータ出力を可能としたGPT-4(GPT-3)をはじめとしたLLMの登場とChatGPTのような生成系AIがリリースされたことで、飛躍的な進化を遂げました。今やデザインプロセスのあらゆる側面で役立つ力強いパートナーとなりうる可能性を、AIは秘めています。
これまでのAIとデザイン
生成系AIが取り沙汰される前にもAIを使ったサービスはいくつも存在していました。デザイン界隈における代表格はアドビが提供する「Adobe Sensei」だったのではないでしょうか。
Adobe Senseiは、アドビが開発したAIと機械学習の技術です。Adobe Senseiは、Photoshop、Illustrator、Premiere Proといったアドビ製品に統合されており、画像編集、グラフィックデザイン、動画編集などのタスクを効率化。より自然なデザイン効果を実現するものとして登場しました。Photoshopの「選択」機能、Illustratorの「グラデーション」機能、Premiere Proの「オートリフレーム」機能などがその具体的な機能です。
Adobe Senseiは、おもにデザインやメディア制作に特化したAI技術であり、アドビ製品に組み込まれている機能を強化・効率化することに重点を置いています。これらのサービスはあくまで特定製品に特化した機能であり、対象となるソフトウェアでの利用を前提とした使いかたにとどまっていたように思います。
また、昨年2022年から話題になっているStable DiffusionやMidjourneyについても衝撃が走りましたが、これもtext-to-imageモデル、つまりテキスト(prompt)から画像を生成するため、革新的ではあるものの用途は画像生成に限定されています。
しかし、GPT-3などのLLMとChatGPTのような生成系AIの出現によって、これまでのAI活用の常識が打ち壊されました。
ChatGPTとLLMとは
読者の皆さんの中で、ChatGPTのことを知らない人は少ないでしょう。ChatGPT(チャットジーピーティー)は、OpenAIが2022年11月に公開した人工知能チャットボットで、自然な人間のような対話を生成するスキルを持っています。
一方、「LLM」と言う言葉を耳にする機会も増えていると思いますが、これは一般的に「Large Language Model(大規模言語モデル)」のことを指します。大量のテキストデータから学習し、新しいテキストを生成したり、質問に回答したりするAIのひとつで、GPT-3やGPT-4などがこの種類に該当します。 ChatGPT自体もLarge Language Modelの一種で、人間との対話に特化して訓練されたモデルと言えます。