インフルエンサーマーケティングに感じた「信頼」面の課題
――ご経歴とあわせて、インフルエンサーマーケティングに感じていた課題についてお聞かせください。
1社目はアドテクノロジーを開発・展開するDSP事業を行っている会社に入社し、デザイナーとクリエイティブプランナーとして働きました。2社目ではインフルエンサーマーケティングの会社にジョインし、そのあと電通デジタルに転職。クリエイティブプランナー/コピーライターとして、インフルエンサーマーケティングやWebCMの企画制作、コンセプトメイキング、コンテンツマーケティングなど、デジタルを中心とした広告コミュニケーション設計に関わっています。業界としては、化粧品やアパレル、医薬品メーカーが中心です。
前職ではインフルエンサーマーケティングに特化していたため、マーケティングの戦略立案や戦術の計画段階などの上流工程の部分を見る機会には恵まれませんでした。また、おもに代理店からの案件を受けることが多かったため、その案件に関連するインフルエンサー施策に集中し、より広範なマーケティング戦略や戦術の計画段階、そして戦略的な視点にまで踏み込むことが制約されていた点にもどかしさを感じていました。
それを解消するべく電通デジタルにジョインしましたが、入社後、案件に取り組む中で、インフルエンサーマーケティング自体の課題も見えてきました。プロモーションを行う際、インフルエンサーさんに一時的に協力していただくことはあっても、1年や2年といった長期にわたる継続的な起用を前提とした施策はほとんどありませんでした。また、一過性のトレンドに左右されることも多く、中長期的かつ持続的な取り組みは難しいと思いながらも、その必要性を感じていました。
もうひとつ感じたのは、広告の不自然さです。クライアントが伝えたいことをインフルエンサーさんに言ってもらうとなると、あまり本人が思っていないことを発信しなければならない場合もあるかもしれません。そしてそれが「やらされている感」や「嘘っぽさ」につながり、受け手となる生活者やユーザー、フォロワーからすると不自然な形になっているようにも感じましたし、ブランドもインフルエンサーさんもそれまで築いてきた「信頼」が場合によっては損なわれてしまうのではないかと思いました。
インフルエンサーマーケティングが広く認知され、多くのブランドが取り組むようになると、フォロワー数などを基準に起用されるインフルエンサーさんが固定されてきてしまいました。たくさんのインフルエンサーさんがいるため全員が被ることはありませんが、「コスメだとこの人だよね」など重なり合うことも多い。
また一部ではありますが、タレントとくらべ競合NGがないケースが多いため、近しいブランド複数社のプロモーションしているインフルエンサーさんもいます。コスメやファッションはとくに、特定のブランドに限定せず、ほかの商品も購入することがありますし、複数のブランドのファンであることは一般的なことだと思うので、いくつかのブランドを購入してそれらを投稿することはまったく問題ありません。ただ、生活者からすると、本当にそのブランドが好きかもわからない。「本当はどのブランドが好きなんだろう?」と生活者が疑問を抱けば、それはブランド、インフルエンサーさんともに信頼にも大きく関係します。そういった背景をふまえると、そのブランドが本当に好きな人をあつめてPRに協力してもらったほうが、両社がハッピーなはず。それが叶えられる座組みをつくりたいと思ったのが、ラポールベース マーケティングの始まりです。