企業やブランドは、Snapchatの「AR技術」を活用する方法も
――Snapchatを活用している企業やブランドにはどういった特徴がありますか?
ビジュアルに特化して、ARで付加価値を出そうとしている企業、具体的にはファッションやエンターテイメント分野が現状は多いですね。ARによる試着体験、コンサート会場でのエンターテイメント表現の拡張、観光地といった活用方法があります。ただARは現実世界を拡張するものなので、親和性という意味ではどんなジャンルにも応用できると感じています。
Snapchatが行った調査「Snap Consumer AR Global (Japan) Report 2021」によると、今後3年で75%の人がARを頻繁に利用するようになると言われています。さらにARを使うと、購買時に特定のブランドを優先する割合が44%上がり、返品率は25%も低下。コンバージョンレートは94%、約2倍に上がるとも言われています。
マーケティングの世界には「認知」「興味・関心」「比較・検討」を経て購入に至る「パーチェスファネル」という図式がありますが、ARを使うと、最初の「認知」と同時に「体験」ができるようになります。ブランド「X」があると認知した瞬間に、「X」の服をスマホでAR試着できるようになれば、パーチェスファネルをくだるスピードが加速します。だからこそコンバージョンが94%も上がるし、返品率も25%下がる。海外ではすでにたくさんの事例がありますが、国内でも先日、アパレルのパルグループホールディングスさんが、Snapchatのアプリを使ったバーチャル試着体験を導入されました。
――最後に、Snapchatを活用していきたい企業やブランドに向け、アドバイスをお願いします。
活用のためのステップとして、大きく3つあると考えています。ひとつめは、まず企業アカウントを作ってみること。多くのZ世代が活用しているアプリですので、若年層に訴求をしたい企業さんには魅力を感じていただけると思います。若者はトレンドセッターであり、多くの流行の発信源。そういった意味でも、Z世代への訴求は重要ではないでしょうか。
ふたつめはSnapchatを使ってコミュニティを作り、ファンとのエンゲージメントを高めていくことです。Snapchatは履歴が消えていく特性があるため、事務的な話は向いていないかもしれませんが、気軽に話ができるというメリットもある。企業とユーザーでグループをつくることもできるため、雑談を楽しむようなコミュニケーションの場に適していると思います。
たとえば、アーティストがコンサートのときにファンとグループを作り、さまざまな角度からリアルタイムでその様子を共有し、楽しんでもらうといった使いかたもできるでしょう。写真はすべて消えてしまうため、肖像権などを必要以上に気にする必要もありません。イベントと絡めると、さらにおもしろいアイディアが生まれると思います。
3つ目は、AR技術の活用です。実は我々のARのテクノロジーは、SDKとして無償で他社に提供しています。自社アプリにもそのまま導入することができ、Snapchatのアカウントがないユーザーでも利用できるようになっています。
海外では、ファッションブランドDressXのアプリやディズニーワールドのアプリで弊社のAR技術を活用いただいています。日本ではまだ事例はありませんが、進行中の案件があり、近いうちに発表できる予定です。ぜひ今後のSnapchatの取り組みにもご注目ください。
――長谷川さん、ありがとうございました!