デザイナーという曖昧な枠組みのなかで
GINZA SIXにあるオフィスは、一切の壁が存在しないため、その大きさ以上に広さを感じる。この中で働く社員140名のなかで、デザイナーは10名。大きくは、プロダクトとビジネスのふたつの部門にわけられ、さらにビジネスの中でマーケティングチームとカスタマーサクセスチームにデザイナーが所属する。
もっとも多い6名のデザイナーが所属するのはプロダクトチーム。プレイドの根幹となるサービス「KARTE」のUI設計を担当する。
一方ビジネスの中で、3人のデザイナーを有するマーケティングチームは「KARTEの魅力を世の中に伝え、知らない人に興味を持っていただく」ことを目標に、新規顧客獲得に向けたイベントやサービスサイトの企画・制作・運用、オンライン・オフライン問わず広告の企画・制作から営業サポートまで幅広く行う。今回話を聞いた中では、稲葉航さんがその所属ではあるが、もともとはデザイナーとして入社したわけではないという。
「受託制作会社でのクリエイターとしての経歴はありますが、プレイドにはビジネスサイドの人間として入社しました。でも、気がついたらデザインチームに入っていたんですよね」(稲葉さん)
プレイドのデザインチームは、広義の「デザイン」というスキルを持った人が、ナレッジを共有していけるように作られたゆるやかな枠組みのチームであり、上下関係などはないのだという。稲葉さんの肩書きは今でもマーケターだ。ただし必要であれば、デザイン業務も行う。
「僕も将来的には、デザイナーの肩書きが消えるくらいビジネスに強くなりたいと思っています。デザインは『能力の一要素』くらいに捉えていきたくて。」(右田さん)
そう語る右田祐二さんは、マーケティングチームとプロダクトチームを経験した後、今年の7月からはデザイナーとして初めて、KARTEのオンボーディングやプロダクト周辺の体験設計などを行うカスタマーサクセスチームに自ら異動した。社内で今もっとも重要で、課題がある。と思ったところには積極的に関わっていくスタンスだからだ。
チームを2ヵ月で組み直す「Focus」という仕組み
プレイドのプロダクトチームは、その特徴のひとつとして、2ヵ月ごとにプロジェクト単位でチームを変えていく「Focus」という仕組みを採用している。今年1月に入社した木村和寛さんはこのチームに所属し、デザイナーの立場からプロダクトの改善を行っている。
「2ヵ月という区切りがあることで、プロジェクトは集中して進めやすくなっていると思います。ただ、2ヵ月というのは目安なので、まだ続けた方が良い場合には延長することもありますし、かなり柔軟な仕組みです。都度、開発チーム全体でそれぞれの取り組みについて発表する機会もあり、わかりやすい目標になっていいですね」(木村さん)
2ヵ月ごとに担当プロジェクトもチーム構成も変わるというのは、無駄な作業を省き、フレッシュさを保つ良い効果がありそうだ。しかし、デザイナーだけでも6名、エンジニアやディレクターを合わせると37名ほどのプロダクトチームを2ヵ月ごとに担当わけしていくことは容易ではないだろう。
しかも驚くことに、プレイドには140名ほどの社員の中でマネージャーと呼ばれる役割はないのだという。
「PMやリーダーの役割でプロジェクトを引っ張る存在はいても、それはいわゆる管理職と呼ばれるものではなく、あくまでプロジェクトを成功に導くための”役割”として存在するだけです。僕らもみんな、管理されているとは思っていません」(右田さん)
一方、マネージャーがいないことや「フラットな組織」などはすべて、その時々に最速で事業を進捗させるための「手段」というのがプレイドのスタンスで、常に変化するという前提が全社で共有されているという。
「事業を進捗させるために、個人が最大限の能力を発揮する環境が必要という考えの元、今のチームや組織があるんだと思います。個の力がめちゃくちゃ大事という話は、CPOの柴山もよくしていて。だから、チームの目標に向かって個々人がまずはベストを尽くすことを考える。それを最大化するためにチームワークを活用するイメージです。圧倒的に自立や自走が求められる環境ですね」(木村さん)