一般社団法人I.C.E. (Interactive Communication Experts)は、「クリエイティブカンパニーの若手が描くキャリアプランとは?」と題したセミナーを開催。
I.C.E.は「デジタルクリエイティブ業界の今を見すえ、魅力的な未来をつくる」というビジョンを掲げており、プロダクションやエージェンシーをはじめとしたデジタル系クリエイティブに携わる24社が加盟。業界スタンダード構築のための「制作ガイドライン (2022年版)」「制作プロセスマネジメントハンドブック (2022年度版)」の提供や⼈材育成のためのリクルートセミナーの実施などさまざまな取り組みを行っている。
本セミナーでは、会員企業の現場スタッフを対象に実施した「制作プロダクションのキャリアに関する意識調査 (2023年7月版)」からクリエイターのキャリアプランを考察するセッション、現役のクリエイターが目指すべきキャリア形成を語るセッションの二部構成で行われた。
第二部では、I.C.E.理事長/株式会社ワンパク 代表取締役 阿部淳也さんをモデレーターに次の3名が登壇した。本記事では設けられた3つのディスカッションテーマよりひとつを抜粋。その一部と、3名からクリエイターへのメッセージをお送りする。
登壇者
リクルート マーケティング室 クリエイティブディレクター 萩原幸也さん
新卒でリクルートに入社して以来、リクルートやリクルートグループのサービス、コーポレートブランドのブランディング、プロモーションを担当。現在は、武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所で客員研究員としても活動する。
株式会社HARKEN 代表 クリエイティブディレクター 木本梨絵さん
1992年生まれ。株式会社HARKEN代表。武蔵野美術大学非常勤講師。自然環境における不動産開発「DAICHI」を運営。日本の里山に眠る可食植物の研究をする「日本草木研究所」クリエイティブディレクター。自らも事業を営みながら、さまざまな業態開発やイベント、ブランドの企画、アートディレクションを行う。
ベースドラム 取締役 テクニカルディレクター 鍜治屋敷圭昭さん
広告代理店 大広にてストラテジックプランナー、制作ディレクター、プロデューサーなどに従事したのちプログラマーに転身。テクニカルディレクターの経験などを経て、現在はテクニカルディレクションに特化したベースドラムで代表をつとめる。
テーマ:社内外問わず、メンター・ロールモデルはいたか?必要か?
木本 ロールモデルはいなくて良いし、いないほうが良いかなと思っています。その人になることはできないですし、それぞれの性質は異なるからです。
一方、メンターは必要だと感じています。新卒で入社した事業会社で、私はクリエイティブ領域に携わることができないルートだったこともあり、社内には気軽に相談できる人はいませんでした。そのため大学時代の先生ふたりをメンターとして、キャリアで悩むことがあれば連絡したり、相談したり、今ではお仕事もご一緒したりしています。おふたりは持っている性質も異なっているため、なにか相談したときにきっとそれぞれ違うアドバイスをくれるだろうという方たち。そのため「私はこちらの道に進みたいからこの方に相談しよう」というように、内容によって相談相手を選ぶことができる。複数人メンターがいる状態が、いちばん良いのではないでしょうか。
萩原 社内で「ロールモデルがいなくて困る」という声はたくさん耳にしますが、私はロールモデルとしている人はいないです。必要だと感じたこともないですね。同じ条件の人は世の中にいないですし、たとえその人になりたいと思ってもなることはできないですし……。ただ相談できるようなメンターは絶対にいたほうが良いと思います。
鍜治屋敷 僕はフェーズによってロールモデルはいましたね。広告代理店時代は、初めてついた先輩がメンターの役割を担ってくれていました。幸運なことに非常に優秀な方で、縦のラインで常に一緒に行動し、社会人のマナーから仕事の仕方まで教えてもらった。今でも定期的に相談したり飲んだりもしています。
そのあと僕はプログラマーに転身しましたが、ちょうど広告制作業界にプログラミングが広がり始めたころ。ブラウザの外側にプログラミングの技術が出ていったようなタイミングでした。そんなときロールモデルにしていたのは、一緒に創業した清水幹太。プログラマーになりたいと思ったときに考えていたことを、すでに先取りして取り組んでいたからです。今でももちろん彼をリスペクトしていますが、同僚になってしまったこともあり現在のモデルはいません。これからは、あとに続きたいと思ってくれる新しい世代が増えるような道を作っていけたらと思っています。