2度目のリニューアルのきっかけは「お客さまの変化」
そもそも「中部国際空港 セントレア」は、2005年2月17日に開港した愛知県常滑市に位置する国際空港だ。日本国内において法律上「国際空港」と呼べる空港は成田空港、関西空港、そしてセントレアの3つだが、同空港はそのなかで商圏に抱える人口がもっとも少ないため、「航空需要だけでは勝負にならない」との危機感があった。
こうした背景のもと、中部国際空港がウェブサイトのリニューアルに着手したのは、空港利用者の拡大はもちろん非利用者の来場も増やすことで、商業収益の増加を狙う戦略の一環だった。
そこでは、SNSによる情報発信やオウンドメディアを積極的に活用し、さらにそこから得られた顧客データを活かすなど、デジタルマーケティングの戦略が立てられた。そしてそういった流れのなかで、ウェブサイト刷新を行ったのは2013年と2019年の2回。最初のリニューアルについて、中部国際空港の村松洋文さんは次のように話す。
「開港から2012年まで、ウェブサイトはまったくリニューアルしていませんでした。当時は、空港利用者と一般来場者の両方を増やそうとしており、どっちつかずのサイトになっていたと思います。カタログのような使いかたを想定していたんですよね。そのため2013年のリニューアルでは、お客さまによりよく使っていただける『ツール』としての機能を意識したものへと変わりました」
また、2019年のリニューアルを担当した中部国際空港の千葉貴道さんは、踏み切ったきっかけのひとつに「お客さまの変化」を挙げた。
「当時は空港を取り巻く環境が『ハード』と『ソフト』の両面で大きく変化したタイミングでした。
ハード面では、外国人旅行客の増加やLCC(格安航空会社)の増加に対応するため、セントレアにふたつめの空港ターミナルをオープン。これにより、利用する航空会社によって分かれるお客さまの動線に対応するべくリニューアルを実施しました。またソフト面では、飛行機に乗るお客さまの旅行形態がすでに変化していたことが理由のひとつです。旅行代理店が組んだツアーに参加するのではなく、個人がホテルや飛行機などを選択することが一般的になっていたため、我々も1人ひとりに合った情報を提供していかなければなりませんでした」
これら2度にわたるウェブサイトリニューアルは、どちらもアクアリングが担当した。愛知県名古屋市に本社を構えるデザイン制作会社で、コミュニケーション戦略から開発運用保守まで一貫して担うことが可能だ。
同セッションでは、2度目のサイトリニューアルにおいてUXリサーチやプロトタイピングなどをどのように用いたのか、それらをもとにどうやってサイト制作を進めたのかといったアプローチ方法が解説された。