少し遠回りしながらデザインの道へ
――はじめに、クリエイティブに興味を持ったきっかけを教えてください。
小さいころからものづくりやイラストを描くのが好きだったこともあり、高校に進学する際、美術の授業が多く取れる単位制の高校を選びました。ただ、高校入学前から美大を目指しているような、レベルの高い同級生に囲まれたことで挫折をしてしまって……。大学は美術系を諦め、当時興味があった心理学を勉強できる大学に入りました。ですがイラストやデザインは引き続き好きだったので、学園祭実行委員としてパンフレットや看板を作っていたのですが、やっぱりすごく楽しいなと気づいたんです。そこで、親に無理を言って大学を退学し、デザイナーの養成所に入学。少し遠回りをし、デザインの道に戻ってきたという感じでしょうか。
最初は、商業施設の販促物やウェディングのカタログといった印刷物や、ロゴマークなどのデザインをする会社で2年ほど働きました。その後、エンタメ関連の会社に移り、舞台のパンフレットやCDジャケットのデザインをしていました。
そのころ個人としてもデザインの活動をしていたのですが、ありがたいことに少しずつ仕事の依頼が増えていったんです。通勤がつらく、個人のデザイナーとして自宅で仕事ができるのは良いなとも思っていたため、そのタイミングで思い切って独立しました。今考えると何の後ろ盾もないのに、勢いで飛び出してしまった感じがするのですが(笑)。直前に働いていた会社がその挑戦を応援してくださり、引き続きいくつかお仕事をいただけたことはひとつの安心材料ではありましたね。現在は個人のお仕事を受けつつ、昨年からフルリモートで正社員としても働いています。
――会社員時代に印象的だったプロジェクトはありますか?
大手ホテルのレストランが開業する際に、そのロゴマークのコンペに参加することになりました。入社してまだ数ヵ月の時期だったのですが、私と先輩の二人三脚で、昼も夜もロゴマークを考え続けていました。その結果、なんと私の案をふたつも採用していただけて。当時は、脳が沸騰するぐらい頭をフル回転させていたので、ずっと筋トレをしているような状態。すごくつらくもあったのですが、結果に結びついたことが嬉しかったですね。今はその経験があるからこそ、少し大変な仕事があっても「あれに比べたら乗り切れるな」と、踏ん張ることができているのだと思います。