気持ちのいいインタラクションを作りだすときにもっとも大切なこと――THE GUILD奥田さんが語る

気持ちのいいインタラクションを作りだすときにもっとも大切なこと――THE GUILD奥田さんが語る
2020/01/30 11:00

 アドビ システムズ(以下、アドビ)は、アドビ最大のクリエイティブイベント「Adobe MAX Japan 2019」を昨年12月にパシフィコ横浜で開催した。本記事では、THE GUILDのインタラクションデザイナー/プログラマーの奥田透也さんが登壇したセッション「ユーザーの心を掴む!気持ちいいインタラクションがつくりだすインターフェースデザイン」の様子をお届けする。

“雑な”インタラクションとは

 デザインスタジオ「THE GUILD」のボードメンバーでもあり、多摩美術大学の統合デザイン学科で非常勤講師もつとめる奥田さん。普段は、サービスの立ち上げやウェブサイトのデザイン実装、インスタレーションの企画開発などに携わっているという。

 そんな奥田さんはセッションの冒頭、「気持ちのいいインタラクションを作る唯一無二の方法」を早々に明かした。それは「雑にやらない」。これに尽きるというのだ。では、“雑な”インタラクションとは何か。奥田さんが挙げたのはこの2点だ。

「ひとつは、ユーザーのことをちゃんと見ていないということ。何となくふわっとさせておけば良くなることもあるのですが、それで本当にいいのか、ということを考えなければいけません。ユーザーも人間なので、こういった部分は伝わってしまうんですよね。

そして常に気にしなければいけないのは、インタラクションは対話だということ。ユーザーをきちんと見て、どんな気持ちでシステムと対話しようとしているのかを、私たちは繊細に読み取る必要があります。

もうひとつは、ひとつの部分にこだわりすぎて、全体構造が破綻しているというパターン。建物で言うと、個々の職人さんがおのおのこだわりを存分に発揮し、『モダニズムの家具を作りたい』、『バロック様式の玄関がいい』などと思い思いに作りあげた結果、全体としたまとまりがなくなってしまうケースです。

こだわるのは、もちろんすばらしいことだと思いますが、こうなってしまうのはすごくもったいない。でもユーザーに伝わるのは、あくまで全体を通じたひとつながりのフロー、体験なんです。こだわりを無駄にしないためにも、それが最終的に体験者にどんな意味をもたらすのか。常に全体を見ながら部分を見ることが大切だと思っています」

THE GUILD インタラクションデザイナー/プログラマー 奥田透也さん
THE GUILD インタラクションデザイナー/プログラマー 奥田透也さん

 次に、奥田さんは人々が生活している環境の変化に触れた。ここ10年~15年くらいで、スマホサイトやスマホアプリといったスマホの登場と普及により、ウェブサイトを取り巻くインタラクションデザインの状況が大きく変わってきた。そしてそれは、動きに求められる耐用年数がどんどん長くなってきており、インタラクションデザインに求められる強さの質が変化してきていることを意味すると、奥田さんは指摘する。

「たとえば以前とくに多かったキャンペーンなどの広告だと、開始と終了が事前に決まっていて、そこを全力でやりきるというモデルですね。期間が短いので、人が表現に出会うチャンス、つまり接触機会が限られるので、そのインパクトがもっとも重視される。いかに一瞬で人を惹きつけて気持ちよくさせるかが、インタラクションには求められます。

一方、サービスデザインだと、サービスが生まれてからだんだんと育てていくようなスキームになる。改善を繰り返し、長期的にプロダクトを育てるという考え方になります。すると、インタラクションの気持ちよさも、派手さよりも、より自然で、サービスや暮らしに溶け込むもの、普遍的なよい手ざわりのもの、という考え方が重要になると考えています。

つまり、今とくに重要になっている強い表現とは、『長く愛される普遍性を帯びた表現』だと私は思います。そのため、私が目指しているのも、そういった普遍的な気持ちよさを持っており、長く愛されるようなインタラクションです。

インタラクションデザインの3要素

 ではインタラクションとは、一体なんだろうか。その前に、まずインターフェースという言葉について考えてみると、それは「インターとは間、フェースは面。つまり、システムとユーザーの間にある境界」であると奥田さん。

「私たちはユーザーとして、システムの振る舞いに対して、インターフェースを通じて情報を受け取ったり、逆にそれを通じてシステムを操作したりしています。一方でインタラクションは、インターフェースを突っ切るこの矢印です。

インターフェースが間の面であるのに対し、インタラクションは間のアクションということです」

 さらにこのやりとりは、システムがユーザーに「気づき」を与える段階、ユーザーがシステムに対して「行為」を行う段階、行為に対してシステムが「反応」する段階の3つに分解できるという。この一連の流れをデザインすることが、インタラクションデザインであると奥田さんは考えている。

このやりとりを具体的に想像するための例として奥田さんが挙げたのは、オフィスに到着すると暗かったので照明をつけるという場面。これを先ほどの3つの段階に当てはめてみるとこのようになる。

こういった複雑な流れを、私たちの脳は一気に、そしてほとんど無意識にやってのけることができるのだ。

「ここで大切なのは、分解したあとにユーザーとシステムの間にどんな丁寧なやり取りがあったのかを考えることです。今回の例でいうと、私たちはスイッチらしさを知っている、ということです。つまりメタファーとしてスイッチを捉えている。誰も見たことがない形状のスイッチがあったとしても、それをスイッチと認識することはできないですよね。そうなると気づきがないので「行為」、「反応」の段階に進みません。このようなスイッチらしさ、つまりメタファーをうまく使うことで、インタラクションへの導入がスムーズになります」

このスイッチにオンとオフを示すラベルはついていないが、それでも部屋の電気をつけることができたのは、「部屋の暗さという事前情報をわれわれが感じていたから」。つまり部屋が暗いという情報と、このスイッチにはオンとオフしかないというメタファーにより、切り替えれば照明が必ずつくと予測した。そしてスイッチを押すという行為をすると、カチッという手ごたえを得る。これにより、スイッチが切り替わったことを感じることができる。そして、スイッチの切り替わりとほとんど同時に照明がつくことで、インタラクションが思いどおりに完了したのだと実感できるのだ。

「こうして見ると、見慣れた照明のスイッチにも、こういったシステムとユーザーの細かなやり取りがあることがわかります。このように、私たちはインタラクションに囲まれて生きているのです。私たちが周囲の情報とどう触れているかを注意深く観察することで、インタラクションデザインの素養がついてくると私は考えています」

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