中国から始まったショートドラマのトレンド
ごっこ倶楽部が結成されたのは、2021年5月。当時のメンバーは、役者5人とフォトグラファー1名。コロナ禍で仕事がなくなり、自分たちでできることを探して見つけたのが、TikTokの縦型ショートドラマだった。最初は法人化しておらず、2022年の2月に株式会社GOKKOを設立した。
会社の発起人は、共同創業者であり、クリエイティブサイドの総監督を担う多田智さん。多田さんが日本人と中国人のハーフなこともあり、中国のコンテンツをトレンドとして先読みできたという。そんな多田さんがごっこ倶楽部をスタートさせ、1ヵ月でTikTokのフォロワー数は17万まで伸びた。 しかしその一方、制作費は持ち出しだったりとマネタイズに苦労していた時期でもあった。そんな資金が底を尽きる寸前のタイミングで、田中さんがチームに加わることになったのだ。
ではそもそもなぜ、ここ数年でショートドラマが流行したのだろうか。その背景について田中さんは、サービスに投稿できる動画の尺が伸びたことを理由のひとつに挙げた。
「たとえばTikTokは、コンテンツの尺が最初15秒から始まり、60秒、3分、そして、現在は60分まで伸びました。これによってダンスのような出尽くされたコンテンツだけではなくて、ストーリー性があるような新しいコンテンツが作れるようになったわけです」
また田中さんは、作り手からしてもショートドラマ は制作しやすいコンテンツであり、さまざまな映像配信系のプラットフォームでランキング上位を占めるドラマが多く視聴されたことも必然だと語る。
「好きなテレビ番組のジャンルとしてドラマは今も昔も不動の人気を誇っています。視聴率ランキングの上位にアニメが入っている点で日本と世界は異なりますが、ドラマが人気であることは日本も世界も変わりません。中国で縦型に最適化された映像コンテンツの定番となった縦型ドラマが日本にもフィットしたのは、当然の流れだったと言えるでしょう」
2019年ごろに中国で始まったショートドラマが、日本にも上陸して盛り上がりつつある段階だ。先に流行していた中国での流れを汲むと、市場として「企業がドラマを作る」動きが起こっている。
「マーケティングの基本として、消費者が長く滞在している領域に広告が使われます。昨今はZ世代がテレビを観ないと言われているため、企業がマーケティングでアプローチするのは難しいと考えられていますが、ショートドラマに広告を乗せることがその突破口になっています」
また、企業が参入することで「コンテンツの質も上がっていく」と田中さんは続ける。
「これまで基本的には一般のユーザーが自分たちのお金を使ってコンテンツを制作していたところに企業の資本が投入されることで、コンテンツの質が上がるのです。中国では、この流れが2021年から2023年くらいにかけて一気に広がりました」