「人生観」と「世界観」はつながっているのかもしれない――YouTube「魚屋の森さん」/寿商店 森朝奈さん

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2024/09/24 08:00

一方的ではなく共感し合いたい 根底にある森さんの人生観とは

たちばな この世界観対談を通じて、世界観があるモノや人に対して共通しているのは「一貫性」だということです。一貫性があるからこそより魅力が増し、信頼が生まれるのではないかと。

ドラマプロデューサー たちばなやすひとさん
ドラマプロデューサー たちばなやすひとさん

 おかげさまでYouTubeチャンネルに限らず、コラボなどさまざまなお話をいただくようになりましたが、言葉にできない違和感がある時には慎重になるようにしています。

一方で、それにこだわりすぎて視野が狭くならないよう、人と話をすることは心がけています。幸い私の周りには、アルバイトで働いてくれている10代から、市場で出会う70代までさまざまな年代の方がいるので、そういった方たちとの相互理解も引き続き大切にしていきたいです。

たちばな 「これを伝えたい」というご自身の思いと、視聴者目線で「これを観たいだろうな」といった両方の気持ちがあると思います。そのバランスはどのように取っていますか?

 「自分の軸がブレないこと」が前提ですが、相手の意見を汲み取りたいという気持ちが強いです。やはり商売は目の前のお客さんあってこそ。だから、自然とそういった思いになるのだと思います。自分が共感するものを大切にしつつ、相手とも共感しあいたいんです。

たちばな 森さんのYouTubeには「私を見て!」といった目立とうとする感じがまったくないです。そこに森さんのお人柄を感じます。

 そうですね。もともと自己主張をするのが苦手でした。大学生のときにニュージーランドに留学するまで、恥ずかしくて、お店でトイレの場所も聞けないくらい、自分の意見を伝えることは得意ではなかったです。

たちばな 今の森さんからはあまり想像できないですね。ですがお話をしていて、自分が輝くための場というより、「誰かを輝かせる、あるいは輝いているものを伝える」といった役割に徹していらっしゃるように感じます。「聞き手」「伝え手」という立ち回りを意識されているような……。

 「伝え手」と言っていただくと肩の荷がおります。YouTubeを観ると私が真ん中にいると感じる方もいると思いますが、人前に出るのは本当に苦手なんです。誰かのために働くほうが、やる気がでるタイプです。

たちばな 世界観には「憧れの要素が強めの世界観」と「共感の要素が強めの世界観」のふたつがある気がしています。森さんが大切にしているのはきっと後者ですよね。ただ、森さんは「憧れ」と「共感」の両方をバランス良く持っていらっしゃることが、支持されている理由なのではないかと感じました。森さんは高いリーダーシップ能力もお持ちだと思いますし。

 そういう風に感じていただくことも多いのですが、実は家族に聞くと真逆なんですよね。私は舞台袖でサポートするのが得意で、父や妹が、表舞台に出てリードしたいというタイプです(笑)。

ですが「跡取り」の肩書きをもらってから、挫折など悔しい思いをしたり、納得できないことを経験したりするうちに、決断するスピードも早くなっていきました。父を見ていると、自分で意思決定をしてきていることから生まれる自信や覚悟が感じられ、それは経営者の先輩としても非常に大きな学びがあります。「覚悟を持ってやり切る」を意識するようになったことで、私自身も「強さ」のようなものが出てきているのかもしれません。

たちばな やはり森さんにとって、お父様の存在は大きいのでしょうか。

 そうですね。父の後ろ姿を見て家業を継ぐと決めましたし、私の人生には欠かせない人です。タイプがまったく違うので、一緒に仕事をしていて飽きないですよ(笑)。

たちばな YouTubeなどを観ていて、家族でも会社でも、森さんは「点と点を繋げる」ことをしていらっしゃるのだなと思いました。

 そう言ってもらえると励みになります。

たちばな 世界観を考えるときに私が重要だと思っているのは、その中心にある価値観や哲学のようなものです。たとえば「人はひとりでは生きられない」「広い世界のなかで生きたり、生かされたりしている」といった哲学を、森さんのYouTubeからは感じるのです。それが「家族のありがたさ」「自然への感謝」などの形で森さんへの共感を生み、世界観へつながっているのではないかと。

 たしかにそうかもしれません。月並みな言葉ですが、最近は「愛」を大切に生きたいと思っています。魚に対してもそうですし、人に対しても。苦手だなと思う人に会ったとしても、愛が大切なんだと思えば接しやすくなるような気がするんです。

両親に愛情を持って育ててもらいましたし、YouTubeを観てくれる人やそれに関わってくれる人から日々多くの愛情をいただいている。それに応えたいというのもそうですし、「愛を大切にする」ことが人生観になってきている気がします。

たちばな 今日はたくさんの素晴らしいお話をありがとうございました。

 こちらこそ、ありがとうございました。