コンテンツ制作、展示、イベント……ROBOTのインタラクティブディレクターを今も突き動かすもの

コンテンツ制作、展示、イベント……ROBOTのインタラクティブディレクターを今も突き動かすもの

 「インタラクティブ」も「ディレクター」も、今では目新しい言葉ではないように思うが、「インタラクティブディレクター」と聞くと、まだあまり耳馴染みがないという人のほうが多いかもしれない。そんな「インタラクティブディレクター」という肩書の元、およそ10年にわたってコンテンツに携わってきたのが、ロボットの田中朝子さんだ。そんな田中さんが今まで手がけてきたコンテンツを振り返りながら、ディレクターとしての根幹を探った。

インタラクティブディレクターとして「まずやってみる」

 1年に1度くらいは映画を見るという人であれば、ロボットのロゴを知らない人はいないのではないだろうか。2005年に大ヒットを記録した劇場映画『ALWAYS 三丁目の夕日』をはじめ、『踊る大捜査線 THE MOVIE』、『永遠の0』、『STAND BY ME ドラえもん』など、ロボットが名を連ねている作品を挙げればキリがない。だがそのスタートが広告の企画事業であったことは、あまり知られていないだろう。1986年の創業以降、テレビCM、アニメーション、映画、ウェブサイトの制作を手がけ、2000年にはCGを、2002年にはモバイルコンテンツなどの制作を開始。2016年からはVR事業を展開するなど、扱うコンテンツの幅広さも特徴のひとつだ。

 2008年にロボットに入社した田中さんは今まで、イベント・展示・広告・ゲーム・テレビCM・AR・VRアトラクションなどの企画やディレクションを担当し、現在は、インテグレーテッド・デザイン部 エンジニアリングセクションに所属している。その肩書きは「インタラクティブディレクター」。この職種を名乗るようになったのは、まだ「インタラクティブ」という言葉がほとんど浸透していない、およそ10年ほど前だった。

「ロボットに入社してすぐ、はじめて携わったミュージックビデオのプロジェクトで、名刺交換をさせていただいた外部の映像監督の方の肩書が『ディレクター』だったんです。私も当時はディレクターと名乗っていたんですが、そもそも考える役割が違うのになんだか恐縮だなと思って。アプローチが違うことを伝えたいと思い、上司に『肩書を変えてもいいですか?』と相談しました。ちょうどその頃、私がインタラクティブ・コンテンツ部に所属していたことや、ゲームやインタラクションの企画やサイト設計などをしていたことから、『インタラクティブディレクター』を名乗ることにしました。以降は少しずつ、インタラクティブやネットコミュニケーションがテーマの案件などで声をかけてもらうようになっていきました」

株式会社ロボット インテグレーテッド・デザイン部 インタラクティブディレクター/プランナー 田中朝子さん
株式会社ロボット インテグレーテッド・デザイン部 インタラクティブディレクター/プランナー 田中朝子さん

 大学を卒業した後、地元福岡にあるISPの会社に入社し、ウェブサイトやガラケーコンテンツ制作に携わっていた田中さん。アプリや映像、ゲーム、テクノロジーなどの領域について、特別な知識があったわけではないのだ。ひときわ変化のスピードが早く、かつ新しい技術が次々と登場する中でどのように知識を蓄え、“インタラクティブ”ディレクターとしてコンテンツを世に送り出してきたのだろうか。

「まずは出来る範囲で自分でやってみるようにしています。名前も聞いたことのない新しいものって、なかなか触れようとは思わないじゃないですか。どうしたら触りたくなるかとか、作品に触れたいと思えるかなというような、ユーザー側の動線と作り手側の視点を同時に考えていくことが多いです。

たとえば、VRデバイスはまだ一般家庭に普及しているとは言い難いですし、専用機はそもそも持っているユーザーの方がまだ圧倒的に少ないですよね。でも、作る側としては、そういった民生機の存在が、作る側の表現の幅を増やしてくれることもあると思うんです。そういった意味では、長崎のハウステンボスで常設されていたSR(代替現実)ホラーアトラクション『ナイトメア・ラボ』は、当時できる最大限の機器やシステム、オペレーションによって、その場所だけでしか体験できないことを目指して作った施設のひとつです」

 2015年に実施したナイトメア・ラボは、理化学研究所で開発された現実と仮想の境界を取り払うことができる体験装置「SRシステム」を用いた体験型アトラクション。カメラ付きのヘッドマウントディスプレイを装着すると、映像によって作られた仮想世界と現実の演出が巧みに入れ替わる。このプロジェクトには、VRプラットフォーム「ハコスコ」のCEOであり医学博士、脳科学者、アーティスト、デジタルハリウッド大学院教授、「現実科学」の研究でも知られる藤井直敬氏、映像ディレクターの池田一真氏、サウンドアーティストのevala氏、アコースティックフィールドの久保二朗氏などが携わっていることでも注目を集めた。

「いつか一緒に仕事をしてみたかった、その道のトップクリエイターの方々と場作りができたのは、有意義で楽しかったですね。監督と一緒に脚本を考えたり、連動するアプリの仕様を作ったり、撮影や施工以外にも実際に2〜3週間ほど長崎に行って、バイトリーダーのようにスタッフとオペレーションの運用・構築もしました。制作したものを熟成させていくように進めることができ、コンテンツが育って生きていくような感じがおもしろかったです。今のデバイスや新たなシチュエーションで考えれば、当時よりさらにレベルアップできるような気がします」

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