フラッグシップバーは、コンセプトを“体験する場所”
――東京・表参道のフラッグシップバー「THE NIKKA WHISKY TOKYO」のコンセプトやこだわりについて、詳しく教えてください。
加藤 「生きるを愉しむウイスキー」を体験する場であり、日本発のグローバルブランドとして、これからの新しいニッカウヰスキーの姿を表現する場所です。「The Lounge -MEET-」と「The Bar -EXPLORE-」のふたつのバーエリアと、物販エリアである「The Shop -ENRICH-」を併設することで、お客さまがニッカウヰスキーに出会い、ウイスキーの奥深さを知り、「生きるを愉しむウイスキー」を感じて、自宅に持ち帰っていただく設計になっています。
友吉 海外において浸透しているニッカウヰスキーのイメージを逆輸入し、「生きるを愉しむウイスキー」を体現したのが「THE NIKKA WHISKY TOKYO」です。心がけたのは、「ウイスキーを愉しむ」という世界観を抵抗なく体験してもらえるようなコンテンツ。国内外から取り入れた「トップレベル」のものと「親しみやすさ」をどのように打ち出していくかを考えた結果、ドリンクを提供するバーエリアを「MEET」と「EXPLORE」、つまり出会いと探求のふたつに分けることにしました。
MEETでは、世界のトップバーで人気の50のカクテルのなかから、ウイスキーのほか、弊社のジンやウォッカを使ったカクテル11種類をチョイスし、誰が飲んでもおいしいと思えるものを提供しています。
くわえて、飲む楽しさ、体験する楽しさなど、多様な楽しさに出会ってほしいので、驚きや感嘆を生むような「WOW(ワオ)」を散りばめました。たとえば、オールドファッションドというカクテルを提供するときには、目の前で煙がふわっと現れます。これは、世界でも珍しい石炭直火での蒸溜を今もなお行っている余市の蒸溜所のイメージを演出するものです。また、欧米で親しまれているレシピによるブラッディ・マリーや、日本ではあまり馴染みがないクローバークラブといったカクテルもラインアップして、新しい出会いと楽しさを提供しています。
EXPLOREでは、北海道から沖縄まで、世界的に活躍している国内のトップバー13店舗とコラボしたオリジナルメニューを用意しました。定番カクテルをベースに、 “リ・クリエイト”していただいたメニューです。
9月末にパリで開催されたイベント「ウイスキー・ライブ・パリ」では、このフラッグシップバーと共通したイメージでブースを出展しましたが、とても良い反応をもらえました。イベント内のブースでは1万3,400名が、会場外に隣接したカクテルバーでは3万人以上が訪れ、ジャーナリストやインフルエンサーからの注目度も高かったです。今後はさらに海外の各都市へと展開していけたらと考えています。
今後はグローバルブランドとして「生きるを愉しむ」を表現していく
――最後に、ブランドコミュニケーションで意識していること、目指していきたい姿についてお聞かせください。
加藤 日本発のグローバルブランドとして、グローバルブランドコミュニケーションを意識すること。センスの良いブランドとして「生きるを愉しむウイスキー」を伝えること。心がけているのはこのふたつです。
私自身、4月からニッカウヰスキーに携わるようになったため、海外でのブランドイメージについては詳しく知らなかったのですが、国内外でこれほどギャップがあるのはとてももったいないと感じました。時間はかかるとしてもグローバルで印象を統一し、センスの良いプレミアムブランドとして認知されるよう、「生きるを愉しむウイスキー」を届けられたらと思っています。
友吉 私は業務がら、おもなユーザーとのコミュニケーションポイントはイベントなのですが、意識しているのは、「つくるものがすべてプロフェッショナルかつクラフトマンシップがあり、全力で向かって全力で楽しむという創業者のスピリットを体現できているか」です。今回のフラッグシップバーではシェーカーひとつとっても、期間限定店舗とは思えないほどディテールにまでこだわりました。おそらく竹鶴さんも、こういったこだわりは絶対譲らないだろうと思うからです。個人的にも、このスピリットが自分の中から湧き出るような生きかたをしたいと思っています。
坂本 ハイボールが主流の日本で、業界内ではチャレンジャーのポジションである我々がウイスキーの多様な楽しみを表現することはブランド戦略として重要だと考えています。フラッグシップバーで提供するウイスキーカクテルもその表現のひとつです。
また、10月1日に発売した「ニッカ フロンティア」では、シグネチャードリンクに「フロートハイボール」を提案しています。炭酸の上にウイスキーを浮かべてグラデーションにする飲みかたで、ハイボールでありながら、ウイスキー本来の香りや味わいの深さを感じてもらうことができる。このようにウイスキーの奥深い魅力を伝えていくことが、コンセプトを体現することにつながると思っています。
今年、社長の爲定が、「プレミアムウイスキー市場でグローバルトップ10に入る」という高い志を掲げました。日本では700mlで店頭価格2,000円以上のものをプレミアムカテゴリーと呼んでいますが、現状は40~50位相当に留まります。とても高いハードルで何年かかるかわかりませんが、我々は将来そこを目指していくと決めました。その実現のためにも、「生きるを愉しむウイスキー」というコンセプトのもと国内外で統一したブランディングを行い、ウイスキーの多様な楽しみかたを表現していきたいと思っています。