制作ワークフローとデザインインスピレーションの変化
映像制作
メタバース内で映画や映像を制作する文化が徐々に生まれつつあり、最近ではクオリティも十分通用する映像が増えてきたと感じます。
従来のプリレンダリングを前提としたワークフローでは、CG制作には多大な時間、労力、コストがかかっていました。しかしゲームやXR技術が発展するなかで、映像を含むクリエイティブ制作の流れが大きく変わろうとしています。今後の世代は、自然とXRを活用してリッチな映像を作ったり、3Dでイラストを制作したり、バーチャルプロダクションとして活用したりといった方向性が一般的になるのではないでしょうか。ここにはAIの文脈も大いに関わってきそうですが、いずれにしても有効なワークフローのひとつとして、XRの技術が使われていく可能性があると思っています。
デジタルツインとデザインインスピレーション
私が関心を持っている別の観点として「バーチャルネイティブによるデザインセンスの変化」という視点があります。ザハ・ハディドが設計プロセスでVRビジュアライゼーションやパラメトリックなCGを活用していたことはよく知られていますが、バーチャルネイティブが手がけるデザインには、アナログ思考とは異なるアプローチや感性が生まれるかもしれません。
建築や空間デザイン、プロダクトデザインにおいて、デザインのプロセスだけでなくインスピレーションそのものを革新する力がバーチャル世界には秘められているのではないか。これも未来のデザインを探るうえで興味深いポイントだと思います。
まとめ
この連載を始めた当初から私は「技術の進化=文化の浸透」ではないことを一貫してお伝えしてきました。XRやAIといった新たな文化を生み出せる分野において、ただ技術ブームに流されるのではなく、リスペクトされる作品やコンテンツが生まれることこそが重要です。こうした価値観を持ち、技術と創造性を兼ね備えたクリエイターが増えるムーブメントが広がることを願っています。
本連載では、先端技術や新たな文化、そして未来への視点を中心にお届けしていたため、実践的なテクニックを紹介する内容とは異なりました。しかし、クリエイティブの形態は紙媒体からグラフィック、映像、そしてさらに先へと進化を続けており、これからの「新しいクリエイティブの形」とは何かを考えることが、ますます重要になると思います。
また、新しい挑戦を通じて新たな仕事を生み出すことも、クリエイターの役割と言えるのではないでしょうか。これまでの連載が、読者の皆さんにとって、新たな視点を持って考え、挑戦するきっかけとなれば幸いです。