【最終回】バーチャルカルチャーはどこにあるのか 「メタバース」「xR」をキーワードに考える

【最終回】バーチャルカルチャーはどこにあるのか 「メタバース」「xR」をキーワードに考える
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 XRやメタバースといったキーワードは依然として未来を感じさせる魅力的な響きを含む一方、昨今では一過性のブームが去ったように捉えられる風潮もあります。こうした中、デザイナーやクリエイターとしてバーチャル文化とどう向き合うべきなのか、疑問に思う人も多いかもしれません。この連載では、Oculus Rift DK1時代からXRに取り組み、作品制作や企業のXR導入支援を行ってきた著者が、その全体像を俯瞰した考察をまとめていきます。最終回は「バーチャルカルチャーはどこにあるのか」をテーマに、本連載の総括をしていきたいと思います。

バーチャルカルチャーはどこにあるのか

 未来のインターネットの形として普及することを期待された「メタバース」でしたが、今年はワードを聞く機会は減りました。一方でコアなファンやコミュニティは今もなお、仮想空間での交流や創作を楽しんでおり、そのクオリティは相当なスピードで上がっているとも感じます。マーケットプレイス「Booth」の3Dカテゴリでは取引量が増えており、日本においてはコアなファンが根付いているジャンルであるということも変わらず言えるのではないでしょうか。

 テクノロジーの分野では、1年経てば、世の中の受け取りかたもトレンドも大きく変化します。関心を持たれやすい領域なだけに期待値が大きくなりすぎることもあり、そのギャップに世間が幻滅していくこともしばしばです。

 果たして、「メタバース」「XR」といったキーワードはどうなのでしょうか。本連載の総括として、過去記事の内容も引用しながらまとめていきたいと思います。

XRが関わるコンテンツ文化の構造

 まず、メタバースやXRにかかわるコンテンツ文化についてまとめてみましょう。ここでは日常的に住む仮想世界の「メタバース」と「XRコンテンツ」に分けて考えています。

メタバースと日常コンテンツ

ライブ配信とVTuber

 テレビやタレントの立ち位置がより個人向けに分散し、YouTuberやVTuber、ライバーが身近な存在となった今、いわゆる「推し活」文化は大きく花開いています。ライブ配信では、雑談やゲーム配信、歌・MVといったコンテンツが中心ですが、配信者が人気を集めるにつれて、より企画力のあるリッチなコンテンツやリアルイベントが増加。それにあわせて規模も拡大していく傾向にあります。

 VTuberは、タレントのいちジャンルとして確立しており、とくにメタバースの文脈において、VTuber文化の盛り上がりが普及のカギを握ると言えるでしょう。アバター配信や日本アニメ調のデザインが一般的になるほど、VTuberがコンテンツカテゴリとして拡大する可能性が高まり、業界全体への期待も膨らみます。MVやグラフィックなど関連するクリエイティブコンテンツもいち産業として成立するため、現時点では非常に可能性を感じられる文脈です。

 さらに現在、VTuberはおもに日本アニメ風のデザインが中心ですが、デザインの幅が広がれば、VTuberというジャンルもさらに多様化し、新たなスタイルやファン層を獲得できるかもしれません。

ARフィルター

補足として、ライブ配信・SNS投稿で使われるARエフェクトなどのフィルターは、バーチャル文化の一部として定着したフォーマット印象があります。このようなフィルターは既にクリエイターコミュニティによって豊富な表現が提供されていますが(※AR/MR記事へのリンク)、AIの普及によって、表現も更にバリエーションが増え、追求し甲斐のあるジャンルになるかもしれません。

ゲームとメタバース

オンラインゲーム / UGC (ユーザ生成コンテンツ) プラットフォーム

 『FINAL FANTASY XIV』『あつまれ動物の森』『マインクラフト』など、オンラインゲームはメタバースの文脈で語られるようになりました。また『Roblox』や『Fortnite』のように、ユーザーがゲーム内で独自のコンテンツやゲームモードを作成・公開できるプラットフォームもひとつの潮流であり、ゲーム配信と合わせながら同時の文化が形成されていきそうな流れを感じます。

 ゲームの場合はより嗜好性も強く、FacebookのようなSNSの存在感とはひとつ階層が異なるかもしれませんが、それぞれが一定規模の小帝国を築いていく未来は考えられそうです。こうした多様なそれぞれのコミュニティ内で、アイテムやコンテンツ販売といったさまざまな職業が成立することは想像し得るロードマップではないでしょうか。

ライブ配信用のゲームシステム

 余談となりますが、Crowd Controlというサービスでは、視聴者がゲーム内のステータスや難易度を変えたり、配信者のゲームにリアルタイムで影響を与えることのできるシステムを提供しています。現在はまだアンダーグラウンドな印象もありますが、そのうちこうしたライブ配信を前提としたゲームコンテンツが新フォーマットとして流行することもあるのかもしれません。

メタバース・VRプラットフォーム

 メタバースの一過性のブームが落ち着くなか、各プラットフォームはどのような変化を遂げているのでしょうか。メタバースが話題性からは少し外れた今でも、VRChatをはじめとする仮想空間には成熟した文化とコアなユーザー層が定着し、日常的に利用される場となっています。とくにユーザーによって作り出されるライブやイベントのクオリティは日々向上しており、エンターテインメントコンテンツとしての価値が高まっていることを実感します。

 マネタイズ面では依然として課題もありますが、次世代の表現のありかたとして、クリエイターにとって注目すべき価値があると言えるでしょう。