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こんにちは。前回は「面白いアイディアが形にならない理由」についてお伝えしました。今回は早速、「企画」フェーズについてお話していきます。企画段階で、「面白いアイディア」を実現に近づけるポイントはこの3つです。
- 頭の中にアンチをたくさん住まわせる
- ショートメールに書いて送る
- 企画が先、表現は後
ひとつずつ解説します。
1)頭の中にアンチをたくさん住まわせる
「面白いアイディア」がロジカルな批評に晒された時の打たれ弱さを克服するやりかたとして、頭の中にアンチをたくさん住まわせるという方法があります。
アイディア出しをやったことがある人であれば、本当に自分から強いアイディアが生み出されるのか確信が持てない中で、答えのない答え合わせをしてるような時間の苦しさはよく理解できると思います。そこでふと、急に思いついちゃったりするわけです「面白いアイディア」を。
もうその時点で長い苦しみから解放された気分になり浮かれます。ついさっきまで頂上が見えない登山だったのに一気に視界が開け、登るべきゴールがクリアに見えたような感覚になり、今すぐにでも実行に移したいという気分が湧いてきたりもします。
そこで、その場の空気をぶち壊すように、アンチの皆さんを頭の中で出動させます。彼らには、できるだけ意地悪で、悲観的で、現実的な角度から意見を言ってもらいます。「やれない理由」をとにかくあげるイメージで、アイディアだしとはまったく逆の角度から厳しい意見を浴びせかけてもらいます。
「これのどこが面白いの?」「これやって誰が喜ぶの?」「これ予算におさまる?」「どうやって実現するの?」「過去に似てるのあったよね?」「ちょっと複雑で分かりにくくない?」「これやって効果あるの?」「完成形がイメージできないんだけど」などなど。
つまりこれらの厳しい意見は、このアイディアを企画書にした時にいずれ誰かに突っ込まれるポイントなわけです。
こうやってアイディアを世の中の批評に晒す、それをできる範囲で自分の頭の中で繰り返してみる。クリエイティブな感覚を研ぎ澄ますにはポジティブで建設的な発想を持つべきですが、そのアイディアを実現させるには相当にシビアな観点を持つ必要があります。
もちろん、「ブランドにどのように寄与するか」「商品やサービスの特性を考慮しているか」「具体的にどのような成果につながるか」など、マーケティングの観点でそのアイディアがどのように輝くかもロジカルに考察します。
複数の人でアイディアを膨らませるブレストでは、人のアイディアを潰すようなネガティブな意見はあえて禁止したりしますが、企画の実現性を高めたいのであれば、その逆で、無慈悲なまでに生まれたばかりのアイディアを潰しにかかってみるのです。
私の感覚だと、アンチの皆さんの容赦ないダメ出しの嵐によって、「面白いかも」と思ったアイディアの半分以上は消えてなくなります。それでも生き残ったものだけが、打たれ強さを兼ね備えた「面白いアイディア」ということになります。