ユーザーインタビューで実感したキャラクターが持つ力
――今回サービス名も刷新しましたが、それにはどのような背景があったのでしょうか。
takejune 2021年にリリースした「B/43」の名称には「残高(B:バランス)」と「予算(43)」の比率を見える化するという意味や、一度認識したら頭に残りやすいシンボリックさが込められていました。
その一方、よりポピュラーな国民的サービスを目指すうえで、狭く熱を持たせたネーミングが制約になってしまうかもしれないとも感じていました。ゼロから100万人を目指すのか、ユーザー規模1,000万人以上を目指すのかでは、ブランドのあるべき姿は少し異なります。より多くの人に覚えてもらうために、さらに事業領域を広げていきやすい名前に変える必要性も感じていました。そのうえで、2025年がいよいよそのタイミングだと判断したのです。「ワンバンク」という名称も、社内で行ったワークショップなどを通じて決定しました。
――「ワンバン」のキャラクターは、企画構想の段階からすでに設定することが決まっていたのでしょうか。

takejune コンセプトを「AIを活用した家計管理サービス」と定めた時点で、具体的な機能や体験、アドバイスをくれるキャラクターなどの構想はありました。「今月のあなたの支出はいくらですよ」と教えてくれるキャラクターを作ったりもしましたね。ただ世の中に「AIと家計管理」を掛け合わせたサービスがない段階でしたので、かなり試行錯誤しました。
キャラクターの有無を変えながらプロトタイピングを繰り返し、ユーザーインタビューなどの検証も行いました。するとキャラクターの表情やリアクションに対してユーザーの反応が大きかった。キャラクターが持つパワーを実感し、その必要性をあらためて感じました。
長谷川 ユーザーインタビューでも「家計管理は毎日コツコツやる孤独な作業である」という話がよく登場します。そんな作業だからこそ、伴走してくれる存在は表情豊かにサポートしてくれるものが良いのではないかと考えました。
――キャラクターのデザインはどのように制作したのですか?
原田 採用されたワンバンは、制作会社の株式会社neccoさんに協力いただいて制作したものです。「ワンバンク」という名称が先に決まっていたので、モチーフは「犬」が良いだろうと決まり、そのうえでコンセプトをお伝えしながら形にしていきました。

今回は、ただのマスコットキャラクターではなくAIアシスタントでもあるため、ペットとしての「犬」という役割だけでは足りないと考えました。そこで、他社のキャラクター事例もリサーチを重ねて、時間をかけながら精査。そうして模索した方向性を、neccoさんにフィードバックしたり再提案してもらったりというラリーを繰り返しました。
そんななかで、社内のアプリエンジニアが何となく描いたキャラクターの雰囲気が私たちのイメージとぴったり合致し、そこから「耳のような部分がカチューシャになっていてそれが外れたらおもしろいのではないか」といったアイデアも出てくるなど、方向性が見えてきました。
私たちが考えたストーリーは「未来から来た飼い犬で、ユーザーのことを助ける使命を帯びている」というもの。それを軸にアプリ内で活躍してもらう方法を考え、ビジュアルや色などの細部を詰めていきました。その結果、最終的にガマグチ型のカチューシャががついた見た目になりました。
