活躍している人の共通点は? LINEヤフー/SmartHR/マネーフォワードが語るデザイン組織の本音

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2025/08/19 11:00

活躍しているのは「越境できる人」「怒りを持っている人」

――デザイン組織で、デザイナー個人が力を発揮できる環境づくりのために意識していることを教えてください。

宮原(SmartHR) 私たちデザイン組織のパーパスでは「デザイナーも開発者」と定義するなど、「デザイナー」という肩書にこだわっていない点が特徴です。デザイナーの存在価値はプロダクトを開発することであって、その手段としてFigmaを触っても直接コードを書いても良い。そう考えているため、デザイナーが「プロダクトを良くすること」に集中できるよう、モブデザインの仕組みやデザインシステムに触れやすい環境整備をしています。

また実際の業務を振り返ってみると、ユーザーが触れたり売上に直結した部分よりも「過程の意思決定」がデザイナーの主業務になりがちで、自己効力感も下がりやすいんですよね。だからこそ「ユーザーに届けるためのプロダクトを一緒に作っているんだ」と感じてもらえるような働きかけを心がけています。開発途中の製品を一緒に動かしたり、ユーザーの業務がどのように変わっているのかを話したりすることが、デザイナーがビジネスを意識する機会にもつながっていると思います。

セルジオ(マネーフォワード) コーポレートバリューに「ユーザーフォーカス」があるのですが「デザイナーはその体現者である」としています。

ただ、何をデザインしてそれを表すべきかについては限定していないので、あらゆるものがデザインの対象になる。当社のデザイナーにおけるグレード要件表には、どのように事業や組織にインパクトを与えるのかといった軸で書かれています。そういう意味では、一般的なイメージよりも広い捉えかたでデザイナーが定義されていますね。

株式会社マネーフォワード 執行役員 グループCDO (Chief Design Officer) 伊藤 セルジオ大輔さん
株式会社マネーフォワード 執行役員 グループCDO (Chief Design Officer) 伊藤 セルジオ大輔さん

そのうえで最近伝えているのは「ビジョンをドライブしてほしい」ということ。前提として私は、プロトタイプを作るなど未来を指し示すことがデザイナーの仕事だと思っています。そのためプロジェクトのいちビジョンでも良いので、デザイナーにリードしてほしい。それを受け入れる会社の土壌は整っていると思います。

町田(LINEヤフー) 組織としては、環境づくりだけでなく「デザイナー個人のキャリア」に向き合うことも大切だと考えています。たとえば「Yahoo!ニュース」の組織では評価指標として「貢献」「成長」そして「越境」の3つをキーワードに設定しているのですが、とくにカギとなるのは「越境」です。デザイナーだけでなく、さまざまな職種のメンバーと一緒に働くことを奨励しており、デザイナーから企画職やエンジニアにキャリアチェンジしていく人もいます。そういった「越境」を讃える文化醸成がLINEヤフーにはありますね。

――皆さんのデザイン組織では、どんなマインドを持った人が活躍しているのでしょうか。

セルジオ 町田さんと同様「越境」できる人材はやはり活躍していますね。事業が複雑になってきているなかで、幅広い視点を持ってさまざまな人たちと関係を築き、モノを作れることは非常に大切です。とくにマネーフォワードは多くのプロダクトを抱えているため、自身が携わっているサービス以外の知識も持っていることで、より高い体験価値を生み出すことができます。

宮原 少し尖った言いかたをするなら、当社の場合は「怒りを持った人」でしょうか。SmartHRは、サービスとしてまだまだチャレンジャーの立ち位置だと考えています。そんななかでユーザーの業務における当たり前を変えていくことに向き合っていくためには、「当事者になって怒ること」がいちばんの動機になると思うんです。「なんでこんな非合理なことをやらされているんだ!」と、ユーザーに共感して怒っている人ほど、良いプロダクトを作って成果を出しているような気がします。

その怒りの熱がデザイナーの間で広がり、モメンタムが生まれる瞬間があるのもおもしろい。そのフックをつくることができる「怒れるデザイナー」は活躍していますね。

セルジオ 「パッションが大切」と言いますが、「怒り」くらい強い感情があるとなお良いんですね。

町田 それで言うと、好奇心と疑問を持って周囲のメンバーに忖度なくぶつけていける人は活躍していますね。とくに私たちのように規模が大きくシステムが整っている組織は、ある意味で居心地が良い。しかしそれを疑いアップデートを仕掛けてくる人は、結果を残している印象です。