メーカー、広告代理店、映画制作…三者三様の経歴をもつ3人がNoovoに集うまで
――まずは皆さんのご経歴とNoovoの立ち上げや加わった背景についてお聞かせください。
宇田 大学卒業後は電機メーカーに入社しパソコンの事業を担当したのですが、最初の3年は営業推進部に、そのあとは経営企画部に所属していました。2000年代後半にハードからソフトへという時流がはっきりしてきたこともあり、しばらくして転職を考えるようになったとき、次はソフトコンテンツビジネスに携わりたいと考えました。ソフトの中でもいろいろな選択肢がありましたが、ご縁があったアニメ制作会社「ゴンゾ」へ転職することに。前職で経営企画部に所属していた経験をいかし、現場の管理責任者を1年半ほど経験したのち、TVシリーズ中心だった同社からさらに違うビジネスモデルも経験したいと考え、庵野監督が社長をつとめる「カラー」という会社に移りました。
ですが実は電機メーカーにいたころから、経営者になることを目標としていた私は、32歳のときに一念発起して「スタジオコロリド」という会社を作ったのですが、1年くらいは箸にも棒にもかからなかった。そんなときに出会ったのが、石田祐康くんです。彼から映画をやりたいという思いを聞き、それならばということで、映画を作るスタジオへと会社の方向性をシフト。何作かショートアニメを制作しましたが、2018年には石田くんが監督をつとめた初の劇場長編作品『ペンギン・ハイウェイ』を公開できました。
そうした取り組みを経て、映画やテレビだけではなく、新しい人材が、今までと違った形で活躍できる環境を作ることにとても可能性があるのではないかと感じ、スタジオコロリドの役員は引き続き担当しつつ、新たに会社を立ちあげてチャレンジしてみようと思いました。それがNoovoです。
塚原 僕は以前からアニメが好きで、アニメのプロデュースを仕事にしたいと思い就職活動をしていました。将来的にはコンテンツビジネスに携わりたいと思っていたのですが、思いがけず入社したのは広告代理店でした。代理店ではビジネス開発部門に所属し、営業や新規事業開発などに7年ほど携わりました。
そろそろフィールドを変えたいと思ったときに浮かんだ選択肢はふたつで、起業家としてコンテンツを扱うプラットフォーマーになるか、自身がコンテンツメーカーになるか。
広告業界ではデジタルシフトが進み、動画の需要が伸びている時期だったこともあり、自分でコンテンツを持ちたいなと思い、ほとんど勢いで動画の会社を作りました。そこで動画制作やアイドルのプロデュースなどを行ってきましたが、ここ数年で立ちあがった動画系のスタートアップは、なかなか苦戦を強いられているのではないかと強く感じました。やはり「受託」で動画を制作していくだけでは、スケールさせていくことは難しいことが理由のひとつだと思います。
以前はアニメに投資をするベンチャーキャピタルも少なかったと宇田から聞いていますが、いまはYouTubeのアニメに投資するケースも増えている。それを知りかなり前のめりに「これはなにか形にできますよ!」と宇田に話し、松尾と引きあわせてもらいました。
松尾 僕は大学でアニメーションを学んでいました。特撮やSFX、VFXといったものが好きだったので、技術としてのアニメーションに興味があったんです。卒業後は映画業界に入りVFXに携わったのですが、働きかたや仕組みなどに馴染めずうまくいきませんでした。
多分僕がここに40年いたら評価してもらえるかもしれないけれど、それまで待たなければいけないのかと思っていたときに、ネットやデジタルツールを使い、個人で映像も作ることができる時代だし、映画にこだわらなくてもいいかなという思いが湧きました。そこで映画業界を辞め、フリーランスとして映像の仕事をうけるようになりました。
企業のPVづくりなどの案件に携わりながら、東京大学に映像制作のスタッフとして関わったり、やはり映像って求められているんだなということをさまざまな場面で感じていました。ですが一方、YouTuberが登場したりとどんどん個人で映像を制作する人が増えたことで、とくに価格の競争が激しくなっていきました。クオリティ云々というよりも、安さが求められることが多くなり、もっと違う形で映像制作に携われたらと思っていました。そんなときに、アニメーション制作向けのスタジオ構築を行っている会社「リトルビット」に声をかけてもらいました。
リトルビットに加わったいちばんの理由は、うまくデジタルを活用してアニメーション制作そのものを改善できれば、業界全体を良くすることができるのではないかと思ったから。ただ実際にやってみて、業界自体がまだデジタルに馴染んでいないので、それを変えていくのはなかなか時間がかかるなとも感じていました。
宇田の「新しい作りかたでアニメを作ろう」という取り組みに加わることで、既存の枠組みからではなく、ゼロから業界の仕組みにアプローチできればと思い、Noovoにもジョインすることを決めました。