ブラウザ上で共同編集できるデザインプラットフォーム「Figma」を提供するFigma Japanは、日本進出1周年記念イベントとして「デザイン経営2023」カンファレンスを開催。Japanチームが主体となって行う日本単独のイベントは今回が初。同イベントには、会場とオンライン試聴あわせて1,000人以上が参加した。
イベントの冒頭には、日本法人カントリーマネージャーの川延浩彰氏が登壇。「設立以降、たくさんの皆さんに支えていただき、成長をすることができました。どの出来事、どの思い出にも、何らかの形で皆さんが関わってくださっている」と感謝を述べたうえで、昨年1月に設立したFigma Japan の今までを振り返った。
2022年を思い返すなかで組織体制について言及。日本法人設立当初は川延氏1名のみだったが、セールスやマーケティングのメンバーを中心に昨年7月には8名に、10月には日本語でのサポートやテクニカルな支援を強化するため16名体制へと拡大。昨年1年間で組織が順調に成長したことを強調した。
またFigma Japanのコミュニティである「Friends of Figma Tokyo」やFigmaのユーザー主体のイベントなどが、目視で確認できただけで昨年1年間に50以上行われていたことにも触れ、川延氏はこの1年の思いを次のように述べた。
「まさにFigmaの思想『ひとりではすごいものは完成できない』のとおりだと思います。Figmaのファン、コミュニティ、お客さまに支えられてここまでくることができました」
続いて川延氏は話題を2023年に移し、「コミュニティ」「日本市場へのコミット」「DXへの貢献」の3つのテーマを提示。ひとつずつ解説した。
1.コミュニティ
直近で実施したコミュニティに関する施策として挙げられたのが、テンプレート、プラグイン、UIキットなどが公開されている「Figma Community」の取り組み。Figmaをとおして収益の仕組みをつくることができる「有料リソースの提供」、クリエイターが安心して活躍できるようFigmaが資金面でサポートするプログラム(応募後同社のレビューあり)「Figma Creator Fund」の開始など、先週発表されたふたつのリリースについても触れられた。(参考記事)
またFigma JapanにはFigmaの機能を熟知したスペシャリスト「デザイナーアドボケート」としてCorey Lee氏が、コミュニティサポートスペシャリストとして徳永康彦氏の2名が在籍しているが、今後いっそう日本コミュニティを盛りあげるため、来月12日よりふたりめのデザイナーアドボケートとして谷拓樹氏が着任することも発表された。
2.日本市場へのコミット
「よりいっそう日本市場にコミットし、組織としても高いレベルを目指していきたい」と川延氏。「強固な営業の組織だけでなくサポート体制も構築しながら、今まで以上にユーザーに寄り添えるよう、そしてメリットを感じてもらえるような組織にしていきたい」と続けたうえで、今年春には22名へ組織が増員する予定であることも明かした。
3.DXへの貢献
本イベントには「素晴らしいデザインなくして素晴らしいDXはできない」というサブタイトルがあることに触れたうえで、なぜ今デザインが必要なのか、デザインがDXや経営にどんなインパクトを与えるのかについて見解を語った。
まず川延氏は、GDPが3位でありながら、デジタル競合性ランキングでは29位と毎年下がっている日本の現状がある一方、大胆なDX施策が日本経済にもたらすインパクトは80兆円とも言われていることに言及。「DXには大きなポテンシャルがあるが、そのためにもっとも必要なのが良いデザイン」であるとの考えを示し、次のように続けた。
「最終的なアウトプットとして生まれるデジタルのサービスや製品を使用するユーザーが使いやすいものでなければ、結果的に使われません。それではせっかくDXの施策に力をいれたとしても、絵に描いた餅になってしまう。そのため我々は、良いデザインなくして、良いDXは実現できないと考えています」
続いて「良いデザイン」について考える材料として、マッキンゼーが発表したレポートより「成功をもたらすデザインとは、今までにない新鮮なアイディアや様々な機能部門の人材から得る多様な視点なくしては実現できない」という一文を紹介し、本レポートのポイントを次の3点にまとめた。
- デザインは、会社の勝敗を左右する重要なものとなっている
- デザインには、経営陣レベルの意識付けが必須
- デザインは、たくさんの人が参加することでより良いものになる
「これを我々のビジョン『すべての人がデザインにアクセスできるようにする』、ミッションの『チームが視覚的に共同作業できるようにする』といったFigmaの思想にあてはめてみると、非常にリンクしていることがわかります。この点からも、DXにおいてFigmaが担う役割は今後さらに重要になると考えています」
川延氏は、Figmaがビジネスにどのように貢献できるのかについて示すため、Forrester社が作成したTEI(Total Economic Impact)レポートを提示。Figma導入の具体的な成果として、プロジェクトのデリバリースピードの高速化や、使っていたさまざまなツールの統合によって最大でベンダーコストを90%削減できたことなどがレポートに記載されている点に触れ、その成果をアピールした。
最後に「Figmaのビジョンとミッションをもとに、さまざまな方と協力しながら日本のDX推進に貢献できればと思っています」と抱負を語り、自身のセッションを締めくくった。