いわゆる「GAFAM」の一角を担うFacebook社が、社名を「Meta(メタ)」に変えてから2年が経過した。社名変更もさることながら、これまでメイン事業だったソーシャルメディアからXR技術への方針転換は、話題を呼んだとともに世界へ衝撃を与えた。
昨今は日本企業でもVRを中心としたXR技術の活用が進みつつある。なかでも興味深いのが、2022年にスマートフォンアプリとして提供を開始した「メタカープ」だ。地元企業の広島テレビ放送、ビーライズが共同で開発した。
本記事では、開発を担当したビーライズの取締役COO 石原裕輝氏へのインタビューを通し、メタカープの取り組みや企業におけるVR技術を活用する際のポイントを解説していく。
企業のXR活用 ニーズはどのように変化してきたか
ビーライズの設立は2012年。「デジタルで社会をアップデートする」というミッションを掲げ、メタバース技術を活用した業務シミュレーターなどのサービスとともに、プロジェクションマッピングなどのコンテンツ開発も行っている。最近では、4月に法人向けメタバースプラットフォーム「ビーライズワールド」の提供も開始した。
VR技術の根幹ともいえる3DCG自体は、従来もマンションパースやデザインなどで活用されてきた。現在のような幅広い活用方法が注目を集めるようになったきっかけは、2009~2010年ごろだという。スマートフォンの普及とともに、AR技術によって立体を動かすサービスなどが登場した。
そこで、もともと3DCGデザイナーだったビーライズ代表の波多間俊之氏がXR技術に着目。これまでの3DCGを拡張する形でサービスを開発できないかと考えた。その後、2016年にコンシューマー向けVRヘッドセット「Oculus Rift」が登場したことで、一般的な認知も拡大。ビーライズでは、VR技術を活用した企業向けの安全研修コンテンツを作成して問い合わせも増加した。
まさに企業におけるXR技術活用の黎明期から事業を展開してきたビーライズ。石原氏は、当初のニーズを次のように振り返る。
「最初は、アーリーアダプターとして大手ゼネコンなどのお客さまが多い傾向にありました。これまで研修センターをつくり、全国から社員を集めるなど大きなコストを社員教育に使っていたところ、VRで代替できる点がポイントだったようです」
スーパーマーケットのレジ研修や、介護の研修などの現場で研修しやすいものと違い、建築や製造現場などの研修は、大掛かりな環境が必要になる。その点、VRであれば通常よりも低コストで用意できることが、ニーズの受け皿となったようだ。
当初はこうした教育コンテンツで、既存のアクシデントなどを見せるようなものが多かったと話す石原氏。その後、ただ現場を体験できるだけでなく、視線の動きや指差し確認などを検知しながら実際の研修シミュレーターとしての活用が増えていった。
また「現実の再現」だけでなく、現実ではできない現場シミュレーターとしての活用も広がった。具体的には、人体を透明化して表示することによって、医療現場の手術シミュレーターなどとしても活用されている。その他、運送業者のフォークリフト操作や、ハードウェアの組み立てなどのシミュレーターとしても導入が広がっていった。
その後はハードウェアの軽量化とともにソフトウェアもアップデートが進み、コンシューマー側のニーズも拡大。Facebook社がメタへと社名を変えた影響もあり、さまざまな問い合わせが増えていったという。