すべては対話から 若手が語る“デザイナーから”働きかける組織づくりとは

すべては対話から 若手が語る“デザイナーから”働きかける組織づくりとは
  • X
  • Facebook
  • note
  • hatena
  • Pocket
2019/07/01 00:00

 人材派遣、転職エージェント事業などを手がけるレバレジーズでデザイナーとして活躍する藤本貫二郎さん。4年前に新卒として同社に入社して以降、さまざまなサービスのデザインを手がけるばかりでなく、事業会社に所属するデザイナーのコミュニティーで約300人が参加している「InHouseDesigners」を組織し、存在感を発揮している。今回、そんな藤本さんのこれまでを振り返るとともに、何よりも大切にしているという「チームビルディング」についてお話を伺った。「いいチームでなければ、いいプロダクトはつくれない」と断言する藤本さんの哲学とはどのようにして生まれたのだろうか。

デザイナーがチームをリードする

――藤本さんは、どのようなきっかけで現在のキャリアに進んだのでしょうか?

大学の1年めの終わりに、友達に誘われて学生のためのアプリ開発コンテスト「Tech-Tokyo」に行ったのが、デザインに触れるきっかけでした。当時、この分野にあまり興味がなかったのですが、同世代の大学生がビジネスプランを考え、アプリを開発するその姿に大きな刺激を受け、「自分でも何かを作りたい!」と思うようになります。気づいたら、その会場で横に座っていたエンジニアの人に話しかけたり、懇親会で出会ったかたの会社に遊びに行かせてもらったりしていました。

そこから、ベンチャー企業でデザイナーとしてインターンやバイトをしながら自分の仕事が数字に反映されるおもしろさにのめり込み、2016年4月に新卒でレバレジーズに入社します。入社してからは、「teratail」というプログラミングQ&Aサービスのデザインなどを手がけています。

――デザインをする上では、事業会社ではなく制作会社に進む道もあるかと思います。なぜ、藤本さんは事業会社であるレバレジーズに入社したのでしょうか?

僕の中では、「デザインをしたい」というよりも「ウェブサービスを作りたい」「アプリづくりをしたい」という気持ちが強かった。事業会社のほうがサービスづくりを楽しめるのではないかと思ったんです。制作会社へ進むことは考えなかったですね。

――これまで4年にわたりレバレジーズでデザイナーとして案件に携わってこられたと思います。この中で印象に残っているプロジェクトはありますか?

ひとつは1年めの夏。teratailのプロジェクトで、広告費を使わずにユーザーを増やしていくという課題がありました。その課題を解決するために、A/Bテストをしながらがむしゃらに1つひとつ施策を考えて実行していったんです。その結果、年間に換算して2,000万円ほどの広告費削減に貢献することができ、クオーターでの社内表彰を受けました。それが、最初の成功体験として強く印象に残っています。

ももうひとつがちょうど2年めの冬。エンジニア2名とデザイナー1名で大規模なUI改修を行いました。初めてサービス全体の情報設計やUIの一貫性を意識してデザインをする経験になりました。社内でまだ導入されていなかったSketchを勝手に使いUIを作って(笑)、Zeplinでエンジニアに共有しながらフィードバックをもらうというやりかたで進めていきました。結果として、Zeplin上で共有しているので実装タスクも分担しやすく、スマホサイトのUIの一貫性や開発効率の向上を実感することができました。ですが、Sketchのデータ自体は、デザインシステムやコンポーネントに対する理解が浅く、汚くなってしまって。デザインシステムや効率的なデザインデータ管理に興味を持ち始めたのもこの頃からです。

レバレジーズ株式会社 グロースデザインチーム テクノロジーメディアラボ デザイナー 藤本貫二郎さん
レバレジーズ株式会社 グロースデザインチーム テクノロジーメディアラボ デザイナー 藤本貫二郎さん

――では、これまでの仕事で大変だったものは何ですか?

そうですね……。1年めの冬に、ほかの企業とのタイアップ施策を行いました。企画営業のメンバーと一緒に施策の詳細を詰めていく中、途中で設計そのものの見直しが入るなど、どのように進めることが最適かを必死に模索する一方、納期やKPIが迫るばかり。まるで、目隠しをしながら走っているような状態で、チームメンバーがどんどん疲弊していったんです。結局、自分ひとりでは解決できず、別プロジェクトのメンバーやデザイナーの力を借りながら、なんとか進めていくことができました。

この案件を手がける中で、チームのみんなが見ている方向がバラバラではプロジェクトが上手く進んでいかないということが身にしみてわかりました。メンバーそれぞれの思考を理解し、認識を揃えて同じ方向を見ていくことが、チームのプロジェクトとしては何よりも大切です。そして、それをリードするためにも、デザイナーが力を発揮できるのではないかと考えるようになりました。というのも、デザイナーは、思考や概念を可視化することに長けていると僕は考えていて。それが、異なる意見や思考をまとめるのに向いているのではないかと思うんです。

――チームビルディングにはデザイナー的な思考が貢献できる、と。

そうですね。僕はチームビルディングにとっていちばん大切なことは「対話」だと考えています。そして、相手の発言や思考を汲み取った上で、本来の目的に対してベストな提案や説得を行う力、言うならば「対話力」をデザイナーは発揮することができると思うんです。

たとえばデザイン批評をするときには、デザインという成果が目に見えるものだからこそ、誰でも自分の意見を言うことができますよね。ですがとくにデザイナーは、日頃から相手の主観や事実を区別しながら、その発言や思考の意図を汲み取り、最適解を導くための鍛錬を積んでいるとも言えるはず。その積み重ねが「対話力」に結びついているのではないかと思うんです。

そのあと、ほかのプロジェクトでチームの雰囲気が悪くなった際には、自ら積極的に話しかけるなどの働きかけをするようになりました。1年めでチーム作りの大切さを身にしみてわかったことが、ほかの局面でも活かされていると思います。

※この続きは、会員の方のみお読みいただけます(登録無料)。