成果がともなわなかったクリエイティブをどう評価するか
――評価対象の人が作ったクリエイティブの良し悪しはどう評価していますか?クリエイティブは良いと思っても結果が伴わなかった場合、どのように評価すべきでしょうか。
遠藤(アドウェイズ) 私たちが制作しているインターネット広告は、配信した次の日に効果が出ることもあります。また広告を大量に作っているため、ひとつのクリエイティブで上手くいかないことは日常でもよくある話。もちろんそれが続くようであれば評価に紐づくと思いますが、もっと手前の段階で、ユーザーに届く訴求軸やキャッチコピー、選定する素材が正しかったのかといったところを言語化できているか。そちらのほうが評価軸になるのではないかと思っています。
ただ、過程がしっかり説明できても成果がともなっていなかったら意味がないので、そこは1本の本数というより、全体に対する相対的な軸で評価する必要があると考えています。
横山(ミクシィ) なにをもって良いクリエイティブなのかという話もありますが、こういう目的でこういったものを作ったという結果と、それが事業や組織の成果につながったのかという成果は分けて考えるようにしています。
結果に比重を置くのであれば、主力のグレードにステップアップするための成長過程にある人は、次はこういうものを作ってみようというチャレンジのプロセスも評価にいれています。
僕らデザイナーとしては、良いデザインであれば成果がでてほしいですし、それをどうやって結びづけるかという話ですが、もちろん数字だけでれば良いという話ではない。事業成果と、事業部が喜んでいることはなるべく加味して評価しようと思っています。
また次も頼むよとデザイナーが言われたくなるようなクリエイティブのアウトプットや、それをするまでの動き、チームワークがとれていたかについても、コンピテンシーとして評価します。
みよし(カヤック) 僕らの場合、みんながどう考えているかによりますが、月給ランキングは給与を決めるためのものです。そのアウトプットについては、3ヶ月の仕事の成果で、プロデューサーが賞与を決めています。
その基準はBtoBかBtoCかでわかれるとは思いますが、エンドユーザーに喜ばれていたらOK、クライアントが喜んでいるようだったらそれもOK、ただとてもクリエイティブは良いけれど反応が鈍かった場合、社内では頑張ったねとはなると思いますが、もっと頑張れとなるかもしれない。プロモーションなど、上手くいかなかった原因がほかにある可能性もありますし、基本的にクリエイティブだけで図るのは無理なんですよね。良いものを作ったものの上手くいかなかったケースは、みんなが評価する月給ランキングで、吸収している形かと思います。
――評価制度があることで、できる人にとってはモチベーションにつながると思いますが、そうでない人にとっては、評価制度が負担にならないか心配です。
遠藤(アドウェイズ) 評価制度は期待値調整だと考えています。あなたにお願いすることはここからここまでです、と示すものがプレッシャーでなければ、当然負担にもならないのかなと思います。ただそういう意味でも、まだ自信がない人には、責任が少ないものからお任せするようにし、モチベ―ションの低下につながらないよう、できたという感覚を持ってもらえるようにしています。
みよし(カヤック) 評価というと、点数をつけることだと思われがちですが、点数をつけることとフィードバックをすることのふたつの側面があると感じています。最初は反発があるかもしれないので、小さいチームから行っていくのがよいと思います。まずは点数をつけずにフィードバックを伝えるようにし、徐々に点数をつけていくのが良いのではないでしょうか。
横山(ミクシィ) 会社のデザイン組織で、まずはどういった人を評価したいかで決めたら良いと思います。誰ひとりとして取りこぼさず、全員のデザイナーを救いたいというのが会社に合っているのであれば、そういった人たちにもあわせた評価制度をほかに作ればいい。デザイン組織や評価制度がどうかというよりも、会社のビジョンやミッションに紐付いたときにどうなのか、が判断軸になるはずです。結論としてはどちらの考えかたも正しいので、その会社ごとに決めて良いかと思いました。