シンプルさをデザインで表現するには 約4億点のストックコンテンツから紐とく「ミニマリスト」のトレンド

シンプルさをデザインで表現するには 約4億点のストックコンテンツから紐とく「ミニマリスト」のトレンド
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 InstagramやTikTokなどの視覚的なメディアが台頭し、デジタル空間はビジュアルコンテンツで溢れるようになりました。一方、コンテンツが飽和状態になり、画像や映像に疲れてしまうのも現代の特徴といえるでしょう。そこで、視覚的に「煩くない」シンプルなデザインが注目を集めています。極限までモノを持たないミニマリストのトレンドと相まって、シンプルさは2020年代を象徴するデザインとなりつつあります。本記事では、約4億点のストックコンテンツから「ミニマリスト」のトレンドとシンプルさの秘訣を紐解いていきます。

“ノイジー”なSNSと、シンプルなデザイン

 デジタル空間は視覚的な刺激や情報に溢れています。今や多くの人にとってSNSは日常の一部となりましたが、膨大な量の画像や映像に疲れてしまった人もいるのではないでしょうか。情報に溢れるSNSは「ノイジ―(煩い)」になりやすく、個性の主張を狙った派手なコンテンツが却ってユーザーの嫌悪感を煽ってしまうこともあります。

 そうした中、シンプルかつ煩くないデザインが注目を集めています。今の企業のロゴやSNSの投稿、ウェブサイトのデザインには、必要最低限の要素しか描かない「ミニマリズム」のデザインが多く見られ、これが世界的なトレンドとして認識され始めています。色鮮やかな広告が中心となる時代は終焉を迎えつつ、控えめなミニマリズムが2020年代のデザインのトレンドとなっています。

 社会の動きも、デザインの潮流と合致する点があります。たとえば環境問題に対する意識の変化。レジ袋の有料化をはじめ、過剰生産・過剰消費を見直す社会の動きが顕著になっており、必要なものを見極めて不要なものを減らすミニマリスト的な感覚が広まっています。「断捨離」という言葉も頻繁に耳にするようになりました。不要なものは処分し、シンプルな生活を志す人々が増えています。モノが増えすぎるとストレスが溜まる、といった考えかたも根強くなっており、こうした「ミニマリズム」な価値観の浸透がデザインの潮流にも反映されていると考えられます。

ミニマリズムの起源「ミニマル・アート」とは

 まず、「ミニマリズム」の起源について考えてみましょう。アートの世界でミニマリズムが注目されたのは、1950年代後半以降。現在から約60年以上前です。ドナルド・ジャッドや草間彌生などの芸術家が牽引したこの潮流は、あえて個人的な感情を排除し、匿名的な形状を表現することで芸術の新領域を開拓しました。次の画像からも、あらゆる要素を削ぎ落した表現の魅力が伝わります。草間彌生の作品には馴染みのある方も多いのではないでしょうか。色は鮮やかですが、シンプルなモチーフを繰り返す表現はミニマリズムであると言えます。世界的な評価を獲得する草間彌生の作品はシンプルな表現を実践しながらも、見る者に強い印象を残します。

現代におけるミニマリズムの台頭

 時を経て、こうした潮流がアートの世界だけでなく、広告やウェブデザイン、イラスト、そして写真にも見られるようになりました。その背景は先ほどお伝えしたとおりですが、とくに大きかったのはSNSの普及です。混沌としたデジタル空間への反動として、静けさが求められているのです。

 シンプルなデザインは需要が高く、多くのデザイナー、フォトグラファー、イラストレーターがミニマリズム的な表現を追求しており、さまざまな場面でよりシンプルな作品が見られるようになりました。しかし、ただシンプルなだけでは、簡素で退屈な表現になるかもしれません。シンプルでありながら、斬新さも追求していきましょう。そのためには、まずミニマリズムの特徴を把握することが大切です。シンプルな配色や慎ましい形式を学び、基本を習得することで、ミニマリズムの中でも個性を発揮できるようになります。

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