時間軸を見極め、自身のピークを合わせよ
ただ、このWeb3の盛り上がりに対し、懐疑的な見方をしている人もいるかもしれない。そういった未来は本当にやってくるのか。もし訪れるとしたら、どのような備えをしておくべきなのか――。河野さんがそのポイントとして挙げたのは、「どの時間軸に乗っかるのか」を見極めることである。
時間軸を考える前提として、河野さんはイノベーター理論を提示。この考えかたでは、商品や概念が広まっていく過程で、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に壁(キャズム)があると言われている。今まさにキャズムを迎えているWeb3やメタバースについて考える際、「日本にはアーリーアダプターが非常に少ない」ことをおさえる必要があると河野さんは解説する。
「日本ではイノベーターの波がそのまま上がっていくのではなく、アーリーアダプター地点では少し横ばいになり、アーリーマジョリティで初めて大きく上がっていきます。そのため日本では、アーリーアダプターでどれくらい伸びているかがなかなか見えてこない。これが投資判断を難しくしているひとつの理由だと思います。そのためとくに日本では、アーリーアダプターの壁をどうやって超えていくかが非常に重要です。
今の時点でWeb3の時代が本当にくるのだろうかと感じているとしたら、日本全体がこの壁を実感していることの表れではないでしょうか」
では、そういった動きをどのようにビジネスに取り入れるのか。そのために大切なのが「ピーク地点の設計」だ。アスリートがオリンピックなどの大きな大会に自身のピークを合わせるように、Web3やメタバースといった概念が一般的に知られるようになり、かつ自身の能力を最大限活かせるタイミングがどこなのかを考える。これが大きなポイントなのだと言う。
そのうえで河野さんは次の図を示した。今話題にのぼることの多いテクノロジーや概念がどのようなペースで普及していくかを、調査データなどをもとに自身で想定したものだ。
「大切なのは、今の社会状況などをふまえながら、いつアーリーマジョリティにまで達するかを想像することです。もちろんこのとおりになるとは限らないため、多少の前後はあると思います。ただ、クリエイターとして活動するうえでどこに最大値を設定するのか。いつビジネス戦略のピークをつくるのかを考えていくと、この先の未来がよりおもしろくなっていくはずです。
クリエイターとして、ベストなタイミングでブランドとコラボレーションができる状態をつくっておく。ブランドの発展にコミットできるような存在になっている――。そういった準備をしながら、Web3が日常やビジネス的に意味のあるレベルに達するのはいつなのかを想定して動くことができれば、新たな世界が見えてくるのではないでしょうか」
Web3と呼ばれる世界が近い将来やってくるのかもしれない。その未来には、いっそうクリエイターの力が求められるようになるだろう。ブランドとの共感力。時代の流れをとらえる力。自身の強みを磨ききる力。これらを武器に、きたる未来に備えたい。