[最終回]デジタル広告領域における組織づくりには何が求められるのか――組織の「リデザイン」を考える

[最終回]デジタル広告領域における組織づくりには何が求められるのか――組織の「リデザイン」を考える
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 本連載では株式会社アドウェイズにてクリエイティブ部門の責任者を務める遠藤由依さんが、デザイナーを取り巻く現状や課題に触れながら、ユーザーにとって価値のある広告づくりのために必要なことを伝えていきます。第3回の最終回では、これからのデジタル広告業界でデザイナー組織をつくり動かしていく上で大切にすべき点にフォーカス。遠藤さんが組織の中長期的なマネジメントに取り組んだきっかけ、そこで得た経験や価値観、視点とは。さらに今後、どのようなデザイン組織が市場や働くメンバーから求められるのかなどについてお伝えします。

 インターネット広告企業の株式会社アドウェイズで、クリエイティブ部門の責任者をつとめている遠藤です。

 第1回第2回では、デジタル広告デザイナーやその組織が今後インターネット広告業界で本質的な価値と向き合い成長をしていくために持つべき意識や価値観についてお話しました。本来広告の目的とは、クライアントの中長期的な成長やユーザーにとって価値ある情報を届けるためのものであり、その意識を持って業務の設計をしていく必要があること。ビジネス視点をもって業務に取り組み、技術力も磨いて新しい表現方法を構築すること。そして、働くデザイナー・ディレクターの目指すべき指標を広げていくことなどを挙げました。

 では、そういった広告本来の価値を発揮するためには、具体的にどのようにデザイン組織をつくっていくべきなのでしょうか。私自身もデザインチームの責任者として試行錯誤している最中ではありますが、これまでのマネジメントで得られたノウハウをもとに、私なりの答えをお伝えしていきたいと思います。

どのような組織であればデザイナーが成長できるのか

 昨今はスマートフォンの普及や技術の進歩などにより、デジタル広告の表現方法の幅が広がり市場も拡大しています。それにともない、デジタル広告デザイナーを目指す人やデザイン組織を持つ企業も増えています。ですがそれと同時に、組織づくりの“課題”を抱えるケースも多くなっているのではないでしょうか。

 私がデザイン組織をつくるうえでもっとも大切だと思っているのは「中長期的にデザイナー・ディレクターが成長できる環境をつくる」ことです。初回の記事でも詳しくお伝えしましたが、デザイナーは制作業務を行うという立場上、どうしても働いていく中で“指示通り”のクリエイティブを制作するポジションになりがちです。この進めかたでも短期的な成果はあげることができるかもしれませんが、中長期的に見ると個人も組織も成長をすることは難しいと考えています。

 なぜこの広告を発信する必要があるのか、またどのようなユーザーにアプローチをしていきたいのか。デザイナー自身がそういった基本的な情報を知ったうえでクリエイティブをつくらなければ、ユーザーにとって本当に価値のある情報を届けたり、ポジティブな印象を与える広告づくりをすることはできません。そして結果的にこの状態が続けば、どこかでデザイナーの成長が頭打ちになってしまい、組織としてのアップデートも難しくなるでしょう。現在、こういった課題を持っているデザイン組織も多いのではないでしょうか。

留職で得た、「デザインで課題を解決する」ということとは

 実際に私が責任者を務めるクリエイティブチームでも、オーダーに対して表現品質の高いクリエイティブを制作することこそがデザイン組織の責務であり、働くデザイナーたちに成長を感じてもらうために必要なことだと考えていました。

 しかしやがて「今までのように純粋に表現品質の高いクリエイティブをつくりだすだけでは、モノでありふれた現代においてユーザーのニーズに対応できないのではないか」という懸念が生まれ始めました。

 ユーザーは商品を選ぶうえで、ブランドのストーリー、コンテキストを大切にするようになり、単に表現品質やスペックが高いだけのコンテンツは選ばれなくなりました。また、短期的な成果を出すことにフォーカスをし、指標やビジョンがないままに組織を動かしていては、デザイナーも組織も成長することが難しいだけでなく、未来を見据えることもできない。そんな危機感を抱いたのです。

 ただ、そうやって組織の価値観を変えていこうと思い立ったのは良いものの、正直「何をどうやって学べばよいのか」がわからない状態でした。そこで、アドウェイズ代表の山田に、悩みや課題をありのままに相談することにしました。

 山田からは、デザインを通じて本質的な課題解決に向き合っている会社として株式会社グッドパッチ(以下、Goodpatch)の代表取締役である土屋尚史氏を紹介してもらうことに。こうした経緯のもと、山田からも「一度実際に仕事をしてみてはどうか」と話があり、私は留学ならぬ「留職」という形で、短期間Goodpatchで働かせてもらうこととなりました。

 その経験を通じ、私のデザインに対する考えかたは180度変わることとなります。Goodpatchは制作業務だけに取り組んでいるデザイン会社ではなく、サービスの事業戦略からクライアントとディスカッションを重ね、デザインで課題解決をしていく。働いていく中で自分には足りなかった点が浮き彫りになり、私は大きな影響を受けたのでした。

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