いかに本物に近づけるか デジタルツール「Adobe Fresco」の挑戦
App StoreのiPad無料アプリランキングでは、リリースされた9月25日から29日の約5日間にわたり、Adobe Fresco(以下、Fresco)はランキングのトップとなった。これについて、10月3日(木)に東京・表参道で行われたAdobe Frescoローンチ記念プレスイベントに登場した岩本さんは、「これほどの期間にわたって1位となったのは、アドビのアプリケーションでは初めてなのではないか」と、感慨深げに語った。
そんなFrescoだが、開発をスタートしたのは3年以上前。もととなっているのは、2001年にiPadの発売日と同日に、iPadに対応するためのスケッチアプリとしてアドビがリリースした「Adobe Ideas」だ。その後、2014年には鉛筆、ペン、水彩ブラシといった手描きと同じ描画ができるスケッチ・ペイントアプリ「Adobe Photoshop Sketch」や、手描きのベクトルイラストを作成できる iPadアプリ「Adobe Illustrator Draw」など、アドビを代表するツールの名前を冠したイラストツールも登場。それ以外にも、市場にはさまざまイラストツールがあふれていた。
そういったツールとどう差別化をし、ユーザーの声に応えることができるようなイラストツールを開発するか。そう考えたときにアドビが注目したのは、ひとつのツールがさまざまな役割を果たしている、ということだ。
「たとえばAdobe Photoshopは、ウェブデザインで活用する方もいれば、デザインツールとして使う方、ベースとなっているフォトレタッチのツールとして使っている方など、活用方法はさまざまです。中には、Photoshopで絵を描いている方もいらっしゃる。つまり、Photoshopが担っている業務がとても多いんですよね。そうなったらこの部分をきりだし、より特化した、まったく新しいドローイングツールを作ろうということでプロジェクトは動き出しました。
そういった思いから生まれたFrescoは、PhotoshopやIllustratorといった、アドビを代表するツールのよさもしっかりありながら、油彩や水彩の表現をリアルに実現する『ライブブラシ』などの機能も搭載。デジタルツールによるアナログ的な表現を、どこまで本物に近づけることができるか。限界に挑戦するといったら少し大げさかもしれないですが、そんな部分にアドビが挑ませていただいたツールです」
Frescoの開発は、初期の段階からユーザーの声をもとに進められてきた。実は、その中でも開発当初から耳を傾けてきたのが、日本のユーザーだったと岩本さん。プロであるかアマであるかにかかわらず、世界的に見ても描くことが好きなユーザーが多いということが理由のひとつだった。
「日本からは10名くらいの方にテストに参加していただきました。そこでいただいたフィードバックをもとに、このFrescoは製品化をしているんですよ」