“ストーリーテラー”として何が必要か SHIFTBRAINのUXデザイナー兼アートディレクターに聞く

“ストーリーテラー”として何が必要か SHIFTBRAINのUXデザイナー兼アートディレクターに聞く
2019/07/04 12:00

 デザイナーのキャリアはさまざまだ。フリーランスとして自らのデザインを追求する道もあれば、企業というチームから生まれるシナジーをデザインに昇華する道もあり、フィールドを思い切って国外に移す道もある。これらすべての道を経験しているのが、今回お話を伺ったシフトブレインの及川昇さんだ。日本とイギリス、個人と企業……。及川さんが選択してきたこれまでのキャリアと、現在の肩書きであるアートディレクター兼UXデザイナーとして大事にしているポリシーを語ってもらった。

イギリスのデザイン教育から学んだプロセスの重要性

 専門学校生時代、イギリスのクリエイティブ集団「TOMATO」のワークショップに参加して衝撃を受けた及川さん。それまでは結果が重要だと思っていたデザインの世界に、プロセスという新たな価値基準が投げ込まれた。

「ワークショップ中、『それはどういうプロセスを踏んでいるの?』という質問をたくさんされて。なぜそこまで制作の過程について聞かれるのかと不思議に思って調べてみたら、イギリスのデザイン教育自体がプロセス重視だということがわかりました」

株式会社シフトブレイン アートディレクター兼UXデザイナー 及川昇さん
株式会社シフトブレイン アートディレクター兼UXデザイナー 及川昇さん

 その体験をきっかけにイギリスへ興味を持ち、当時好きだったグラフィックデザイナーの多くがイギリス出身だったことも相まって渡英を決意。英語は話せなかったが、全力で勉強をして、イギリスの大学に入学した。

 現地の大学を卒業後はワーキングビザを取得。フリーランスのグラフィックデザイナーとしてイギリスに2年間滞在した。知人の勤める会社から仕事のオファーをもらうなど幸先は好調だったが、帰国後はフリーランスではなく、企業に所属する道を選んだ。

「ひとりでやっていると、だんだんプロジェクトを客観的に見ることができなくなっていったんです。プログラミングが好きだったのでウェブの仕事も受けていたのですが、技術的な限界も感じていました。会社に入って、チームのメンバーとコラボレーションすることで、より良いものを作ることができるのではないかと思い、シフトブレインに入社しました」

フリーランスから会社員へ 視野の広いメンバーから受ける刺激

 数ある企業の中からシフトブレインを選んだ決め手のひとつは、及川さんの好きなキャンペーン関連の仕事が多かったこと。デザインクオリティの高さや、カルチャーが肌に合いそうだと感じたことも大きかった。

 及川さんが入社した2012年当時は、シフトブレインでは約4名のデザイナーがアートディレクターも兼ねていたが、会社の成長にともない、役割を分ける方針へと変わっていった。とは言うものの今も、役割や肩書きにとらわれることなく仕事をするメンバーがほとんどだという。

「シフトブレインのアートディレクターはデザインもします。むしろアートディレクションしかしない人はひとりもいないんです。単純に人が少ないからという理由もあるのですが(笑)、そもそも作ることが好きな人たちばかりなので、言われなくても自発的に期待以上のものを作ろうと、手を動かすと思います。1人ひとりの仕事の幅がすごく広いんですよね」

 シフトブレインという会社の良さはそこにあると及川さんは語る。目の前のタスクだけに固執することなく、広い視野でプロジェクトを見渡せるメンバーが制作陣に揃っている。そのことが、クライアントの期待を超える結果にもつながっている。

「たとえば、ウェブサイトのリニューアルをクライアントから依頼されたとします。打ち合わせで話を聞くうち、彼らの課題はウェブサイトのリニューアルだけでは解決できないとなった場合、ロゴのリデザインを思い切って提案するのがシフトブレインです。もともとの出自はウェブデザインの制作会社なので、最初はウェブデザインの案件をたくさん受けていたのですが、視野の広いメンバーが集まることによって仕事の受けかたも変わってきたように感じています」

 最近はウェブデザインの枠を超え、企業ブランディングの案件を引き受けることが多くなってきたというシフトブレイン。サイトの制作のみならず、ロゴや、名刺などアナログの制作物も多い。同じ会社がクリエイティブを通じてブランディングまでを一手に引き受けることで、プロジェクトにも一貫性が生まれるのだ。

「僕がひとりのアーティストとして自分のデザインを追求したかったら、ウェブデザインの会社ではなくグラフィックの業界に身を置いて、1枚の絵で勝負していたと思います。シフトブレインにいる理由のひとつは、コラボレーションする相手がすごい人たちだから。とてもコラボし甲斐がある人たちばかりなんです。自分ひとりでは思いつかなかったアイディアやエッセンスをチームのメンバーがもたらしてくれるので、『こうなるだろうな』という自分の想定を超えることが多い。視野がどんどん広がっていくような感覚があります」

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