[イベントレポ]デザイン組織づくりに悩む人たちへ 現場の実践者が語る設計のヒントとは

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2023/10/20 11:00

エムスリー流、チームがアクティブに自走するための仕組みづくり

  最後のセッションでは、エムスリーのプロダクトデザイナーでありチームリーダーもつとめる大月雄介氏が登壇。エムスリーは医療機関向けのデジタルサービスを複数提供しているが、プロダクトごとに最低ひとりはデザイナーが担当する体制をとっている。大月氏は現在、3つのプロダクトを兼任。その中でも今回は電子カルテプロダクト「エムスリーデジカル」の開発/改善チームを立ち上げ、アクティブに自走するに至った事例を紹介した。

エムスリー株式会社 デザインG チームリーダー/プロダクトデザイナー 大月雄介氏
エムスリー株式会社 デザインG チームリーダー/プロダクトデザイナー 大月雄介氏

 同プロジェクトチーム誕生の背景を、大月氏は次のように解説。

「欧米では電子カルテの導入率がほぼ100%であるのに対し、日本は50%。いまだ、紙カルテが最強のライバルです。エムスリーデジカルをより魅力的なプロダクトへ成長させ、紙カルテを超えるために、チームを立ち上げました」

 メンバーは全員が兼務。デザイナーとプロダクトマネージャーを兼ねる大月氏と、プロダクトマネージャー、エンジニア、デザイナーの計4名だ。このチームを「兼務でも自走し、さらには継続的に開発&改善が生まれる状態」にすることを目指した大月氏は、チームとしてキックオフするまでに何を行ったのか。実践した3つのアクションをひとつずつ解説した。

 1つめは「現場を見に行くこと」。エムスリーは医師が使うプロダクトを提供しているため、開発する側の自分ごと化が難しい。ユーザーとなる医師に価値が届いていることを実感するには、その現場を見に行くことが効果的なのだ。「あまり大きな目的を設定せず、ひたすらユーザーを観察しに行くことで、課題発見につながりますし、どのように価値が届いているのかを理解することもできる。プロダクトへの共感や責任感が生まれました」と大月氏は振り返る。

 2つめに挙げたのは、現場で見つけた小さな課題から「小さな成果をつくる」ためのアクションだ。大きな機能開発に取り組みたくなるところをグッとこらえ、ユーザーから届いた小さな課題に向き合った。これにより、「メンバーの役割や動きかた、強みが自然と明確になり、自信が生まれた」のだと言う。

 そして、3つめがキックオフでの「ビジョンの共有」だ。1点めと2点めの取り組みを経て、メンバーそれぞれの解像度が上がっている状態でディスカッションベースのキックオフミーティングを実施。

 キックオフは3ステップで行われた。最初にビジョンや仮説、戦略を語り「発射角度」を決める。それに対してアイデアを出し合い可能性を広げ、最後に「これをこの期日までに行う」という実現可能なアクションに落とし込んだ。こうすることで、「短いキックオフミーティングでもビジョンの納得度は高くなります。それにチームの士気も上がり、アクションも明確になりました」と大月氏は語る。

 さらに単発のプロジェクトではなく長期的にメンバーを巻き込んでいきたい場合には、「いきなりキックオフするのではなく、少しずつ施策を仕込んでいくと、オンボーディングしやすくなる」と補足する。

 最後に大月氏は次のようにアドバイスを送り、セッションを終えた。

「人を巻き込み、自走してもらうためには、納得度の高いキックオフは非常に重要です。飛行機のランディングのように、徐々にプロダクト開発に向き合えるような状況を整えていくと良いのではないでしょうか」

 セッション後の質疑応答にはSmartHRの佐々木氏とエムスリーの大月氏が登場。

 「多様なデザイナーの評価が難しいが、両社ではどのように行っているか」という視聴者からの質問に対しては、「多様なスキルを評価するのは難しい」と同意したうえで「これがSmartHRが最初に組織を分割した理由のひとつでもあります。まずは評価軸が一致する粒度でチームを分割すると、比較的上手く進められるかもしれません」と佐々木氏は回答。一方エムスリーでは状況が異なり、「デザイナーのスキル自体を評価することはあまりない」と大月氏。映像スキルの高い人、マンガを描ける人などユニークな技術を持った人が多いため、どのように事業貢献しているかを評価する文化があると答えた。

 4社それぞれの組織に対する考えかたや、その具体的な取り組み、試行錯誤が語られた本ウェビナー。各社の知見を、デザイン組織づくりに活かしてみてはいかがだろうか。

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