勉強会参加者は600人超えの回も なぜ三井住友カードのデザイン推進が組織を横断できているのか

勉強会参加者は600人超えの回も なぜ三井住友カードのデザイン推進が組織を横断できているのか
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2024/04/15 08:00

 さまざまな企業が経営におけるデザインの必要性を感じ、デザイン組織を立ち上げているが、その取り組みは容易ではない。そんななか、三井住友カードは2023年から全社でのデザイン推進をスタート。組織横断で、デザインの考えかたや価値の浸透を実現している。デザイン推進で効果を出すための実践と秘訣とはなにか。三井住友カードの伊藤亜祐美氏と、ともにデザイン推進に取り組む三井住友銀行の金子直樹氏にインタビュー。外部パートナーのコンセント 取締役 大﨑優氏とともに語ってもらった。

デザインは、チームではなく“全社”の課題

――まずは、デザイン推進における皆さんの関わりかたについてお聞かせください。

伊藤(三井住友カード) 三井住友カードIT戦略部で「UI/UXデザインスクワッド」というアジャイル組織のグループ長を務めています。この組織は社員数名と外部パートナーで組成しており、デザイン推進だけでなく、社内案件のデザイン支援も担っています。ウェブやアプリの制作においてデザインを必要としている部署は多いため、その上流から参画し、体験設計やUIデザインなどをサポートしています。デザイン推進では、社内勉強会などを通じてデザインの重要性を全社に浸透させる活動をしています。

金子(三井住友銀行) 私は2017年に三井住友銀行にデザイナーとして入社し、2019年から三井住友カードと兼任で両社の案件に携わっています。チームのメンバーとしては、デザインの勉強会を企画し講師を務めたり、日々の案件の相談やデザインレビューを行うなかでもデザインの重要性を伝えたりしています。

大﨑(コンセント) 私は外部コンサルとして関わっています。昨今、当社ではデザイン組織の構築や推進の支援を行うことが多くなってきました。今回も、デザインを組織へ浸透させるという組織面と、実際にデザインを作るプロダクト面の2軸で支援しています。

――2023年4月に「UI/UXデザインスクワッド」チームが組成され、どのように全社へのデザイン推進が始まったのでしょうか。

伊藤(三井住友カード) 実は、その前身として、IT戦略部には公開されたウェブサイトのUI/UX改善を担うUI/UXチームがありました。私はUIUXを改善していくなかで、「開発時の考慮漏れではないか」「当初からデザインの考えを入れてお客さまの体験を設計していれば」と課題を感じる案件が正直多かった。

当社の開発案件プロセスには、デザインの要件定義のスケジュールが組み込まれていなかったんです。そのため画面設計はエンジニアが“よしなに”やることになる。それは危険だと感じた私は、金子さんに相談しました。デザイナーが案件の早期から関わって体系を整理する重要性は全社に伝えるべきではないか、と。

この考えを上席にも伝えたところ必要性を理解してくれたことから、全社横断の「UI/UXデザインスクワッド」チームが立ち上がりました。

三井住友カード株式会社 マーケティング本部IT戦略部グループ長 伊藤 亜祐美さん(所属などは取材時点)
三井住友カード株式会社 マーケティング本部IT戦略部グループ長 伊藤 亜祐美さん(所属などは取材時点)

金子(三井住友銀行) 僕も案件に関わるなかで変えていくべきだと感じる部分はありました。とくに三井住友カードにはインハウスデザイナーがいないため外部にデザインを発注するのですが、依頼もとの部署やメンバーによってはアウトプットの品質にバラつきがでてしまっていた。それはデザインの進めかたを知らないことが理由です。そのためしっかりと知識を伝えることで、改善していけるのではないかと考えていました。

――「UI/UXデザインスクワッド」チームのメンバーの役割は、社員と外部パートナーでどのように分かれているのでしょうか。

伊藤(三井住友カード) 外部パートナーは専門スキルを活かして体験設計から実際のUIデザインに落としこむ部分までサポートしていただきます。一方で社員は各部署から案件の依頼を受けたときに、その部署とのやりとりや一緒に議論を起こしていく部分を担うことが多いですね。

大﨑(コンセント) 私たちコンセントは外部パートナーとして、「クライアント“さま”から要件をいただく」のではなく、こちらから情報を取りに行ったり、時には課題提起をしたりといった動きかたをするようにしています。モノを作る前段階でのデザインが大切なんですよね。

金子(三井住友銀行) 僕はデザイナーとしてUXデザインも行うため、その両方の役割でしょうか。外部パートナーからは見えない社内の部署の動きや温度感を把握し共有するような、橋渡しのようなことも行っています。

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