ボトルネックはデザイナーとエンジニアの間にあった
kintoneチームがスクラム開発を始めたのは、およそ3年半前。最初はなかなか上手くいかなかったものの、スクラム開発のプロセスが洗練されることで、プロダクトの開発サイクル(スプリント)は3週間から1週間に、リリースは3ヵ月に1度から1ヵ月に1度へと頻度が高まった。結果的にアップデートの数も年に5件から13件へと増加した。
そのように成果が上がった一方、デザイナーと開発チームのコミュニケーションがボトルネックになっていることも判明した。
アジャイルのプロセスでは、デザインが完成しても検討漏れが見つかったり、デザイナーが追加の修正を施すといったことが頻繁に起こる。サイボウズではこういった課題を解決するべく「モブプログラミング」を利用した。
モブプログラミングとは、コーディングをする「ドライバー」を、複数の「ナビゲーター」が囲んで開発をするという手法。もともとは、コードレビューの時間短縮や経験の浅いメンバーののサポートのためにエンジニアが導入したものだったが、樋田氏らは、スクラム開発のボトルネックを解消するべく、モブプログラミングにデザイナーを加えたのだ。
「これによって、『完成したデザインをエンジニアに引き継ぐ』のではなく、『モブプロで一緒に作ろう』というように、デザインを完成させず、スプリントの中で一緒に作っていくスタイルに変わりました」
このようにエンジニアの手法のなかにデザイナーも入っていくことで、エンジニアからのフィードバックを素早くデザインに反映し、デザイナーの意図やコンセプトなどをディスカッションすることで、エンジニアもより良いコードがかけるようになった、と樋田氏は話す。表現を変えれば、バックログを作る過程にのみならず、エンジニアとUIを実装するといった開発プロセスのすべてにデザイナーが関わるようになったわけだ。
その結果、2019年にkintoneのモバイル版を大幅にリニューアルしたタイミングでは、開発後にエンジニアからデザイナーを評価する意見があがったのだという。社内のkintoneにこんな発言が書き込まれた。
そんなエンジニアからの感想を聞き、「デザイナーはチームに欠かせない存在になったんだなと強く実感しました」と樋田氏は振り返る。