10年後も生き残るデザイナーの条件とは サイボウズ「kintone」開発チームからそのヒントを探る

10年後も生き残るデザイナーの条件とは サイボウズ「kintone」開発チームからそのヒントを探る
2020/03/17 11:00

 サイボウズは2月14日、都内で開催された「Creators MIX 2020」において、「アジャイルのプロセスとデザイナーの変化 -開発チームに欠かせないデザイナーになるために-」と題した講演を実施。開発本部 UX・UIデザイナーの樋田勇也氏が登壇し、組織で求められるデザイナー像について解説した。本記事では、その様子をレポートする。

最初にアジャイル開発に加わった際に行った3つのアクション

 樋田氏は、制作会社でのデザイナー勤務を経て2016年にサイボウズに入社。現在は、業務改善プラットフォーム「kintone」の開発にデザイナーとして携わる。kintoneとは、業務で必要なシステムを、ドラッグアンドドロップなどの直感的な操作によって、ユーザー自身が簡単に作ることのできるクラウドサービス。通常のシステム開発に必要なプログラミングは不要だ。

 樋田氏のデザイナー歴はおよそ10年。「デザインのプロセスは、かつて想像していたものから大きく変わってきている」と振り返る。

「以前の私が考えていた“求められる”デザイナー像というのは、高いスキルや斬新なアイディアを持った“スーパーデザイナー”。そのため、とにかくまずは高いデザインスキルを身に着けようと考えていました。しかし2016年にサイボウズに入社し、kintone開発チームにジョインしてから考えかたがガラっと変わった。kintoneはプロダクトの規模が大きいですし、画面の数も多く、仕様も複雑です。デザイナーがひとりで全体像を把握することは難しいと気づきました」

サイボウズ株式会社 開発本部 UX/UIデザイナー 樋田勇也氏
サイボウズ株式会社 開発本部 UX/UIデザイナー 樋田勇也氏

 kintoneの開発チームには、エンジニアやライター、プロダクトマネージャー(以下、PM)など含め、40人を超えるメンバーが関わっている。そのためデザイナーも、多様な役割をもつメンバーとともに、プロジェクトを進めていかなければならない。

「私がkintone開発チームに携わりはじめた当時、チーム専任のデザイナーは不在。そんな中でスクラム開発が始まったのですが、それまでの開発プロセスでは、PMが考えた企画をもとに開発チームが製品を開発し、デザイナーは『ここのデザインを調整してほしい』など、最後に少し関わる程度でした。そういったプロセスでは、たとえとても高いスキルを持ったスーパーデザイナーがひとり現れたとしても、その価値はユーザーには伝わらないのではないかと思いました」

 こうした背景を踏まえ樋田氏は「まずはデザイナーとしてプロセスに参加していくこと」が重要だと判断。具体的に3つのアクションをとったという。そのひとつが「未完成のデザインを共有する」ということだ。

「これまで自分が経験してきたウォーターフォール型の開発では、デザインのフェーズがしっかりと決まっていたこともあり、あまり横やりを入れられたくないという思いなどから、未完成のデザインを見せることは一般的ではありませんでした。ですが、kintoneのような複雑なプラットフォームを多くの人と関わりながら開発する、という状況では、デザインしているものを隠すことはあまり意味がない。それよりも、早く公開して早くフィードバックをもらいながらデザインを進めていくほうが間違いが少ないだろうと思い、私の制作プロセスをオープンにし、作っているものをどんどん公開するようにしました」

 ふたつめは、プロトタイプの作成。

 アジャイルのプロセスでは、ウォーターフォール型で制作していた緻密なデザインカンプではなく、粗くてもいま考えているアイディアをチームのメンバーと検証できるものが求められている――。そう感じた樋田氏は、それを可視化するために、さまざまな粒度でプロトタイプを作り、提示することを徹底した。

 最後は「一緒に考える」ということ。kintoneのような複雑なプロダクト開発では、デザイナーひとりで案件の全容を把握することは難しい。また、スピード感のあるアジャイル型のプロセスでは、デザイナーがひとりで判断をしていると間違った方向に走ってしまうリスクがある、と樋田氏は指摘する。

 現在も、デザインを作っている途中で、プロダクトマネージャーの机に走っていき、その場でエンジニアも巻き込みながらデザインの調整をしていくということは日常茶飯事だという。

 こうした活動を続けていくうちに、樋田氏はチームに変化が生まれたことを感じる。

「次第にデザイナーという存在が、『最後に画面をきれいにしてくれる人』から、『上流から検討を支援してくれる人』へと変わっていったんです」

 検討プロセスにデザイナーが入りプロトタイプを活用することで、PMが考えるバックログをより洗練させることが可能になった。そのため、バックログの正確なイメージをエンジニアに渡すことができるようになったのだ。