米国時間の6月26日、アメリカ・サンフランシスコのMoscone Centerにて、ブラウザ上で共同編集できるデザインプラットフォーム「Figma」を提供するFigma, Inc.が主催するグローバル年次カンファレンス「Config 2024」が開幕した。
今回で6回目となるFigmaによる年次のカンファレンス「Config」ではFigma主要製品の発表も行われる。世界中のコミュニティからデザイナー、開発者などがサンフランシスコの会場に集まり、その数はおよそ1万人にのぼった。
カンファレンス1日目のオープニングセッションでは、Figmaの共同創業者/CEOのDylan Field氏が登場。
冒頭、Figmaではインターフェイスのデザインが一新されたことを発表。これについてDylan氏は「今までいろいろな機能を加えてきましたが、機能を減らしたほうが良いのではないか、2024年のConfigでは『追加を機能するよりも何を減らすかを見たい』と言った声もあり、私も『引くこと』を考えてきました」と背景を語り、新しいインターフェイスを披露した。
またConfig 2024では、デザインをレベルアップする「AIデザイン機能」、開発者にとってFigmaをさらに便利にする開発モード「Dev Mode」のアップデート、プレゼンテーションを共同で作成できる新製品「Figma Slides」の発表もなされた。Figma SlidesがDylan氏からアナウンスされると、会場からは大きな歓声があがった。
Dylan氏はFigma Slidesについて「Figma SlidesをつかえばFigmaのパワーをストーリー展開のために使うことができます」と自信をのぞかせ、AIについても「Figma AI Designはまだ始まったばかり。コミュニティのみんなとさらに作りあげていきたい」と抱負を語った。
There’s no way you caught everything. Here’s what we launched at #Config2024
— Figma (@figma) June 26, 2024
→ UI3, a redesigned Figma
→ Figma AI (Make Design, Make Prototype, Visual Search, Replace Content, Rename Layers)
→ Figma Slides
→ Dev Mode updates (Ready for Dev View, Focus View, More Statuses)
→… pic.twitter.com/9NHynoMBK2
編集部ではこの発表を受け、Figma Japan カントリーマネージャーの川延浩彰さんに個別取材を実施。日本のユーザーに向け、注目してほしいポイントなどについて話を聞いた。
――今回の発表を受け、とくに日本のユーザーに注目してほしい部分はありますか?
今回アナウンスされた発表はFigmaのコアユーザーにとっても新しい体験になると思います。AIについても多くの発表がありましたし、今までFigmaが取り組んでいなかった新しいプロダクト「Figma Slides」にも注目してほしいですね。
Figma Slidesは、今までユーザーがどのようにFigmaを活用しているかにヒントを得て作られたプロダクトです。これは、Figmaがブレインストーミングで使われていることに着目したことで生まれた「FigJam」と同じですね。ただスライドに焦点を当てたツールはすでに市場に存在しているものではあるため、どのようにFigmaらしさを出していくかといった点は注力したポイントです。
今日のKeynoteでは、「強く賛成する」から「強く反対する」までを5段階で投票できる「Alignment Scale」という機能を使ったデモがありました。
たとえば上司から「こんな施策をやろう」と提案があったときに賛成の度合いをプロットすることができるのですが、誰がどこにプロットしたかを隠すこともできる。そのため、意見が集中していないところに投票した人の意見も拾いやすくなるというメリットがあります。ちなみにこのAlignment Scaleは、すでにFigma Product上で提供されていた機能で、こういったすでに提供されていた機能が、新しいプロダクトでも使えるようになるのは嬉しいですよね。
またスライドのなかでプロトタイプまで動かすことができる点も、Figmaならではの特徴でしょう。そういったFigmaらしさをプロダクトに取りこむことができている点は、Figma Slidesの魅力のひとつだと思います。
――AIに関連する部分で、とくに注目しているポイントはありますか?
今までFigmaでは、おもにFigJamでAIの力を活用していました。しかし今回発表した機能は、おもにFigma上で使われるものです。言い換えると、デザイン領域でのAIの実装です。これが日本のユーザーにどういう風に受け入れられるのかが楽しみですし、UIやUXにどのようなインパクトをもたらすのかについても、日本ユーザーの声が聞けたらと思っています。
私は北米に住んでいたことがあり、現地の学校に通った経験もありますが、アメリカでは、「プレゼンで伝えたいことをいかにシンプルに表現するのか」が求められます。しかしながら日本では、必ずしもそうではない傾向があります。それは、アプリでもウェブサイトでもわかりやすく傾向が出ている面もありますが、そういった違いがあるなかで、今回のAIの発表が、日本のデザインシーンにどういったインパクトをもたらすかにも注目をしています。
――日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。
日本では、現場のメンバーはFigmaを好きであっても、活用はその部門内のみにとどまってしまうことも多いと思います。ですが、Figmaのカギは「コラボレーション」。Figmaはサイロ化された縦の壁を壊して横でつながっていくもので、多くの方を巻き込むことによりいっそうパワーを発揮します。そのため、企業にとっての、とくにプロダクト開発において、標準的なツールとしてFigmaを活用してほしいと思っています。
マッキンゼーもデザインは経営者が旗を振らなければいけないと明言していたり、デザインを経営の中心に据えているアップルなど多くの企業が成果をあげていたり、2018年に発表されたデザイン経営宣言でもデザインの重要性が語られたりしているものの、日本企業におけるデザインの浸透という点では、まだ大きな可能性を感じる状況です。
ただもちろん、デザインの重要性が少しずつ浸透してきていることも感じています。Figmaでは日本が世界でいちばん成長している市場で、「デザインのプロダクト」としてはキャズムを超えたという見方もあります。しかし私たちの会社が提供するプラットフォームも「デジタルプロダクトを作るためのもの」へと変わってきている側面もあります。我々としては、今まで以上に日本市場にコミットして、安心して使ってもらえるよう体制を強化していきたいですし、より多くのユーザーさんに喜んでいただけるよう努力を続けたいと思います。
なお、Config2024は6月28日(米国時間)まで行われ、NASAのシニアヒューマンセンタードデザイナーのJoyce Croft氏やBrowser CompanyのプロダクトデザイナーでブランドリーダーのKarla Mickens Cole氏らが登壇する予定。