成功の理由は「ワンチームになれたから」 日商エレクトロニクスとA.C.O.がブランド開発を振り返る

  • X
  • Facebook
  • note
  • hatena
  • Pocket
2020/09/30 11:00

困ったことはまずふたりに相談 今後は「ブランドを育てていきたい」

――今回の案件をとおして心がけていたことはありますか?それぞれお聞かせください。

長谷川 私が今回のプロジェクトで常に意識していたのは、ブランド開発が終わったあとに、社内に浸透させることができるかどうか。トリガーを作るのは私の役目ですが、だからといって私がすべて決めてしまうと、その先このブランドを広く社内に伝えていくことはできないだろうと思ったんです。プロジェクトが終わり、一緒に進めていた8人のメンバーが自分の部署に戻ったとき、彼らがブランドを定着させるキーマンになりますからね。そのため、各事業部からも、自立自走ができるであろうメンバーをアサインしました。

私自身は、ブランド開発について社内あてにメールで発信したり、何回もステートメントを読み返しているうちに、より染みこんできた感覚はあります。それを自分だけではなく、社内にしっかり浸透させていかなければいけないと思っています。

川北 ステートメントを見返していただいているんですね。とてもうれしいです。

ともにワークをするフェーズで私が意識していたのは、日商の皆さんとA.C.O.のメンバーがフラットに考えられる雰囲気づくりです。そのために、なるべく皆さんの名前を呼びかけて意見を引き出したり、ワークショップの発表者が偏らないように発言を促したり。A.C.O.のメンバーはもちろん、日商の皆さんにも、自分の言葉で話してもらうことを心がけていました。

沖山 私が担っているアートディレクションの役割とは、このブランドのコンセプトや事業を正しく伝えるだけでなく、イメージで飛躍させ、言葉や数字では表せない思いや価値を最大限表現するような世界観を作ることです。もっと自分たちのことが好きになったり、自信がもてるよう、それまでにみんなで編集してきた言葉を丁寧に拾って「見える形」にしていきます。

デザインコンセプトやアイディアは、私から生まれたものではなく、皆さんから出てきたオリジナルの言葉や考えによってできていくものなのです。全員が納得できるものを作るためにはどうしたらいいかを、ワークショップでの会話や皆さんの言葉を聞きながら常に考えるようにしていました。

株式会社A.C.O. アートディレクター 沖山直子さん
株式会社A.C.O. アートディレクター 沖山直子さん

――今回、およそ5ヵ月にわたって一緒にプロジェクトを進めてきた感想をお聞かせいただけますか?

長谷川 ブランド開発とは一般的に、対外的に情報を発信することであるというイメージを持つ人が多いように思います。しかし私はそれだけに限定せず、インナーブランディングを進めたいという気持ちを強く持っていました。ビジネスとして事業部をどのように統合していくかというテクニカルな部分もありますが、いちばん変えたかったのはマインド。このブランド開発を起点に、組織としても変わっていけたらと考えていました。

ブランド開発にはさまざまなセオリーがありますが、A.C.O.さんは、ブランド開発だけにこだわりすぎず、柔軟に進めていただけたと感じています。ワークショップでは、「こんなにも真剣に取り組んでくれるんだ」と依頼した私たちが驚くくらい、A.C.O.さんの一生懸命さが伝わってきましたし、それがとても響きました。私たちの製品にまつわる領域も必死に理解し、言葉にしてくれようとする姿勢がなによりもうれしかったです。

とくにおふたりには、困ったりつまずくことがあったときには、誰よりもさきに相談していました。全幅の信頼を置いていましたね。

――皆さんのお話をお伺いしていても、一体感をもってこの案件に取り組んだからこそのチーム感が伝わってきます。最後に長谷川さんから、ブランド開発後の社内の変化や本プロジェクトの総括をお願いします。

長谷川 プロジェクトが終了した5月以降に事業計画を立てたのですが、そのなかで、8つの事業を統合したブランド名「Natic」が略語として出てくるようになりました。単品でなにかを販売するのではなく、ほかのものと組み合わせてイノベーションを生む、という意味です。社内にも少しずつ浸透していることを感じた出来ごとですね。

今回、A.C.O.さんにご協力いただいたおかげで、プロジェクトの初期段階としては成功を収めることができました。もちろんまだまだ道半ばではありますが、今回時間をかけてつくったステートメントを軸に、ブランドを育てていけたらと思っています。