1ヵ月ひたすら行ったのは、さまざまな切り口でのワーク
――本プロジェクトの具体的な流れについて伺えますか?
川北 まず、日商エレクトロニクスのメンバーのお人柄や、組織体制についてヒアリングをしながら進めかたについて話し合いました。今回は既存のアプリケーションを統合してひとつのブランドをつくるため、通常の新規サービス開発とはプロセスが異なります。そのため、プロセスそのものについて、1ヵ月間の考察期間を設けました。
長谷川 私たち日商からは、ひとつのブランドに統合したときに、新しい価値を生むことができるようにしたい、という要望をお伝えしました。
川北 その思いをもとに取り組んだのは、チームビルディングのワークショップです。ブランド開発に関わる各部署から1名ずつ、長谷川さんも含め9名の方にプロジェクトに参加していただきました。部署が異なり、普段は接点があまりなかったメンバーだったので、お互いを知ることから始めました。A.C.O.と日商さまのメンバー全員がひとつのチームとして動かなければ、このプロジェクトは成功しないと思ったからです。
沖山 「ひとつのチームにならないと、ブランドも作れない」がキーワードになっていましたね。
川北 次に、8つの事業で取り組んでいることや特徴をひとつずつ理解していきました。そのサービスは誰がどのように使うものなのか。使った人たちはどんな気持ちになるのか――。ブランドづくりは、機能だけでなく感情の動きを理解することも必要になってくるため、それを知るために、日商さまとA.C.O.が一緒になってグループワークを行いました。
――実際にワークショップを行ってみていかがでしたか?長谷川さんのなかで、新たな気づきなどはあったのでしょうか。
長谷川 普段、私たちが会社やサービスの説明をする相手はお客さまがほとんどで、そもそもアプリケーションを探している人たち。そのため、アプリケーションのことはある程度知っている前提で説明をしていくのですが、A.C.O.さんはアプリケーションの導入を検討しているわけではない。この違いに苦労したメンバーは多かったと思います。
昔からある当たり前の機能を、A.C.O.さんが「それとても便利ですよ」と前のめりに言ってくださったり、自分たちだけではわからなかった強みにも気づく機会になりました。
川北 このように「お互いを知る」ためのワークショップに取り組んだあとは、統合したときの強みとはなにかを考えたり、2030年までにどのような姿になっていたいかをイメージするワークも行いました。それ以外にもブランドの概念に対する理解を深めるなど、最初の1ヵ月はひたすらワークショップをしていましたね。
――次のフェーズでは、何を行ったのですか?
川北 ワークショップで挙がったキーワードをもとに、ブランドのフィロソフィーなどをステートメントとして言葉に落とし込む作業です。A.C.O.で言語化したものを日商さまにぶつけ、ディスカッションをしながら進めていきました。
ただ、ステートメントのなかでもビジョンだけは、全員で案を出すよりもオーナーとしてリードする人に出していただくのがベストだと思い、長谷川さんに考えていただきました。そのビジョンをもとに、ブランドのフィロソフィーやエクスペリエンス、ポジションについて議論を重ねていきました。
沖山 ほかの企業に負けない強みとはなにかを考える「ポジション」の言語化は、とくに難しかったですね。
長谷川 ほかのステートメントのなかでも、いちばん時間がかかりましたよね。唯一無二のサービスはいきなり生み出せるものではないですし、差別化するためのポイントを考えるのにも苦労しました。
川北 ポジションについては、今あるものをアップデートしていくとどうなるかを軸にして考えていくことしました。その結果、「最適な運用体制の改革」と「顧客が素早くデータを活用できる」のふたつの方向性で、差別化を図っていくべきではないかという結論に至りました。
長谷川 いま改めてステートメントを見返してみても、これがベストだったと思います。
沖山 それはよかったです!仮説をもとに進めている部分も多かったですからね。