今の注力領域は「小売」 AI事業本部で立ち上がったDX Design室とは
サイバーエージェントのインターネット広告事業において、広告代理事業と連携しながらデジタルマーケティングサービスの開発を担う「AI事業本部」。
AI事業本部は3つの部門に分かれており、AIを活用した広告クリエイティブやオンライン接客などを開発する「AI本部」、今回紹介するDX Design室が所属する「DX本部」、自社ブランド開発を行う「D2C本部」がある。その下に、より専門的な研究・開発組織が複数あり、エンジニアや研究者、データサイエンティスト、デザイナーといった開発メンバー約250名が所属している。
なかでもDX本部は、同社のマーケティング分野の知見と開発力・技術力を活かし、おもに小売、医療、行政の3つの領域のDX推進支援を目指す部門だ。現状、もっとも注力しているのが小売分野で、チラシのデジタル化や自社アプリ開発による来店促進、店舗販促のためのPOPのデジタル化、広告事業支援、店舗のエンタメ化、ロボットによる遠隔接客など、その取り組みは多岐にわたる。
そうした活動のなかで、“デザイン”によってデジタルとリアルをつなぐソリューション提供を目指すのが、2021年5月に設立された「DX Design室」だ。
今回話を聞いたのは、DX Design室を立ち上げた室長の鬼石広海さんと、同室と連携して開発を進めるアプリ運用センター責任者の東樹輝さん。
鬼石さんはウェブやアプリのデザイン、クリエイティブディレクションを中心にキャリアを重ね、2012年にサイバーエージェントに入社。UI/UXデザイナーおよびクリエイティブディレクターとしてさまざまなユーザー向けアプリ開発に携わったのち、2015年に新しい未来のテレビ「ABEMA」立ち上げに参画。UI/UXデザインチームのリードとして、また後半には番組のクリエイティブディレクターとして約5年間携わる。そして2020年10月にAI事業部に異動し、DX Design室を立ち上げるに至った。
デザイナー組織であるDX Design室と連携しながら、デザインを形にしてビジネスと紐づけ発展させていくチームが、東樹さんが責任者を務める「アプリ運用センター」だ。
東樹さんは2013年に新卒で同社に入社し、子会社でウェブメディアの立ち上げに携わったのち、インターネット広告事業本部にてデジタルマーケティングのコンサルティングに5年ほど従事。2018年には広告代理部門のニューヨーク支社立ち上げに参画し、アメリカ向けメディアに携わった。その後2019年に、企業のデータ整備からアプリのグロースハックまでを支援するアプリ運用センターを新規事業として立ち上げている。
――まずは、DXデザイン室を設立することになった経緯についてお聞かせください。
鬼石 自社サービスに7~8年携わるなかで、キャリアとして社会課題を解決するデザインに挑戦したいという気持ちがありました。「ABEMA」に5年携わり、デザイン責任者としてデザイン組織の土台ができたところで、僕自身がデザイナーとして次の挑戦をしたかったというのが根底にあります。
ちょうど同じ時期にDX推進の機運が社会全体で高まったことで、僕もよりDXに興味を持つようになりました。その少し前にDX本部が立ち上がったので、自身の次のチャレンジとしても適切ではないかと思ったんです。
DXを進めるうえでは、ユーザーが簡単にテクノロジーへとアクセスできる環境を整備する必要があります。そのためには、ユーザーとの接点になるインターフェイスの質が重要になりますが、AI事業本部にはデザイン組織がなかった。ユーザー目線でサービスづくりに関わってきたこれまでのノウハウから、世の中にDXを浸透させるフックとしてデザインを活かせるのではないかと思い、DX Design室を立ち上げました。