これからどうなる? クローズドメタバースとオープンメタバースとNFTから考える、メタバースの未来

これからどうなる? クローズドメタバースとオープンメタバースとNFTから考える、メタバースの未来
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 ビジネスシーンのトレンドワードとなった「メタバース」。本連載では、クリエイティブの視点からメタバースの基本やその体験設計についてお伝えします。解説するのは、エンタープライズ向けにメタバース構築支援などを行うスタートアップ企業・Synamonで開発責任者をつとめる西口雅幸さん。アニメや映像業界でフリーランスのモデラーとして10年以上活動した後、Unityエンジニアに転身した人物です。最終回となる第4回は「メタバースの未来」についてです。

 こんにちは。株式会社Synamonで開発責任者をしている西口です。

 これまでの連載では、メタバースの概要やその作りかたなどを解説してきました。最終回では、これからのメタバースについて深ぼっていきます。

クローズドメタバースとオープンメタバース

 メタバースについて調べていくと「クローズドメタバース」と「オープンメタバース」という概念にたどり着くはずです。まずはこのふたつについて見ていきましょう。

1. クローズドメタバース

 クローズドメタバースとは、ひとつの企業がメタバースのサービスを運用している状態です。現在のメタバースサービスのほとんどがこの形態をとっており、各社がメタバースのスタンダードになるべくしのぎを削っています。サービスは競争することによって洗練されていくので、ユーザーにとっては恩恵が大きいでしょう。この場合、各社のサービスの互換性はなく、サービスAで使っているアバターをサービスBでも使うといったことはできません。

 このようなクローズドメタバースが普及すると限られた企業が力を持つことになり、影響力が増すことを危険視する声もあります。映画『レディ・プレイヤー1』ではメタバース内での問題が世界的な影響を与えてしまう様子が描かれており、オアシスはクローズドメタバースのイメージとしてわかりやすいでしょう。

2. オープンメタバース

 オープンメタバースは1社がつくるのではなく、複数のプラットフォームやサービスが相互運用されている状態を指します。この場合、Aで使っていたアバターをBでも使用したり、自由な行き来もできるようになります。

 今私たちが利用しているインターネット上のウェブサービスは、複数の企業が独立して運用していますが、ユーザーはブラウザを通すことで、インターネットをひとつのものとして体験することができます。これが可能なのは、ウェブサービスが同じ規格で統一されているからです。そう考えると、オープンメタバースも規格が統一されていくことで、相互乗り入れが可能な利便性を獲得していくことになるはずです。

 個人的にはアニメ『ソードアート・オンライン』が、オープンメタバースのイメージとしてわかりやすいと感じています。作中でオープンメタバースといった概念の話はでてきませんが、フェアリィ・ダンス編の最後で語られている状態はオープンメタバースと言えるでしょう。

 ネタバレを避けるため詳細は省きますが、ザ・シードというマルチプレイのVRゲームを作るためのベースシステムを開発者から譲り受けた主人公が、それを全世界からアクセスできるサーバにアップ。これにより、企業もいちクリエイターも、ザ・シードを活用してオリジナルのVRゲームを開発できるようになります。ザ・シードを使って開発されたゲーム間では、相互乗り入れが可能で、プレイヤーたちは自由に遊ぶことが可能。まさにクローズドメタバースからオープンメタバースへの移行が描かれています。

 アニメの中ではゲームの話で閉じていますが、メタバースという大きなくくりでこの形が実現するとオープンメタバースになると考えています。

 インターネットは中央集権ではない仕組みの上に成り立っているので、オープンメタバースも、それ自体に特定の管理者のいないインターネットの延長のような世界観になるでしょう。今のインターネットが二次元情報をやりとりする仕組みだとするならば、メタバースは三次元の体験をやりとりする土台となるはずです。

 さらに、特定の企業ではなくサービスの運用自体をDAO「Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)」と呼ばれる組織が行う試みも進んできています。これは、中央集権的ではない分散型かつ公正なインターネットの構築を目指すWeb3の概念とも合致。こういった動きは今後ますます加速していくため、オープンメタバースこそがメタバースの理想形と言えるかもしれません。

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