いつでもちゃぶ台をひっくり返せるように 新規事業におけるデザイナーの心得とは

いつでもちゃぶ台をひっくり返せるように 新規事業におけるデザイナーの心得とは
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2019/07/01 00:00

 精肉店や鮮魚店、ベーカリーなど地域で有名な店や農家のこだわり食材をアプリから購入できる生鮮食品ネットスーパー「クックパッドマート」の立ち上げ時からデザインを担当する米田哲丈さん。ウェブ制作会社で3年、フリーランスで7年、iemoやMERYのデザイナーとしてDeNAで3年という経歴をもつ米田さんは、2018年5月にクックパッドにジョインしたが、フリーランスの時代から新規事業の案件に携わることが多かったのだという。そんな米田さんが語る、新規事業でデザイナーが果たすべき役割とは。クックパッドマート誕生の裏側とともに、話を伺った。

クックパッドマートを「とにかく早く」リリースするまで

――米田さんが所属している買い物事業部について教えてください。

僕たちの事業部では、日々の買い物を便利にするサービスを作っています。生鮮食品ネットスーパー「クックパッドマート」は、アプリで注文をしていただくんですが、生鮮ECというと、ご自宅にお届けするのが一般的ですよね。ですがクックパッドマートは、ご自宅ではなく、ドラッグストアやカラオケ店に届け、そこで仕事帰りにピックアップして持って帰ってもらうという仕組み。そうすることで配送コストを抑えることができ、「送料無料」としてサービスをお届けすることができています。まだ実現できていないのですが、本当は幼稚園におきたいですね。

クックパッドマートは30人ほどのプロジェクトです。メンバー構成はデザイナーが3人、エンジニアが10人くらい。それ以外のメンバーは、事業開発、オペレーションの運用・改善、販売者様や受け取り場所の開拓・運用などを行っています。ECというとアプリ開発が主業務のように思えるかもしれませんが、販売者様の商品をいかに安全かつ効率よく運び、どうすれば間違えずに受け取っていただけるのか、という物理的な体験やオペレーションの開発をチーム全員で行っています。

――米田さんが携わった過程を教えてください。

クックパッドマートの場合は、入社する前に事業モデルはできていたので、それをどう表現するかという部分から関わりました。

フリーで新規事業の案件を行ったときもそうでしたが、多くの場合、プロダクトオーナーの頭の中に、「こういうサービスがいいな」というイメージがあるんです。ですがそれを聞きすぎてしまうと、クライアントの手足となる仕事になってしまって、クライアントの期待を超えにくい。それに何より僕はおもしろくないので(笑)、触りだけを聞いて最初は作りたいんです。

今回のケースだと、「アプリで注文して、家の近くで受け取れるサービス」というくらいの情報に留めておきたくて。そんなサービスだとしたら、こういうのがいいんじゃないかというものを、僕のイメージするままに作ります。そのあとに、その僕の妄想とプロダクトオーナーのイメージをすり合わせながら、第1弾のデザインを作っていきます。

デザインができてもいきなりリリースすることはせず、まずはユーザーインタビューを行いました。「このサービスで買い物が便利になりますか?」、「毎日使えるサービスになっていますか?」などとユーザーさんに聞いていくのですが、ぐうの音もでないような率直な意見をたくさんいただきます(笑)。

――このときはどんな意見があがったんですか?

ほとんどの方は、実際の商品を見てみないとわからないという意見でしたね。デザインについては、「質は良いだろうけど高級そう」というイメージを持たれる方が多かったです。実際、デザインは黒をベースにして、意識的に高級感を出していた部分はあったのですが「お金がある人は使うだろうけど私は使わないな」という方がちらほらいらして。そこで、色味を少し明るくする、イラストを入れてポップにするなど、いただいた意見をもとに変更を加えていきました。

クックパッド株式会社 買物事業部 デザイナー 米田哲丈さん
クックパッド株式会社 買物事業部 デザイナー 米田哲丈さん

調整をしていくときは、あまり開発工数は考えていません。僕が良いと思う最高のものをまずは作るのですが、そうすると優先度が高くない機能も当然含まれます。今回大事にしていたのは、とにかく早くリリースすること。そこでたとえば『検索機能って商品がたくさんないと必要ないから今はいらないよね』などというように、機能の断捨離をしていきました。そして残っていったものでデザインをし直して、リリースしたという流れです。

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